190奥の手

拓は建物から出てきた盗賊達に痺れ薬の入った球を当てて倒していたが、

突然、倒れていた盗賊達が立ち上がり今まで以上の力で動き始めた。

その後、建物から出てきたメッサリナを見て、傀儡掌を使って操っているのだと理解した。


直ぐにメッサリナに向けて痺れ薬を当てようとしたが操られている盗賊に阻まれ失敗し

拓の居る方へと炎を無視して傀儡掌で操られた盗賊が向かってきた。

気配を消しているが、攻撃から拓の位置を検討をつけたのだろう。



「今のうちに逃げるよ。」


メッサリナは傀儡掌で操って廃村から出ようとしたが、前を走る男が倒れ地面にへばりついた。

足元を見ると大量のトリモチがバラ撒かれていた。

メッサリナは直ぐにトリモチの上にネット状にした傀儡掌の糸を張り巡らせ、残った盗賊と一緒に走り出したが、メッサリナ達に向けてトリモチが放たれる。


「チッ、敵は他にも居たのか。」


拓が翼の腕輪を使って移動をして攻撃を仕掛けたのだが、メッサリナは気付かない。

更に拓が幾つかの薬品を投げ込むと、周囲に煙が立ち込め視界を奪う。



「こんな子供だましが効くとでも。」


メッサリナは探索魔法で周囲を確認しながら村の出口に向かって走ろうとすると何かが投げ込まれ盗賊の1人が火達磨になる。

同じものが幾つも投げ込まれると、足元に張った傀儡嘗のネットも溶けだした。

それと同時に、トリモチの粘性も熱で弱くなり傀儡嘗に操られた盗賊なら足を取られながらも進むことが出来る。

煙を抜けてメッサリナが廃村の外に出たのだが


「なっ、鮮血。またお前か。」


アーネス、ガラ、ゴンの3人が待ち構えていた。

直ぐにメッサリナが傀儡嘗を放つが、


「この俺に同じ技が効くと思うな。まぁ、初めから効いてなかったけどな。」


アーネスが火魔法で全て焼き尽くした。

すると、前と同じ様に盗賊達が自分達の体が壊れるのも無視して力の限りの攻撃を3人に仕掛けて来る。


「ゴン、女を逃がすな。ガラ、叩き潰すぞ。」


アーネスの指示で それぞれが行動を起こしたが、メッサリナが消えた。

ゴンがメッサリナが居た場所を探したが、全く気配を感じる事が出来なかった。

そして、ゴンにも傀儡嘗で操られた盗賊が襲い掛かり、メッサリナを気にする余裕が無くなっていた。



少し離れた場所に居た拓は、メッサリナがゲートを開いて杖を取り出し姿を消したのを見た。

直ぐにトリモチを打ったが、球はメッサリナに当たることは無かった。

姿を消す魔道具・・・ゴンの様子を見ると気配も消せるのだろう。

拓は直ぐにメッサリナが居た場所へ移動し、周囲の探索を行ったが結局見つける事は出来ない。


「すまない。あの女を逃がした。」


盗賊と戦いながらゴンが拓に向かって叫ぶ。


「失敗は俺の方です。逃がさない様に見張っていたと言うのに。」


拓は自分の失敗を悔やんだが、今は盗賊退治が先だ。

直ぐにトリモチを盗賊の顔を狙って撃っていく。

相手は自分の体が傷付いても気にしない傀儡嘗で操られた攻撃をするだけの人形だ。

傀儡嘗は死体でも動かす事が出来るが、それはマリオネットの様に操り続けなければいけない。

しかし今回は自分が逃げる為に、生きている人間に攻撃支持を出しただけだろう。

そなら目を塞ぎ、息を出来なくしてしまえばいい。


もがき苦しむ盗賊にゴンが止めを刺す。

アーネスとガラも盗賊を倒し終え、拓とゴンに合流した。

襲い掛かって来た盗賊の退治を終え、アーネスも周囲を調べてみたがメッサリナの痕跡を見付ける事は出来なかった。


「完全に気配を消したか、そんな奥の手を持っていたとは・・・

 それよりも、拓。お前は隠れているはずだったよな。」


アーネスの怒りの矛先が拓に向かってきた。


「敵の根城を押さえないと、同じ事を繰り返すかと思って。」


言い訳をする拓の頭にアーネスの拳が落ちる。


「いった~。アーネス小父さん、痛すぎるよ。」

「痛くて当たり前だ。お前は首を突っ込み過ぎる。」


アーネスに叱られ馬車の所に戻った拓は、更にフォスターに叱られた。

そしてガラはフォスターの横でその通りとばかりに頷いている。

その肩の上にはダイフクが同じように頷いている様な動作をしていた。

ダイフクは拓と契約している魔獣のはずなのだが・・・

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