第9話 映画の話『未来世紀ブラジル』

ああ、きっと映画の話で一冊本が書けそうです。

ボリュームとしては。


前回のリストを見ると、自分が十代後半から二十代前半に見た作品が多い。

この頃、年間50本ぐらい見た年もあった。

劇場だけで、である。

学生料金はありがたかった。

二本立て、もありがたかった。

映画祭で深夜オールナイトの四本立てもあったな。

古い名作もこの頃見ている。

雑誌「ぴあ」はバイブルで、

別冊で古い名作の解説本みたいなのもあって重宝した。


どうやら、「近未来を描いたSF」が好きっだったようだ。

その中では、一番!の作品を取り上げます。




『未来世紀ブラジル』(1985)


タイトルにあっても、国、場所としてブラジルは、多分全く関係ない。

テーマソングがサンバの「ブラジル」。


邦題に「未来世紀」とあるが、

映画制作当時、1985年から見た「未来」とは、とても思えない。


私の解釈だが、20世紀の初め、1910年とか20年とか、

その頃の発想で、100年後はこんな世界になっているんじゃないかな、

って想像した未来。

だから、制作当時の1985年で考えても、

どこか非効率で、洗練されてなくて、レトロな感じさえする、

ヘンテコな未来世界。


「スチームパンク」の発想が近いかもしれない。


【そろそろネタバレ出てきます。】


市役所の窓口でたらい回しされて、みたいな非効率。

紙の書類、現物をやり取りする事務作業の非効率。

形式を重んじる官僚仕事。

それに振り回される人々の苦悩をブラックジョークたっぷりに描かれる。


そんな官僚仕事で事故が起こり、人の命が奪われて、それが隠蔽される。

その闇を暴こうとする女性は、当局から狙われるが、

その彼女を助けようとする主人公の男。


ストーリーの進行の随所に、ヘンテコな未来世界の日常が絡んで、

(これら小ネタがこの作品の見どころの一つだが、)

クスクスと笑っているうちに、どんどん追い込まれていく主人公の男。

気になる女性を救うことができるのか?


、、、結果は、究極のバッドエンド。

私が見た映画の中で、一番悲しいバッドエンド。

、、、死亡記録は2回ある!!!

どーーーーんと鬱になります。


私が見たのは、このバージョン。


ところが、さすがのハリウッドでは、興行的にあり得ないと、

制作会社からクレームがあり、パッピーエンドバージョンもあるらしい。


確かに、終盤のここから後をカットすれば、ハッピーエンドで終わる、

そんなポイントがある。


つまり、そこからあとは、大どんでん返しになっているのだ。

初見の時は、これにも驚かされた。


見ていない方は、絶対見るべし。

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