第5話 お金を稼ぐンゴ

どみん「うい〜よく寝たンゴ〜」


夜遅く、締まりかけの門を滑り込みで通してもらった。

もちろん通るには税がかかったのだが、緊急事態だったのでローザスさんの靴金貨を2枚拝借したンゴ。

門の税が2人で銀貨二枚、宿屋に2人で銀貨6枚、残り銀貨2枚、日本円で2000円でだった。

一度スキルに入れてしまったお金はスキル内では使えるが現実には使えないので仮想通貨みたいになってしまい、合わせて金貨2枚(日本円で約20000円)を返済しなければと焦るンゴ。


宿おばちゃん「あら、朝早いわね?お連れさんはまだ寝てるの?」


どみん「ンゴぉ、その、疲れてる…みたいンゴ…」


宿おばちゃん「もう、若いんだからもっとシャキっとしんよ!」


こういう宿屋のおばちゃんはズカズカ来て陰キャ的にはキツいンゴ。

まぁ夜遅くに来たンゴたちを快く受け入れてくれて助かったンゴ!

でも…


どみん「うーん、味がしないンゴ…」


朝食だからなのか味がほとんどしないンゴ。

パンはカサカサカチカチ、スープはじゃがいもで薄い。


どみん「おばちゃん、そのぉ…卵とかは朝に付けないンゴ?」


宿おばちゃん「馬鹿だねアンタ!卵なんて高級食材だよ!一個銅貨5枚だよ!」


どみん「うへぇ、一個500円…ぐらい?、それは高いンゴ…ん?」


ンゴはこっそりスキルボードを開き【業務マーケット】の【常温商品】の一覧を除く。

あった!卵1パック(10個)税込み300円!安…くわないけど、この世界なら破格だ!

片栗粉140円(税込、以下同様)、ウェイ◯ー800円、食用油300円、塩コショウ170円、無洗米5Kg4000円、お酢100円、調理酒200円、醤油160円、ごま油400円、カニカマ120円。

…【業務マーケット】に入ってる仮想通貨で足りる?

これって、もしかしてができて儲かるんじゃないンゴ?


どみん「お、おばちゃん!その…相談があるンゴ…」



――――――――――――



SIDE ローザ


ローザ「―――!はっ!!はえっ…ここは?」


知らない天井、素朴な個室。

ベットから起き上がると足の痛みがした。

痛みで意識が覚醒していくと、ここはどこかの宿であると気がつく。


ローザ「どみん殿が…って私いま臭い!?」


牢に入っていたり、道中のゴブリンやワイルドウルフとの戦闘があったりで自分でわかるほど臭かった。

近くに水とタオルが置かれていたので綺麗に体を拭き上げ、服を来てドアを開けると…


ローザ「すごく…いい匂い♡」


急にお腹が「ぐうううう」と鳴る。

私は匂いに釣られて階段を降りていく―――すると、


宿おば「はい、『テンシンハン』3人前ね!3人前追加!!」


どみん「はいよ!!」


あれはこの宿のおばさんだろうか、その奥の厨房らしきところにどみん殿がいる。

なにやらヘンテコな鍋を器用に使いこなしているようだった。

そこに投入されるのは大量の…まさか!?


ローザ「た、たまごぉ!?」


宿おば「なんだい!アンタ起きたのかい…ってアンタ女だったんだね!器量良しじゃないか!」


ローザ「あっサラシが!?ちょっと待ってください!すぐサラシを巻いて―――」


宿おば「そんな事後でいいんだよ!忙しいんだから手伝っておくれよ!」


ローラ「そんな事言われても、私は客で―――」


宿おば「お金は出すから!ほらっその服にきがえて―――」


ローラ「私はこれでも令嬢なのです!給仕のマネごとなどと!」


宿おば「いいから早くおしッ!!」


ローラ「あ…はい」


鬼気迫るおばさんに根負けしてしまった。

着替え終わった私の格好を見て「「おぉ〜」」「「ヒューヒュー!」」と歓声が上がっている。

くそぅ、こんな短い丈のスカートなんてぇ…


どみん「ローザスさん!ぼーっとしてないでさっさと運んでンゴ(仕事モード)!!天津飯5つ上がったよ!」


私のこの姿を見て一切気にしないどころか、前日までのウジウジした態度が一切ないどみん…殿??

だっ―――誰だあのイケメンは!!??

鋭い眼光とキリッとした鼻、吸い付きたくなるような甘い唇。

前髪で今まで素顔を見ていなかったが、髪を後ろに縛っただけであんな…あんなイケメンなんて聞いてないない!アレ直視できない、ヤバい…コレってヤバい!!


宿おば「いいからそっちもって、あそこのテーブルに頼むわよ!」


ローザ「あ…はい!」


食器を運んでは回収、食器を運んでは回収。

給仕とは中々に大変なのだな。

どみん殿は料理を仕上げつつ、食器の洗いまでこなしている!なんて手際の良さだ…。

汗をかいて集中するどみん殿の横顔はなんというか…いい!

って見とれてる場合か!次から次へと料理を運ばなくては―――

あれ、なんで仕事してんるだろ私は…?


「うおぉおおお!旨すぎるだろコレぇ!!」

「卵ふわっふわでたっぷりだ!食感も品質も最高だぞ!?」

「ご、ご飯がいっぱいある!あの調理しづらいで高級食材の米!!」

「この絶妙なドロドロのソース!コレ単体でもコクが合ってさっぱりして旨味が強いのに、卵とご飯に絡まった瞬間、美味すぎて気付いたら無くなってたんだよな!」

「最初は銀貨2枚は高いと思ったけど、バカ安だよ!!こんなん元取れねぇだろ!バカ旨よ!!」


あぁ私も食べたい。あのスプーンを押し返しそうなフワッフワの卵ともちもちご飯を口いっぱいに頬張って幸せを噛み締めたい…ぐぎぎ…。


リーン「おばちゃん!どうしたよ、大盛況じゃねぇか!」


宿おば「あら!リーンちゃんいらっしゃい!相変わらず小さいわね〜」


リーン「うるぜぇぶっ飛ばすぞ!…ん?んん!?ローザ?ローザ・オリーブ?お前、その格好―――」


ローザ「ちょっ―――恥っ―――リーン姉さん!」


リーン・エクストラ伯爵令嬢。

ヒューマンとドワーフのハーフで、低身長でくりっとした大きい瞳のツインテール、背中には巨大な斧を背負ったA級冒険者パーティ『銀斧』のリーダーであり、私の…母方の親戚である。


――――――――――――


材料が切れたことで、半ば無理やり打ち切りしてゴネる客を捌いたあとようやくリーン姉さんに経緯を説明した。


リーン「ふーん、【勇者召喚】ねぇ…禁呪を堂々と…あの馬鹿ボンボッボ王は救いようがねぇキチ◯イじゃねぇかよ!ったく、無事で良かったぜローザ。それにしてもまさか普段から男装してるお前があんなフリフリの格好するなんて、ぶっちゃけウケたぜ!ブハハ!」


ローザ「からかわないでよもうッ!私だってなんであんな格好してたかわかんないもん。それより…」


リーン「ああ、朝一番で王都から王宮騎士団が来てたぜ!親父が嫌そうに対応してたさね。いくら領主の娘だからってアーシの顔が効かない相手だ、オリーブ領まで送るにはエクストラ領から出るのも難しいかもな…さっきここに来るまでに各城門に何人か配置されていた。どうする?エクストラ家から私兵を出して強行突破するかい?」


ローザ「そんな事したら王都から近いこのエクストラ領に連中がなにするかわかんないじゃないの!」


リーン「まっそうなんだけどさ!…それよりそこの異世界人の―――」


どみん「は、初めまして!冠水どみんンゴ!!」


リーン「ふ、ふーん(めちゃくちゃイケメンじゃねぇか!)…。アーシはリーン・エクストラ。こう見えてこの領主の娘さ。んで?お前はどうするんだ?」


どみん「まぁローザスさんについて行くつもりンゴ。そ、そんなことより、リーンさんはローザスさんのお姉さんなんですゴ?」


リーン「てめぇ、アーシがちっちゃくてガキっぽいってかぁ?しょうがねーだろドワーフとのハーフなんだから!」


どみん「じゃ、じゃあドワーフの人ってみんなリーンさんみたいな素敵な人ばかりンゴ?」


リーン「ぶぅうッ!てめぇそういう趣味か!じゃあ私と今晩一緒に寝ろって言ったら了承してくれるかい?」


ローザ「姉さんっ!?はしたないわよ!」


どみん「こ、心の準備だけさせてほしいンゴ…」


リーン「バッ―――(/// ///)馬鹿言ってんな!冗談、冗談だよ!ちっ…本気にしやがって…」


って言ってるくせにリーン姉さん顔伏せて真っ赤になってるじゃん!


ローザ「どみん殿、料理が終わったなら前髪を戻したほうがいいのでは?」


どみん「そうンゴね」


慌ててどみん殿がくしゃくしゃと前髪を戻す。


どみん「それはそれとして、自分たちとリーンさんの分の別に天津飯を作っておいたンゴ。食べるンゴ?」


ローザ「しゃりゃあああああ!!(ガッツポーズ)」


リーン「ローザ!?」




※追記 男装中は『ローザス』、女性の格好時は『ローザ』と記載します。

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