第5話
旧王国歴253年7の月。
後の世に、王国最後の日として語られるその日。
元勇者テンマの公開処刑が行われた。
処刑台に磔になり、凡そ200日。
勇者は、飲まず食わずながらも死ぬことはなく、どんな武器をもってしても殺すことが出来なかったと言う。
無数の武器の墓場とかした処刑台の丘。
魔王を斃し、人々を救った筈の勇者を忌避し、罪人とした王国。
王国は、【神魔法】を使用した。
しかし、それは神々の寵子である彼に対して行う事で神々の逆鱗に触れた。
瞬く間に、王国は火の海と化し、大地は黒く死に絶え、風は無数の竜巻を作り出し、水は煮えたぎった。
とても、人が住めるような土地ではなくなったという。
これが、王国最後の日と『死の国境』の誕生の日である。
セントバレンシア港王国セルリアン・バッハ著『王国の灯火』より
◇
俺が、自身の中にある繋がりを手繰っていくと4つの人影が見えてきた。
赤く燃える火の精霊…髪を立たせたようにツンツン頭の少年。
翠の目にも見える風を纏った精霊…ショートヘアで流すような前髪の少女。
その2人が、何かを言い合っている。
それを傍から見ているブロンド髪のもじゃもじゃパーマの少年と水色のしっとりとした片寄せ髪の少女がいた。
多分、彼・彼女らがそうだと思う。
俺が、近づくと一斉に視線が集まってくる。
それと同時に、殺到する。
何かを言っているような気がする。
ピコンとアナウンスが頭の中に流れた。
『スキル:環境順応の異世界翻訳に精霊語がダウンロードされました』
異世界翻訳なんてあったのか。
確かに、こっちに来てから言語に困ったことが無かったな。
ダウンロードって、俺はパソコンかな?
取り敢えず、彼・彼女らが俺を呼んでるのが分かる。
それは、声を発しているわけではなく思いをぶつけられているような感じだった。
そう言えば、名前を付けてあげないとな。
よくパスが繋がり切っていないって奴かも。
さて、名前名前。
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