20ガラ2

******(ガラ)


その後、トウさんに今までの俺の戦闘スタイルについて聞かれた後

今日購入した、剣での戦い方についてアドバイスをもらった。


「そうだ、明日、時間を作るから俺と試合をしてみるか。

 実際に打ち合ってみた方が分かるだろう。

 拓、森に行くと聞いているが、予定を少しずらせるか?」


拓さんが問題ないと言うので、明日、トウさんに訓練を付けて貰う。

侯爵に仕える兵士が相手か・・・拓さんを守るためにも、この腕でも出来る技術を身に付けるしかない。


そろそろ、拓さんの料理が出来上がりそうになった時


ドン、ドン、ドン


ドアが叩かれた。拓さんの代わりに出ると男が2人立っている。


「おっ、お前がガラか。俺はバン、こっちはジャン。

 拓に新しい仲間が出来たと聞いて、お祝いを持って来たぞ。」


さっき、トウさんが言っていたバンさんとジャンさんか。


「何でお前達が来るんだよ。拓に迷惑だろ。」


後ろからトウさんが2人に話しかける。


「トウだけを抜け駆けさせる訳が無いだろう。」

「そうそう、拓ちゃんの料理は俺達も食べたいしね。」


言い寄る2人に、トウさんは溜息を吐いていた。


「2人も来ると思って料理を作っているから大丈夫。入ってもらって。」


拓さんがそう言って2人を家に上げると、テーブルに料理を並べて行く。

乾杯をして、拓さんが勧めてくれる料理を食べてみると


「美味い。」


思わず、声が出てしまった。お世辞抜きで、美味い料理だった。


「トウの奴、俺達を差し置いて拓の料理を食べるつもりだったんだぞ。」

「だいたい、姐さんが居ればトウの出番なんて無いのにね。」


ジャンさんと、バンさんが、トウさんに絡んでいた。


「何言っているんだ、奴隷商人の所へ行くのに、男が睨みを利かせない訳には行かないだろう。」


トウさんが言うのも最もだが


「奴隷商人だろうと、姐さんを敵に回す様な真似はしないよ。

 姐さんの前でトウの睨みなんて意味をなさないだろ。」


ジャンさんの言葉にバンさんが頷くと、ヘルガさんの拳が2人の頭に落ちた。


「お前達、私を何だと思っている。

 全く、せっかく拓の料理を食べていると言うのに、何時までも馬鹿な事を・・・」


賑やかな食事会だった。

食事が、こんなに楽しい事だったと改めて思う。

久しぶりの酒を味わっていると、いつの間にか拓さんが居なくなっていた。

台所の方を覗く俺にヘルガさんが話しかけてくる。


「拓なら、こっそりと自分の部屋に逃げたぞ。

 あれが、トウ達が言っていた闇魔法での気配遮断か。本当に良い腕前だ。

 拓は未だ子供だから許そう。しかし、ガラには最後まで付き合ってもらうよ。

 これはガラが拓の仲間になった祝いなんだからね。」


俺の肩に置かれたヘルガさんの手に力が入り、グラスに並々と酒が注がれる。

昔より酒の回りが早い。

飲んでも飲んでも無くならない、グラスに注がれる酒。

朦朧としてくる意識を何とか手放さない様に頑張っていたが、限界だった。

意識が遠のき、目の前が真っ暗になる。



次の日、空が明るくなる頃ヘルガは1人小屋を後にした。

リビングに大量の空いた酒瓶と、転がっている男達の死体を後にして・・・

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