『分流祭湯《ブルサイユ》のばらばら事件』

やましん(テンパー)

『分流祭湯《ブルサイユ》のばらばら事件』


 分流祭町のお風呂やさん『分流祭湯ブルサイユ』は、今日も昼間から大繁盛していた。


 この番台の入口の凹みには、美しい、かなり大きな陶器の壺が置かれていたが、正面はがっちりと固いガラスでカバーされていた。


 これは、20世紀に作られたという、逸品である。

 

 表面には、でかい、赤い茸が描かれていた。


 『こんなとこに飾っていたら、いつか、壊れるゃろ。』

 

 と、馴染みの人は言うのだが、主である奥さんは気にしなかった。


 『壊れたら本望ちゃら。それが、造られたものの使命ちゃら。』


 『そんなもんかね。』


 『はい〰️〰️。それに、そんなに高値がつくものでもないちゃら。むかしの大量生産品と聞いたちゃら。』


 『20世紀といったら、原爆とかあった時代ちゃらな。』


 『あい〰️〰️。いまは、なんでも、入浴〰️〰️区、の世界博物館に、一個だけあるそうちゃら。動かないが。』


 『んだちゃら。もし、動いたら、世界が滅ぶとかちゃら。聞いたことあるちゃら。』


 『んだ。怪談ちゃらなあ。はははははははは。』


 

    ⚡😭💣️⚡😭💣️⚡😭💣️⚡😭💣️


 

 しかし、それは、怪談ではなかった。


 入浴〰️〰️区、にあるのは、まだ、動作するインターシティブリーフミサイル(ICBM)で、近隣を攻撃するのに適している。


 入浴〰️〰️区は、分流祭町の、はるかな山を挟んだ隣町である。ちょっと大きかったが。


 しかし、そのミサイルの弾頭は、世界で一個だけ残された自立整備型AI核弾頭、AIZ88で、500年間無整備でも使用可能である。出力は50キロトン。さらに発射は、手動でも可能だが、いざとなれば自分で判断し、勝手に標的に向かって飛ぶようになっていたのであるが、そんなことは、とっくに忘れ去られていたのである。


 最盛期には大量生産されたらしい。

 

 分流祭町と入浴〰️〰️区は、仲が悪く、ながく対立し、町間戦争をしていた。つまり、標的はとなりまちなのだった。


 どういう経緯で核爆弾があるのか、まるでわからないが、双方が一発づつもっていたが、分流祭町のは、ずっと行方不明である。


 それは、しかし、250年前には和解し、終結していたのだ。


 地球はその前に、すでに廃墟になり、月の裏側に4っつ、火星には3つの、こちらは、都市国家が、残っていた。


 分流祭町と、入浴〰️〰️区は、月にある。



   🐭🐭🐭🐭🐭🐭🐭🐭🐭🐭🐭🐭



 その壺は、実は、巧みに偽装された発射システムでもあった。


 ぶん殴って、割れば、ミサイルが非常事態と自己判断して、で、1分以内に取り消さないと、発射される。おそるべき仕掛けである。


 そんなものは、あっちゅうまに忘れられて、和解後は、町の友好のためにと、いつか、分離保管されていたのである。


 その日、老やましんが、よろけて歩行装置ごと、そこに突っ込んでしまい、壺は、ばらばらになった。


 で、間も無く、入浴〰️〰️区の博物館と、分流祭湯から、ICBMが飛び立ったのだ。


 早い話し、そんなもん、造ってはならなかったのである。


 月の、残りの町は、そう、伝えてきている。


 お風呂やさんのあとには、石碑が建てられている。



 『人類は、たくさん造ってはならないものを造ってきた。その後始末は、後世がすることを忘れるべきではない。テクノロジーは有限である。』



           

       

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『分流祭湯《ブルサイユ》のばらばら事件』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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