隣の部屋のお兄ちゃん【完】

みかんの実

隣のお兄ちゃん

引っ越してきたのは


あたしの住むおんぼろアパートの隣の部屋に引っ越してきたのは、おばさんと陽斗くんだった。


母親と高校2年生の息子1人。



旦那さんと離婚して2人で引っ越してきたこと。


そのことは、あたしのお母さんがお父さんに"大変よねー"なんて話しているのが耳に入って知っていた。



「さっちゃーん!おはよー!学校今から?」


学校へ向かうのに、アパートのドアを開ける。



「俺も俺もー、今から行くとこー」


偶然なのか、待ち構えていたのか……。

陽斗くんが人懐っこい笑顔をあたしに向けた。



「朝早いよね!自分で起きてるの?」


「……陽斗くんも早いじゃん」


「ほらほら俺はさー、電車の時間があるから」


知ってるよ。

だって、何回も聞いたもん。

引っ越して高校が遠くなっちゃったからって。



「あ、ランドセル重いよね。持ってあげようか」


「……それはいーや」


陽斗くんがうちの隣にやってきたのは1ヶ月前。

いつも、目元を緩ませて凄く優しい笑顔をあたしに向けてくれる。

最初は優しいお兄さんだと思った。


会う度に声をかけてくれる、話しやすくていいお兄さんだと思った。


あたし、菅原すがわら 沙智さち

小学4年生、10歳。


自分でいうのもなんだけど。

この人、隣に住む男子高校生の陽斗はるとくんに、かなり気に入られていると思う。







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