第2話 殺人

 僕は今から人を殺す。


 対象は金髪の太った中年男性。名前はゼノウ。手に指輪をじゃらじゃらつけているのが特徴的。


 なぜ殺すのか。


 理由は彼を現時点で殺しておかないと、取り返しのつかないことになるからだ。


 具体的に言うと彼はゴーストゲームという組織に所属している。ゴーストゲームは今はそこまで大きくないが、後々組織が肥大化し王国に対して反乱を起こす。結果は失敗に終わるのだが王国は壊滅的な打撃を受けて、魔王との戦いに勝ち目はなくなり、ゲームオーバーだ。


 その組織に大きく貢献するのがゼノウだ。


 だから殺す。


 殺す殺す殺すころすころす……ひとをころす。


「はぁはぁ」


 心臓がバクバクする。痛い。あれさっきまではそんなことなかったのに。人を殺す、という事実が僕を震え上がらせているのか?


 ぽたりと自然に額から汗がこぼれる。


 ナイフの刃に自分の顔が映った。先程とは打って変わって、目が大きく見開かれ眉毛が下がっていた。そして尋常じゃないほどの汗が噴き出ている。


 どうしようどうしようどうしよう——人なんか殺したくない。


 コンコンコンと向こうで扉をドッペルゲンガーが叩く音がした。


 ゼノウはそれを聞き、読んでいた本を閉じる。ゆっくりと叩かれた扉の方に向かう。


 ……やらなきゃ。


 僕はゼノウに気づかれないよう窓を開けた。


***


 そこはこじんまりとした宿だった。


 ベッドがあって机があって、椅子があって生活に必要な物は全て揃ってる。


 そこでゼノウが本を読んでいた。金髪で指輪をたくさんつけているのが特徴的。


ぺらりというページをめくる音だけが部屋に響ていた——けれどそれを打破するようにコンコンコンとドアを叩く音がする。


 ゼノウは読んでいた本を閉じ机に置いた。ゆっくりと扉に向かい、そして開ける。


 誰も居なかった。


 ゼノウは扉を少し出てきょろきょろと辺りを見渡す。


 けれどやはり周りには誰も居なくて悪戯という事に気付き、ため息をついた。

そして扉を閉める。


 瞬間。


 銀光するナイフがゼノウの首にあてられた。冷たい感触が命に触れられる感覚がナイフから伝わる。


「振り向くな。振り向いたら殺す」


 短くそう声が掛かった。


「何が目的だ?」


「金庫の暗唱番号を教えろ」


「言えば助けてくれるか」


「あぁ」


 それを聞き、ゼノウは少し逡巡してから


「31256」


 と言った。ご苦労そう声が掛かって、ナイフが首元に深く刺さった。赤黒くドロドロとした物が首筋から溢れ出す。


「助けると……言ったじゃないか…………」


「人は嘘をつく生き物だ」


 ゼノウが声を絞りだしながら言って、暗殺者がそう返した。


 暗転していく視界には、白髪で覚悟を決めた少年がゼノウには映った。


 それが最後の景色となった。




補足説明 リリーの職業はアサシン。

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