189廃村
ロマニュ子爵やシレーヌに見送られ、町を出たが
「このメンバーなら、少し回り道をしても良いだろうか。
最近、商人の馬車が盗賊に襲われる事件が起きていてな。
今後の事を考えると早いうちに退治しておきたい。」
アーネスの提案に、全員が賛同した。
ただ、盗賊の出没する範囲が広い為、見つけられるかは分からないが・・・
盗賊が出たとしても、シルビアですら魔道具を使ってあれだけの攻撃が出来るので問題ないだろう。
ここでの一番の問題は拓だ。
「大丈夫、戦いが始まったら気配を消して隠れているから。」
心配そうに見てくるガラに拓は笑って答えていたが、拓が大人しく隠れている性格ならガラも心配していない。
正直、何かをしでかさないか心配しているのだが、流石に口には出さなかった。
馬車は森の中から周囲が岩に囲まれた道に変わった。
「本当に現れるとは。」
「気配も消さずに近寄って来るなんて信じられないわ。」
ドクスとシルビアが馬車の中でストレッチを始めた。
「30人か。近づいてきた所で一気に全員を倒す。」
フォスターが指示を出していた。
ある程度近づいて来ると気配を消して動いているが、拓でも探索魔法で相手を把握することが出来ていた。
そのまま盗賊が違づいてきているのを気付かないふりをしていると、馬車の前に岩が落ちて来た。
馬が驚いて止まると、武器を構えた盗賊達が馬車を取り囲む。
「中に居る奴等、出て来い。」
リーダらしい男が前に出て怒鳴る。
盗賊達が更に近づいてくると、馬車の中からフォスターの雷魔法が盗賊達を襲う。
直ぐにアーネス、ドクス、シルビアも魔法攻撃を行うと、ガラとゴンが飛び出して盗賊を剣で切り倒していく。
相手が30人居ようと、敵ではなかった。
フォスターとガラは盗賊の退治を終えると、拓が居ないことにが付いた。
「拓さんが大人しく隠れているなんて有り得なかったか。」
ため息をつくガラに、奴隷の呪いを通して拓から連絡が入った。
ガラ、アーネス、ゴンの3人が拓を追いかけ、残りの3人は馬車で待機することになった。
拓は混乱に乗じて逃げ出した盗賊が居たので気配を消して後を追いかけていた。
追跡をし、アジトを押さえるつもりだ。
「何なんだよ、あの戦力は。こんな所に上級魔導士が集まるなんて有り得ないだろ。」
「休んでいるんじゃねぇ。さっさと逃げるぞ。」
拓が追跡しているのは2人の盗賊。走り続け森の中へと逃げ込んでいた。
森の奥深くまで来て一息ついていたが、また直ぐに移動を始める。
2人の盗賊の後をつけて辿り着いたのは廃墟となった村だった。
探索魔法で調べると10人以上も居る為、隠れてガラ達の到着を待っていたのだが、
半分以上の仲間が捕まった事で、この場所を破棄しようと動き始めた様だ。
ガラ達の到着まで、後30分位だろうか・・・
廃村となった小屋の中では、状況を知った盗賊の頭が指示を出していた。
「ここを出て別のアジトに移るよ。直ぐに準備しな。」
ガキの誘拐を鮮血のアーネスに邪魔をされてから、碌なことが無い。
後ろ盾も出来て、やっとここまで盗賊団を復活させたというのに・・・
この盗賊の頭はメッサリナ。
以前、ガレド商会の会長ヨーゼフの子供ニック、ジョン、アンリを雪山でのキャンプ中に誘拐しようとしアーネスや拓に阻まれ、特殊魔法の傀儡掌を使って逃げた上級魔導士だった。
部下達の準備も終わり、逃げ出そうとすると
「頭、周りの家が燃えてます。」
部下が叫びながらメッサリナの居る部屋に駆け込んできた。
更に、何かが撃ち込まれると周囲を煙が覆い、吸い込むと手足が痺れてくる。
「煙を吸うんじゃないよ。全員直ぐにこの場を離れろ。」
メッサリナが叫ぶと盗賊達は一斉に建物から飛び出した。
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