鬼畜ゲーに転生したのだが、殺人を犯したのがばれて攻略と逃走を同時に行わないといけないんだが

@kyounoyuki

第1話 転生


 デスキルラージアル——それは世界最高のゲームである。


 約幾億ものエンディング、分岐ルートがあり、その数およそ無限大。


 ストーリーとしては単純で魔王を倒すというもの。


 まず、プレイヤーは適当なキャラをゲーム開始時に選び、その選んだキャラで攻略する。


 勇者や魔術師、アサシンにヒーラー。あまつさえ鍛冶屋なども存在し、極めれば大体同じような強さになるよう設定されている。


 オープンワールドで最初からすべてが自由。


 チュートリアルもクエストの強制も一切なく、ゲーム開始時から一歩も動かなくてもよい。


 まぁそれでは死んでしまうけど。


 なぜか——それはこのデスキルラージアルが鬼畜ゲーだからだ。


 一度でも失敗したら、一度でも遅れたら、それだけで致命的なミスになり得る。


 これはどのキャラを選んでも同じことで、死ぬことなしにクリアは不可能とされ、その理由は魔人たちの急な襲撃に化学兵器メラによる伝染病、ドラゴンパンデミック等、上げるときりがない。


 初見殺しも数多く、それ故鬼畜ゲーとデスキルラージアルは呼ばれているのだ。


 と、まぁこんな風にゲームについて語ったのは訳がある。


 それはこの僕——伏見怪がこのゲームに転生してしまったからだ。一番デスキルラージアルをプレイし愛したこの僕が。


 とある宿の一室


「くそっ。やっぱそうだったか」


 僕は鏡の前でそう呟いた。


 ぼさっとした白髪に猫目。辺りに散らばった旅行鞄や、そこからはみ出た衣類。

 身につけてあるナイフ。


 間違いない。僕はデスキルラージアルのリリーに転生している。


 どうして?どうしてこんな事になってしまったんだ。


 僕は必至で直前の記憶を思いだそうとする——が、記憶に靄がかかっていて思いだせない。


 確かデスキルラージアルをしていて、そして……。


 まぁいい。それよりもこれからの事だ。


 もう一度僕は自分の顔を確かめる。


「よりにもよってなんでリリーなんだ」


 僕は思わずそう叫んだ。


 リリーはデスキルラージアルの中で最も操作が難しく、また一番クリアまでの道のりが長いと言われている。攻撃力が低く、その分スピードはかなり出るのだが扱いづらい。固有スキルも一歩間違えれば即死だ。しかし極めれば最強とも言われている。


 ……まぁやるしかないか。とりあえず荷物の整理だ。


 僕は散らかった衣類を畳みなおし、トランクに詰めなおす。ベッドメイキングをし、顔を洗って身なりを整えた。


 まずは最初の初見殺しを突破しないとな。


「固有スキル発動 深淵からの模倣者(ドッペルゲンガー)」


 僕がそう唱えると、影から一人の人間が現れる。そいつは半透明の紫色で、僕と背丈も、顔も、髪も全てそっくりだった。


「今から30秒後にこの部屋をでて、右隣の部屋をノックしろ。いいか叩く回数は三回だ。終わったら消えていい」


 僕はドッペルゲンガーに命令した。ドッペルゲンガーはそれを聞き、こくりと頷く。


 命令が受理されたのを見て取って僕は窓から右隣りのベランダに移った。念のため僕は窓が開くことを確認。ついでに中の様子を伺った。予想通り中年男性が椅子に深々とすわり、本を読んでいた。


 …………僕は今から人を殺す。

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