第2話「bag(カバン)」
イタリアの有名な服飾デザイナーのナポーリは花の街に住む、大富豪夫人フランチェスカから依頼を承ってから3日が過ぎた。今だにデザインが思い浮かばない、納品まであと4日だ。
ナポーリ「どうしようかなぁ。大体“1週間“っていうのが短すぎるんだよ」
ナポーリはぶつぶつと文句を言い始める。そこへナポーリの弟子ペンネが今朝の新聞と淹れたてのオルヅォ(麦コーヒー)を持ってナポーリの自室のドアをノックして入室した。そして新聞とオルヅォをナポーリのデスクの上に置く。
ペンネ「どうですか。今日はデザイン浮かびそうですか?」
ナポーリ「う〜ん……」
ナポーリは空返事で答え、朝刊を手にして広げ紙面に目を通す。2、3ページ捲り、オルヅォの入ったカップを手に取り、口をつけ一口飲む。カップを机の上に戻し4ページめを捲ると一面にデカデカと銀行強盗事件の記事が取り上げられていた。
ナポーリ「!?こ、これだ!!」
するとナポーリは一心不乱にスラスラとデッサン紙にデザインを描き始めた。
納品日当日の今朝、ようやく仕上がった依頼の品を届けに行きフランチェスカに手渡す。
フランチェスカ「これが、わたくしの注文したこの世でひとつしかないバッグなのね」
ナポーリ「はい。この世で二つとない紙幣を存分に仕様したバッグでございます。お気に召して頂けましたでしょうか?」
フランチェスカはしばらく無言だった。なにせ、納品されたハンドバッグは外と中の革生地の上から直接紙幣が縫われており、留め具はイタリアの硬貨50セントを加工したものだった。
フランチェスカ「……えぇ、ありがとうございます。新作が出来上がったらまたお願い致しますわ」
フランチェスカは少し引きつった笑顔をナポーリに向ける。
ナポーリは仕事が残っていると言ってフランチェスカ宅を後にした。
後日夜会へ出席したフランチェスカはナポーリの作ったバッグを所持していただけで罪人として捕まってしまったらしい。
(完)👜
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