第5話 姫様はつらいよ

 体育の授業が始まる前の事である。少子化の影響で空き教室が女子更衣室なり。去年までの狭い廊下の奥地から広々となった。


「姫様ってスタイルがいいよね」


 クラスメイトが声をかけてくる。


「そう……?」

「ユーチューバーでも始めたらバズリまくるよ」


……。


 いや、すでに失敗しているし。


「みんなの姫様である事に専念したいの」

「そっか、残念」


 その後、私は短パンと体操服に着替えると。体育館に向かう。そう、女子と男子は別々に授業を行うのだ。結果、男子はグランドで授業だ。


 また、やはり、少子化の影響で二クラス合同での授業だ。千堂君は私のクラスと一緒である。


 あああ、千堂君の体育でのカッコイイ姿を拝みたいものだ。


 そして、体育の授業が始まると。


「神宮寺の姫様、物足りなそうだな」


 何やら体育教師は私を指名して話し出す。


「男子と授業を受けるか?」

「はぃ?」

「冗談だ」

「もう、セクハラで訴えるわよ」

「これは失礼、グータッチで仲直りだ」


 体育教師とグータッチをして授業が再開される。


 この体育の授業は女子校になった様な雰囲気なのが印象的だ。



 私は夕焼けに照らされて校舎から帰路に着く。途中、グランドを横切るとサッカー部が練習をしていた。やはり、輝いているのはエースストライカの千堂君である。


 足を止めて練習を見ていると。


「また、出たわね、部外者は帰った、帰った」


 サッカー部のマネージャーのやよいが現れる。


「ケチ……」


 私が小さく愚痴を呟くと。


「千堂君はサッカー部のモノなの、姫様だからって何でも手に入ると思ったら大間違いよ」


 あああ、このやよいなる女子はホント気が強い。私は張り合うか迷っていると。


「姫様だ、姫様が練習を見ているぞ」


 サッカー部員が練習を見ている事に気付いたらしい。


「平常心!平常心!!!」


 中断しかけた練習を千堂君が動かす。よかった、私のせいで練習が止まったらやよいの言う邪魔者の言葉が本当になってしまうところだった。


「やよいも練習に戻れ」


 サッカー部のコーチが声を出す。


「見るくらいなら見逃してあげる」


 渋々、やよいは捨て台詞を吐くと去って行く。よし、これでサッカー部の練習を見る事ができる。


 しかし、千堂君はカッコイイと改めて思う。

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