第14話 武器がほしいンゴ

朝からたけのこの天ぷらを食べつつ眠い目をこすって冒険者ギルドに顔を出す。

ローザスさんの話だと、今日鍛冶師さんに会えるよう手配してくれてるはず。

エントランスで待つこと数分、いかにもドワーフという貫禄のゴツいチビおじさんと20代後半ぐらいのイケオジがこちらに向かってくる。


ダンバ「ガハハハ!オメェがどみんかい?ひょろいなぁ?オイラはダンバ、んでこっちの優男が―――」


デテド「助手をさせていただくデテドと申します。以後よろしくお願いします」


どみん「ど、どみんゴ…」


ミィア「ミィアにゃ〜♪」


デテド「ほぅわ♡お猫様〜尊い…猫吸いしたい…」


ダンバ「オイッ!今日はそんなことのために来たんじゃねぇだろ?あんちゃんあの『イグル・シルフィード』と決闘なんだって?アイツぁお前と戦う前に冒険者になって仕上げるぜとか言って、既に最高位Aクラスの冒険者だ。アレと戦うとなりゃあ打ってやる前に実力が見たい。自殺の手伝いをするわけにはいかんでの?」


どみん「どうしたらいいンゴ?」


ダンバ「ギルドの訓練場でを的に使って見せてくれ」


どみん「ん?」


この独特な曲線を描く日本人が好む独特なシルエットは…


ダンバ「こいつは『カタナ』と言って、古来の異世界人が持ち込んだとされる扱いの難しい武器だ!こいつを使いこなせたらお前の指示通りの武器を造ってやる。金はもう貰ってるでな!なぁデテド!」


デテド「はい、オリーブの領主様からたんまりといただきました。なんでもを助けてくださったとか、大変喜んでいらっしゃいましたよ」


どみん「ンゴ(あれ?ローザスさんって地元だと女だって知られてるのか?確か内緒だったと思うンゴ…)」



―――オリーブギルド訓練場―――


ダンバ「さてこの人形の的だが、一流魔術師の魔法でも傷一つ付かなぇ品物よ。そのカタナが傷ついたり折れたりしても問題ねぇぜ!まっオイラが打った業物よ!お前さんの力じゃ刃毀はこぼれ一つつかねぇよガハハハ」


腰に下げたカタナを抜く「ぬ!?」。

美しい波紋と洗礼された剣先。

柄の造りも良く手に馴染む。

コレはンゴが手にしたことのない業物ンゴ。

緊張するンゴ…。


ダンバ「ごにょごにょ(オイ見たか?あの扱いの難しいカタナを逆手で見向きもしないで抜いたぞ!こりゃあ使い慣れとるぞ?どうなっとる?奴は支援系スキルじゃろ?お主の娘からはそう聞いたぞ!)」


デテド「ごにょごにょ(私も驚いたが、支援系スキルでありながらダーディラード2人相手に逃げ切れたらしい。ともかく彼の剣舞を見てみようじゃないか?)」


どみん「えっと…このマネキン、切っていいンゴね?」


ダンバ「だから切れねぇって!!まぁやってみろや」


どみん「―――」


ビュン―――カシャ


ダンバ「居合!?」


デテド「抜いた―――もう切ったのか?」


どみん「やっぱり切れたンゴ、切って良かったンゴよね?」


ダンバ「何言ってやがる?変化ねぇじゃ―――」


ズルズル…ゴコン!


ダンバ「い゛っ―――切れたぁ…馬鹿な、なんて美しい切断面だ。あの一瞬でか?」


デテド「素晴らしい技量です!このカタナという品物は真っ直ぐ振るだけでもかなり難しいのに、居合で斜めであの速度で斬り伏せるとは…しかもミスリルマネキンを…」


どみん「振っても切れないンゴよ?引くか押さないと?」


デテト・ダンバ「「?」」


どみん「えっと、完熟したトマトを切るときと一緒ンゴ。押し込むと押し潰れるから引いて切ると思うンゴ。人体も一緒ンゴ」


ダンバ「ダーハッハッハ!!すまなかった。お主の事を舐めておったわい!良かろう!お主の欲しい武器を出来うる限り打ってやろうじゃねぇか!鉄のカタナでミスリルを切るなんざ神業だぜ!久々に血が滾る…」


どみん「えっとそれじゃあ―――」


ミィア「ちょっと待つにゃ…にゃうんッ!」


デテド「あ゛あ゛ぁ!!お猫様のお毛々様がぁッ!!俺もほしいーーー!!」


ミィア「コレを使ってほしいにゃ!主は支援スキル、相手は戦闘スキル、あまりにも理不尽にゃ。ミィアはこれでも『七大脅威』にゃ!『七大脅威』といえば?」


ダンバ「伝説の魔神から授けられたとされる【スキルキャンセラー】だな。それなら相手のコマンド現象を無効化出来るな。一見信じられねぇが、このくせ毛を触った瞬間、以前大盾を打った時に使った竜神王の鱗と同じ魔力プレッシャーを感じやがるぜ!すげぇもんができるぞ!」


どみん「ミィアたん…ありがとうンゴ!」


ミィア「当然にゃ!もし主が負けたら誰がミィアの食事を作るかにゃ!」


どみん「ははは…じゃあ早速だけど、いろいろお願いしたいンゴよ」



―――ギルド個室にてどみん説明中―――


ダンバ「……いやはや驚いた。こんなにアイディアがよくもまぁあるもんだ…」


煙玉、鉤縄かぎなわ撒菱まきびし、手裏剣、鎖鎌、忍者刀。

調子に乗って色々頼みすぎたかな?


どみん「鉤縄と鎖鎌ばあれば助かるぐらいですンゴ。でも煙玉、まきびし、忍者刀は無いと勝負を左右しかねないンゴ。特に忍者刀は絶対ほしいンゴ」


ダンバ「えっと、忍者刀ってのは反りがほとんどなくてさっきの刀より20cmぐらい短いってか?まぁ出来ねぇ事はないけど2日ほしいがいいか?」


どみん「お願いしますンゴ!ンゴはそれまで猫陰山でを取り戻すンゴ」


デテド「感…といったが、それは決闘で役に立つのかい?」


どみん「ンゴぉ、ンゴの家伝では感とは目に見えぬ全てを汲み取る力ってされてるンゴ。音とか気配とかの事ンゴね。感が弱いとわざわざしなきゃいけないンゴ。それじゃあすぐやられてしまうンゴね」


デテド「?いやいや、目で見なければ解らないだろう?敵の位置も距離も?」


どみん「音による距離や体調、生物が放つ熱量、思考における信号、これらの察知と回避を冠水流で『気配』という兵法に落とし込んでるンゴ。つまり、山で『気配』の術理を削ぎ高めたいンゴ…。って言っても理解らないンゴよね?とにかく山に入ると目で見なくても避けたり相手の攻撃が理解ったりって〈技〉を上手く出来るようにするには山が一番ンゴ」


デテド「…うん、よければ私も同行させてもらってもいいかい?」


ダンバ「おい馬鹿!お前は―――」


デテド「安心してください親方。私は【聖騎士】のスキル持ちでこのオリーブ領でもそれなりの実力者です。万が一が合ってもミィア様が守ってくださるだろう?」


ミィア「任せろにゃ!」


ダンバ「チッ、俺も行きたいが鍛冶があるからな…2日後には戻ってこいよ!」


デテド「ありがとう親方…では何時から行くかい?」


どみん「今から行こうと思うンゴ?準備とかは…?」


デテド「もちろん、今からピクニックと行こうか!(お猫様とピクニックなんてたまらん…)」


どみん「ンゴ!ついでに山菜と猪狩りしにいくンゴね!夕飯は豪華にするンゴよ!」


デテド・ミィア「「にゃー!」」


ダンバ「…まぁ楽しそうだからいいか。デテドの事よろしく頼むぞ。そうだ!さっきのカタナ貸してやる、存分に使え!」


どみん「ありがとうございますンゴ!大事に使うンゴよ!」

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