第1話

「……やだ………いかないで………」



「………おちついて、大丈夫、コンビニいくだけ………」



「やだ!!………さっきからいくなって、……いってるだろっ!!」



「いや、だからナプキンなくなったんだって。きみ体調崩してるんだし……お留守番できるでしょ?」



「や、だめ、はなれちゃ……や……」



「ちょっと黙って。うるさいんだけど………」



「………ぅ、」



「いや、ちがう!!いまのは…」





………言ってしまってから、さっきから巻き付いて離れない男の異変に気づく。



全身が震えていて、呼吸も荒い。目の焦点も定まっていない。







「ごめ、んなさ………おいていかないで……」



「えっと、だから………」



「ひ………やだっ!!ゆうちゃんっ!だめっ!やだ…………」





嗚咽が聞こえてくると同時に、巻き付かれている腰あたりの服の色が変わっていく。



ああ、まただ……また泣いてる………



不安にさせるようなことを私がしたのだろうか?



泣かせるようなことを言ったのだろうか?





この男には今、何が見えているのだろうか……?









「………………………ごめんねらいくん。しんどいのに離れたらだめだよね」






そうだよね、うん。と自分にいいきかせる。



別にこいつは何か危ない薬をヤってるわけではない。



さっき計った体温は37.8度。ここまでうなされる高熱でもない。





「じゃあ、おくすり飲んでねようか。もう21時まわってるし。」



「………………ぅ、」






サイドテーブルにおいてあった薬と水の入ったコップを手渡すと、ベッドから起きあがってきた。



腕をまくると、血管の浮き出たたくましい腕がパジャマから覗き、不覚にもドキっとしてしまう。






「えっとね………これが解熱剤で、これがせきどめ。」



「………………ん。」



「………飲めた?じゃあこれ、じんましんのやつとアレルギーのやつ。」



「………ん。」



「………オッケー?じゃあこれ、は……抗不安薬、で……ラスト睡眠導入剤……。」



「………………うん………、のめた」



「………ほんと?よくがんばりました。」







頭を撫でてやるとふにゃ、と笑う彼氏。




………そっか。この人、私の彼氏なんだよな………それも2歳年上の。

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