第3話 アルザスの街と道中の会話

 アルザスの街には2時間もかからずに到着した。一応この世界にも時計はあるらしくフェリスが懐中時計を持っていた。


 道中も弱いモンスターに何度か襲撃されたが3人で協力して簡単に討伐することができた。やはり、あのサイクロプスは異常だったらしい。


 俺が剣を振るたびにセシルが「おお!」だの「ほぉ...」だの叫んだり感じ入ったりするのでなんだか落ち着かなかった。


 とにもかくにもアルザスの街に着いたのだった。


 アルザスの街は高い壁で囲まれたザ・ファンタジーな感じの街だった。道路は石畳で整備されており、家屋もかなりの数が立ち並んでいる。それなりの大きさの街らしい。



「あら、セシル、フェリス。今日は早いのね」



 と、関所で二人が呼び止められた。相手は衛兵姿のお姉さんだ。



「なに、少し良い出会いがあってな」


「もしかして、そちらの方?」



 衛兵は俺を見て言う。



「異国の剣聖様だ。名をミキト・ササモリ殿と言う」


「剣聖? あら、それはすごい」


「すごく強くて、一人で上位のサイクロプスを倒しちゃったんです!」


「あら、まぁ」


「ミキト殿は冒険者になりたいそうでな。ギルドにお連れしようと思う。通行は許可してくれるな?」


「はいはい、もちろん」



 そう言いながら衛兵は書類を書いていく。俺は求められるままにサインを書く。これも転生者としてのスキルなのかこの世界の文字はスラスラ書けた。セシルたちの言葉が普通に聞き取れるのもそういうスキルが働いているんだろう。



「この子、強い剣士様に目がないんですよ? お気をつけください」



 と、こっそり衛兵のお姉さんは耳打ちしてきた。



「聞こえてるぞ! 変なことをミキト殿に吹き込むなマリア!」



 セシルは怒っていた。かなり顔が真っ赤だった。目がないって、よほどの剣士オタクなのか。俺もオタクだったので親近感が湧く。


 そうして、俺たちはアルザスの街に入る。道行く人には角が生えていたり、獣耳が生えていたり、どう見てもトカゲの姿の者がいたり、いかにもファンタジーといった感じだ。荷馬車を引くのも馬だけでなく、見たことのないずんぐりした毛むくじゃらの動物だったりした。やはり、俺の住む世界とは全然違うファンタジー世界のようだ。



「異国が珍しいですか? ミキト様」



 横からフェリスが聞いてくる。よほどもの珍し気に見えたらしい。



「う、うん。俺の国じゃこんなに色んな人間や動物はいなかったから」


「そうなんですか。国はどのあたりなんですか?」


「ひ、東の方の島国だ。人間と普通の動物しかいなかったよ」


「そうなんですね。なら、随分街も違ってびっくりですね」



 フェリスは屈託なく笑う。素直ないい子なんだろう。俺のしどろもどろの出まかせに気づいた様子はない。



「東ですか。確かにあちらはまだ国交のない国も多いと聞きます。随分遠くから来られたのですね」



 そして、セシルが言った。



「ま、まぁそんな感じ」



 俺はもごもごと答えた。これ以上話してボロが出るのは避けたい。


 と、そんな俺を見て。



「セシルさん、もうその堅苦しいのやめませんか? ミキト様困ってますよ」


「ば、馬鹿な。こんな尊敬出来る御仁に態度を和らげるなど....」



 フェリスは少し勘違いをしてくれたようだが好都合だった。実際フェリスの言う通りだし。



「ごめん、俺そんな風に扱われるのに慣れてなくてさ。もっと普通にしてくれた方がありがたいよ」


「で、ですが....」


「フェリスも呼び捨てで良いよ?」


「え? そうですか? なら、ミキトさんって呼びますね。うん、そっちの方が仲良くなれそうです!」


「ふぇ、フェリス」


「セシルも頼むよ」


「む、むぅ」



 セシルも困っている様子だった。しかし、ついこの前まで工事現場で親方に怒鳴られていた俺がいきなり貴賓扱いはさすがに苦しい。人によっては悪い気はしないのかもしれないけど俺は苦しい。根が小市民なのだから。



「で、ではミキトと。それでよろしいですか?」


「もう、セシルさん。口調も砕けないと、っていうかいつも通りで良いんじゃないですか?」


「むぅ、で、では」



 セシルはすぅ、と深呼吸をし、



「これよりギルドに案内する。着いてきてくれミキト」


「うん、その方がありがたいかな」



 うん、普通にしゃべってくれた方がありがたい。



「尊敬する剣聖様にこのような....!」


「尊敬する剣聖様がそうしてくれって言ってるんだから良いじゃないですか」



 そう言われてもセシルはうーん、と思い悩んでいた。かなり真面目な少女らしい。良いことだと思う。


 そして、街の中を進んでいくと。



「見えてきた。あれがギルドだミキト」



 ちゃんと普通のしゃべり方でセシルは言ってくれた。剣と盾の紋章が刻まれたひときわ大きな建物。それが冒険者ギルドらしかった。

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