第4章 旅の再開と魔王軍の動き

1. 勇者のいない世界


「……そんな……」


 王都の広場に集まった民衆の間に、絶望の声が広がる。

 『勇者の剣が抜けなかった』 という事実が、王国全土に知れ渡っていた。


「なら、誰が魔王を倒すんだ……?」


「勇者がいないなら、もうおしまいじゃないか!」


「私たちは、ただ滅びを待つしかないのか……?」


 期待されていた英雄が「剣すら抜けなかった」という報せに、人々は打ちひしがれていた。

 その混乱を見透かすように、魔王軍の動きは加速していた。


2. 魔王軍の侵攻


 魔王城──。


「ついに、この時が来たな」


 黒き玉座に腰掛ける魔王は、冷酷な笑みを浮かべた。


「勇者がいない? ならば、もはやこの世界は我のものだ」


 魔王が軽く指を振るうと、闇の中から無数の軍勢が現れる。

 漆黒の鎧に身を包んだ兵士たちが、次々と城を出発していく。


「王都を焼き払え」


 その命令とともに、魔王軍は各地へと侵攻を開始した。


3. 旅を続ける俺たち


 「勇者不在」の報せが広まり、俺たちの旅は一層厳しくなっていた。

 人々の目は、明らかに俺たちに向けられている。


「お前が『勇者』なんだろ!? なら、何とかしてくれよ!」


「剣が抜けなかっただと!? ふざけるな!」


「結局、お前は偽物だったんだな……」


 俺はただ、黙って言葉を受け止めるしかなかった。


 フィリアやガイルが反論しようとするのを、俺は手で制した。


「いいんだ、俺は……まだ答えを出せてない」


 俺は「勇者」じゃない。

 剣が抜けなかったことで、それがはっきりしてしまった。

 でも……このまま何もせずに終わるわけにはいかない。


 俺にできることは何だ?


 それを考えながら、俺たちは旅を続けていた。


4. 焼き払われる村


「煙だ……!」


 俺たちが次の村へ向かう途中、遠くの空に黒煙が上がっているのが見えた。


「急ごう!」


 駆けつけた俺たちが目にしたのは── 炎に包まれた村の光景 だった。


 人々は悲鳴を上げながら逃げ惑い、黒鎧をまとった魔王軍の兵士たちが暴れ回っていた。


「くそっ、間に合わなかったか……!」


 ラグナが拳を握りしめる。


「いや、まだ終わってない! 行くぞ!」


 俺はロングソードを構え、魔王軍へと駆け出した。


5. 俺たちの戦い方


「お前たちは何者だ!」


 魔王軍の兵士が叫ぶ。


「ただの旅人だよ。でも……てめぇらみたいな連中を放っておくわけにはいかねぇ!」


 俺は剣を振るい、一気に敵を斬り伏せる。


 フィリアが魔法を詠唱し、火球を放つ。

 シエラがバフをかけ、ガイルとラグナが最前線で戦う。


 俺たち5人の戦い方──それは「勇者がいなくても戦える」戦術だった。


「……勇者がいないからって、終わりじゃねぇ」


 俺は剣を握りしめる。


「『勇者の剣』がなくても、俺たちは戦える!」


 そう叫びながら、俺たちは魔王軍を撃退していった。


6. 旅の先にあるもの


「ありがとう……助かった……」


 救い出した村人たちが、俺たちに頭を下げる。


「レオン……今の戦い、お前はどう感じた?」


 ガイルが問いかける。


「……」


 しばらく考えた後、口を開いた。


「俺たちは、まだ戦える」


 勇者の剣は抜けなかった。

 でも、仲間がいる。


「……このまま進もう」


 剣を握り直した。


「俺たちのやり方で、魔王を倒す」


 そして、次の戦場へと向かった。

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