TRPGリプレイ「異世界転生は誰が為に!? HYPER☆HEARTFULLTRAVELER」

大山組@TPRGログ保管庫

幼年~少年期

1章 始まりの遺跡編

第1話 飛行機事故、そして異世界転生

【異世界転生は誰が為に!?HYPER☆HEARTFULLTRAVELER】


【20XX年――志摩半島上空・ANC131便旅客機内】


客室乗務員「皆さま、今日も全日航ANC131便、羽田行をご利用くださいましてありがとうございます。この便の機長は貴島賢人きじま けんと、私は客室を担当いたします酒匂遥さかわ はるかでございます。まもなく出発いたします。シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。羽田空港までの飛行時間は1時間30分を予定しております。ご利用の際は、お気軽に乗務員に声をおかけください。それでは、ごゆっくりおくつろぎください。」


【出発後、ほどなくして客室乗務員のアナウンスによりシートベルトサインが消え、離陸後の気圧変化による身体的な変調にも肉体が順応しはじめた頃合い――晴れて卒業旅行を迎えた鹿児島谷山学園の卒業生徒らはにわかに活気付きはじめていた。さもありなん、大抵の生徒らは進路先が決まり、あとは待ちに待った旅行を満喫することだけがやるべき事といっても過言ではない。】


【普段の仲のいいメンツだけで固まったグループは、ここぞとばかりに談笑を始める頃合いであった。】


男子学生「いやぁ、やっと卒業旅行だな――殆どが進路も決まったし後はのんびり旅を満喫するだけだ(ざわざわと生徒だけが座して占める航空機内では学生らはざわざわと会話をはじめ、それを担任がやんわりと注意する光景が広がっており)」


宇師神拿うすいかんな《うすいかんな》「―――………ふぅ。(離陸後の何とも言えない浮遊感と振動を体感したのちに安定した航行になれば、息を吐くように一息息が漏れる。窓の外は晴れ晴れとした絶景が広がっており、それを横目で見れば)」


倉谷秋葉くらたにあきは「おお……飛んでる(離陸直後の飛び立つ緊張感に身体を強張らせたのも束の間、飛行機の窓から見える青空に高揚した気分を心に秘めながら、思わず鼻歌を歌いだしたくなる)」


倉谷秋葉くらたにあきは「卒業旅行……(男子学生のはしゃぐ声に昂揚した気分に冷や水をさされた気分になる。秋葉がこの学校に入りたかった理由。それは青春を過ごすためだ。そう、この高校生活は本当に楽しかった。あまり人と関わることを苦手とする自分だけど、気の知れた友達も出来た。)」


倉谷秋葉くらたにあきは「(その代償として家系の学歴に傷をつけ、親と大喧嘩をして見事まあ冷え切ってしまったのだが……)まあ、その程度些細だ(独り言ちてため息を吐く。きっと高校を卒業したら大学にすら行かせて貰えず就職するのだろう)」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「ヒャッホー!とうとう待ちに待った卒業旅行だぜー!!神拿!華一!テンションAGEAGEでいこうぜ!!(っと、席から飛び上がって、人懐っこく、首に巻きつき)倉谷ちゃーん、飛行機ごときに感動してないで、これから一緒に飛び上がろうぜぇー!!(っと、拳を上げ)」


倉谷秋葉くらたにあきは「しかし宇佐宮くん、実に楽しそうでなによりだ(うちのクラスで誰でも分け隔てなく仲良くしている宇佐宮が声をかけてきた。こんなボクにたいしても良くしてくれる良い人だ)」


座散乱木華一ざざらぎかいち「実に下らん。俺は寝るから起こすなよ愚民共(はしゃぐ生徒たちを一瞥しドブ川の腐ったような色の瞳をアイマスクで隠し、出発早々深い眠りにつこうとする。が機内の騒音がそうはさせない)喧しいやつらだ…」

宇佐宮黒斗うさみやくろと「華一~?相変わらずツンケンしてんなー、そんなんじゃ女の子にモテないぜぇ~?ねえ、倉谷ちゃーん?(っと、うざ絡みしながら、華一に対する態度を女子の意見を聞こうと、声をかけ)」


座散乱木華一ざざらぎかいち《ざざらぎかいち》《ざざらぎかいち》「長旅というのにこんな最初からはしゃいでどうする。あ、ウサちゃんだから跳ねることしか脳がないのか。こいつは失礼(後ろの生徒に声も掛けず勢いよくリクライニングを倒しながらそうつぶやく)」


宇師神拿うすいかんな「フッ、相変わらず騒がしい奴だ。(飛び跳ねる兎のように騒ぐ男性に目を伏せて微笑を浮かべれば、機内に乗り込む前に買ったで知られるMAX珈琲を口に含めば、その姿は似合うが中身は激甘コーヒーでギャップがあり)」


宇師神拿うすいかんな「ほら、皆も食べるといい。(そう差し出すように渡すものは何とも言えないファンシーなクッキーのお菓子)」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「おっ、神拿~、何飲んでんの?俺っちにも一口くれよ~(っと、旅行の特有の高揚したテンションで、コロコロとうざ絡みする対象を変え、彼の飲む飲み物を一口貰い)ごぇ・・・、あっま!!!あっまま!!お前・・・相変わらずその顔に似合わない甘党・・・どうにかしろよ、どう考えても人殺しそうな面してんだから、ブラックしょ!!(っと、ビシッと突っ込み)」


宇師神拿うすいかんな「めっ、目付きは関係ないだろ………!?(厳しい指摘に動揺する様に狼狽えれば)お前にはこのクッキーはやらん。(っとすねるように遠ざければ)」


【航空機内の旅気分を満喫していると、不意に機内後部からドンッと小さい音が搭乗している全員の耳朶へと届いた。客室乗務員の顔までもが一瞬強ばるものの、なんの支障もなく機体は飛行を続け、支障はないことを暗に伝え】


男子学生「――おいおい、今なんか変な音したけど大丈夫かよ?誰か機内でジャンプしたんじゃねぇだろうな?(一瞬のしじまの末に、場の生徒らが安堵の表情と共に口々に文句を言い始め)」


担任「あー、良いから、みんな静かにしなさい。航空機は統計学上、最も安全な乗り物なんだ。安心しなさい。(未だにざわついている近くの生徒をなだめるように担任が軽く腰を持ち上げて言葉を告げ)」


宇師神拿うすいかんな「―――ッ。(小さな揺れを感じたが、特に安定した飛行を続けている様子に気にすることなく)」


倉谷秋葉くらたにあきは「(そうだ、暗いことを考えるのはやめておこう。卒業旅行をめい一杯楽しもうじゃないか。そう心に決めて普段はあまり見せない笑みを浮かべ)ふむ、なんだね?(ドスン、という異音が飛行機の中に響き渡る。直後、機内アナウンスが流れれば一往に安堵し)」


座散乱木華一ざざらぎかいち「(ざわつく皆を他所に神拿からもらったクッキーを頬張りながら)乱気流というやつだろ。今どき映画でもあるまいし昨今の航空技術でエンジントラブルなぞ起きてたまるか。まして墜落などありえん。縁起が悪い。気にする方がどうかしてるな脳みそプチトマトか?(不安そうな皆を彼なりに励ましているつもりなのだが流れるように煽るのはもはや性分である)」


倉谷秋葉くらたにあきは「うむ、飛行機が落ちる確率など、それこそ天文学的な事案だろうとも……さて、ボクも優雅な空の旅を満喫させてもらうよ(リクライニングを少し傾けてポケットから小説を取り出す。)」


客室乗務員「皆様、ただいまシートベルト着用のサインが点灯いたしました。シートベルトをしっかりとお締めください。これからしばらくのあいだ、揺れることが予想されます。機長の指示により、客室乗務員も着席いたします。お客様ご自身でシートベルトをお確かめください。なお、シートベルト着用のサインがついているあいだ、化粧室の使用はお控えください。」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「ん?(っと、一瞬響いた大きな音に、首を左右に振り疑問符を出す、するとシートベルトのサインが付き、席に戻れとアナウンスが流れれば)おいおい、なんだよー、せっかく楽しいトークタイムに水を指すなよ~(っと、神拿やらないと言われたクッキーを勝手に取りながら、口に加え、渋々と席に戻り)」


倉谷秋葉くらたにあきは「(シートベルト着用サインがつき)ふむ、こんなに天気がいいのシートベルトとはね」


【客室乗務員の落ち着き払った機内アナウンスが流れてしばらくしてからであった。機内に浅い緊張が走りながらも次第にそんな気流も弛緩していた頃、機体下部から聞いたことがないような厚い金属がバリバリと引き裂かれるような怒号が響き渡る――機体は上下に静かに動揺し、それでも尚、客室乗務員らの面差しは冷静そのもので、そも墜落など有りえないと言わんばかりの落ち着きであった。】


男子学生「おいおい、まじでこれ大丈夫かよ!!(流石に常軌を逸した破裂音に我慢ならないといった声が次々に上がり、機内は混乱の声でうずまき)」


宇師神拿うすいかんな「―――なんだ…?(席に深く腰掛けてシートベルトをすれば聞いたこともない何とも言えない音が鳴り響けば、男独自の感覚で何かを感じ取れば手からは汗が滲んでおり)」


倉谷秋葉くらたにあきは「(ピクリ、と眉を震わせた。明らかに普通とは違う状況。周りの生徒が声を荒げて不安をあおる。周囲の状況に飲まれてはいけないというが、不慣れな場所、不慣れな空間ともなれば秋葉とて状況にのまれて周囲を見渡す)……本当に、大丈夫?」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「(席に戻り、シートベルトをした瞬間に、機体の後方からもの凄い金属音の破壊音が響き渡り、機体が振動し始めれば)うっお・・・!?なっなんの音だよっ!!??(っと、椅子のグリップに握り締め)」


座散乱木華一ざざらぎかいち「あっこれマジのやつかぁ…撮っとこ。みんな~ハイチーズ(阿鼻叫喚の機内をスマホで撮影し自らもシートベルトを着用する)気休めにしかならんだろこれ」


【高度27000フィートの上空で機体一部が脱落すると同時に、機体が大きく上下に動揺した。アトラクションのコースターが落下する瞬間に似た浮遊感を一同は感じ――眼前には黄色の酸素マスクが降りる。】


【日本語と英語の両言語が2回ずつリピートされる緊急アナウンス、二度目の爆発によって旅客席にまで亀裂が生じると、それらはただ残聴となった。空洞、吹き飛ぶ人体、阿鼻叫喚――……濃い白銀色の雲が肉薄し、ひしゃげ破れた窓から覗く青空――】


宇師神拿うすいかんな「黒斗、秋葉、華一………嫌な感じがする―――。(そう呟いた瞬間直後大きくバンドする様に機内が揺れれば、直後に視界に酸素マスクが入れば浮遊感と共に視界が回転する様にしながら身体能力を総動員して座席に片手を伸ばしてしがみつく様にして下半身が宙に浮けば)馬鹿なッッッーーー!!!!クソッッッ!!!(直面する現実に信じられないというように片目を瞑って言葉を吐けば)」


倉谷秋葉くらたにあきは「――わぁっ!!!(急激な浮遊感に思わず身を縮める。秋葉自身、いわゆる絶叫系というものが苦手な人間だ。しかもここは空の上。墜落という現実を目の当たりにして頭が白黒になった)はっ……はっ……かはっ!(機体がひしゃげ、上空の冷え切った空気と急激な気圧の変化に咽込んだ。そして)……あっ(思わず首に手を当ててしまい、秋葉は青々とした空へと投げ出された)」


宇師神拿うすいかんな「秋葉ァアアアアアアア!!!!手を伸ばせェェエエ!!!!!(宙に投げ出された彼女に叫ぶように手を伸ばせば)」


倉谷秋葉くらたにあきは「(青々とした空に投げ出される。冷たい大気が喉元を通り、目の前が真っ暗になった。きっとこのまま気絶して、なにも知らないうちに死ぬのだろう。そう思った矢先だった。)宇師……くんっ(秋葉の名前を叫び、手を伸ばす青年がいた。身体を泳がせ、歯を食いしばって手を伸ばす)まだ、まだっ!(懸命に手を伸ばし、秋葉は青年の手を掴もうとして)あっ……(目の前を尾翼の鉄板が猛スピードで通過する。鈍重の感覚と共に手を伸ばした手が千切れ飛んだ)……うそ、でしょ……(目の前で己の鮮血が舞い散る様を見ながら、秋葉の宇師の手を掴むことが叶わなかった)」


宇師神拿うすいかんな「秋葉―――。(掴めたと思って安堵の声を上げようとした瞬間、女性の手が吹き飛ぶようにして鮮血が上がり、その液体が顔に降りかかれば、それと同時に一瞬にして姿が見えなくなれば)うっ………ウソだァアアアアアアアアアアア!!!?(っと何も掴めなかった手を握りしめるようにして叫べば)」


座散乱木華一ざざらぎかいち「みんな来世ではどうなりたい?俺はちゃんと不労所得で生きたいなぁ。それか…イケメンヒーローに…(吹き飛ぶ人々を苦笑いして眺めながら呟く。それが座散乱木華一ざざらぎかいち《ざざらぎかいち》《ざざらぎかいち》の最期の言葉であった。リクライニングに寝そべったまま中空に放り出された体はシートごと航空機のエンジンに吸い込まれ爆散し彼は18年の生涯にひっそりと幕を下ろした)」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「(瞬間、機体が大きく傾き始め、ジェットコースターのような重力と、浮遊感を感じ始めれば、ワンテンポ遅れて、緊急用の酸素マスクが飛び出し、緊急アナウンスの怒号が響き渡り)ちょちょちょ・・・!!!!うっそだ・・・っろ!!??(機体がバリバリと亀裂が入り、吹っ飛ばされれば、さっきまで当たり前のように座っていた、馴染みのクラスの生徒が、次々と機体外に飛ばされ)みんな・・・!!華一ぃ!!神拿ッ!!・・・倉・・・谷ちゃんっっ・・・!!(さっきまで話していた友人や、女子生徒がまるで掃除機に吸われる駒の様に飛ばされ、それを見ながら血の気が引き)ヒッ・・・死にたくない!死に・・・たくない!!(っと、必死に生にすがる様に、前方にあるグリップを血が滲むくらい握り締め)うっわわ、うわあわあああああああああ―――っ!!!!!!(っと、物凄い衝撃を感じ、テレビを消した様に、目の前が暗転した)」


宇師神拿うすいかんな「黒斗、華一………(機体がバラバラになった瞬間姿が消えた親友の名を惜しむように言葉を紡げば)―――フッ………終わりか…。(そう言葉を紡げば掴んでいた手の力を緩めるようにしてパッと離せば、すがすがしいほどの青空に宙を躍らせて目を瞑って身を任せた)」


【この日、ANC131便、東京羽田行きに搭乗した鹿児島谷山学園の生徒を含めた乗客、乗務員のすべてが凄惨な事故により死亡した。】



――――――



【????――】


【果てしなく広がった濃淡の、非幾何学的な、なんの意味も持たない模様。不気味なしじまが座して占め、それでいてまるで白昼夢の只中みたいに時間の筋道が欠いている。そこに自意識があるのか、あるいは自身であった意識の残滓が捉えたフィルムの一欠片に過ぎないのか、自我の判別すら「彼ら」には難しかった。天体が何千万、何億と悠久の歳月をかけて旅をするように、自身もまるでその一部になったと言われてもきっと疑う余地はないだろう】


【――……確かに、圧倒的な現実を前に彼らの人生は幕を閉じた。肉体はとうの昔に生命維持が不可能なレベルにまで砕け、本来ならば肉体と一体不可分な自意識の断片のみが暗澹とした闇を揺蕩っている。】


【やがて一個の自覚としては不確かであった、大小様々な「彼ら」の欠片――粒子単位であったそれら宙空を漂う無形の何者かによって縫合されてゆく。みるみる内に「彼ら」の不鮮明な個性が蘇っては、生前の肉体までもが虚ろな実像として途方もない暗黒の世界に浮かび上がる。】


【まるで午睡から目醒た直後であった】


【前後不覚のなか、平衡すらままならない内に彼らは得体の知れない空間へと放り出された。重力感の一切ない闇――ともすれば、独りであれば気が触れてもおかしくないであろう世界で、不可思議なことに恐怖は湧き上がってこない。】


【そうして周囲を見渡せば同じく、つい先刻――と表現すれば語弊があるかも知れないが、寸前まで時間を共有していた友人の姿が見て取れる。4人――それも、一糸まとわぬ姿でこそあったが】


【ロールスタート】


倉谷秋葉くらたにあきは「う、んんっ……(まどろみから目を覚ますように、秋葉はゆっくりと目を覚ました。)……ふむ、ボクは間違いなく死んだと思ったんだがね(先ほど吹き飛ばされた手を見てみる。手は繋がっていて欠損した様子はない。むしろ日焼けをしていない白々しい肌はどことなくボンヤリと輝いているようにもみえ)ここは死後の世界、というものだろうか」


宇師神拿うすいかんな「―――ッッッは!!!!!(意識が覚醒する様に目を覚ませば、何とも言えない空間に状況を把握するように視線だけ左右に動かせば)なっ……、なんだ此処は…。」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「(最初は無であった、何もない無、そこから意識というものが花が咲く様に徐々に芽生え始め、開けば、自分という物が知覚され、やがて肉体が構築し、闇の中で一人、降り立った)えっ――・・・、なに・・・、俺・・・死んだよな・・・?(っと、怪我が無いか、手探りする様に、自分の身体を見てみれば、一糸纏わぬ姿であり)なっなんじゃこりゃあ!!(すると、周りに自分と同じ様に、裸体の姿で、先ほどまで共にしていた友人達もいることが分かり)みんな!無事だったんだな!!(っと、走り寄り)」


座散乱木華一ざざらぎかいち「きゃーーーーー!!黒斗さんのえっち!!!(わざとらしく顔を隠しながらも辺りを見渡し虚無であることを確認する)で?なんだこの非現実的な空間は。まさか…俺の前世の善行が皆を救ったのか?感謝しろよお前ら(しかしイカれているので正常な判断は下せなかった。否。常人である華一にはこの状況を正しく飲み込めない状態であった)」


倉谷秋葉くらたにあきは「やあ、みんなもここにいるとは奇遇じゃあないか(周囲を見渡せば、クラスで仲の良かった男子生徒たちの姿が見える。手を振ろうとも思ったが、恥部こそ謎の光で見えないが彼らが裸体であることに気が付き)……(自身の肢体を見下ろすと、自分もまた一糸まとわない謎の光に包まれた姿になっていることに気が付く)おいおい、神様よ。もうすこし配慮というものはないのかね。ここが現世なら間違いなく女性の利権団体が大騒ぎするレベルの大問題だぞ……」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「(羞恥なく近づいてくる、一糸纏わぬ、友人の女子生徒に)うわ!倉谷ちゃん!なんつー姿で――っ!?うっわわあわ(っと、赤面しながら両目を覆う様に隠し、しかし、男の性か、指の隙間から覗き)」


宇師神拿うすいかんな「皆……良かった。(そう3人の存在を確認すれば安堵する様に息を漏らせば、女性の悲惨な姿を見たのも相まって、目を凝らして5体満足を確認してもう一度安堵すれば)」

-

倉谷秋葉くらたにあきは「宇師くん、そう女性の肢体を舐め回すように見るものじゃあない。気の知れた仲とはいえ、流石にボクだって一般女性相応の羞恥心は心得ているつもりだ(ため息交じりに半目で周囲を見渡せば宇佐宮とも視線が合い)……まあ、健全な男子高生がこの状況で目を逸らせというのも土台無理な話だろうさ(と、諦め半分達観した段階でで謎の声が響き渡り)おお、なんか声が聞こえるぞ」


???「――ようやく目覚めたか、こうして4体も復元出来たのは実に喜ばしい。――……ウサミヤクロト、ウスイカンナ、クラタニアキハ、ザザラギカイチ……生前の名称に相違はないな?(冥濛の空間から、ふわりと柔らかな心象をもって青白い光が4人の前に不意に浮かび上がる。鼓膜――否、仮初めの脳に直接響く声音は女性とも男性とも似つかない中性的な声音であった。)」


宇師神拿うすいかんな「―――ッッッ!!!!(突如脳に直接語り掛けてくる正体不明の何かに身体一つで身構えるようにようにして体制を取れば)何なんだ一体…。」


座散乱木華一ざざらぎかいち「なんだ今どき見ないこの演出は。あっ…というか我々の個人情報を勝手に漁ったな?法廷で会おう(中空に突如現出した光源はなぜか全員の名前を知っていた。これは個人情報保護の観点から言って重罪である。何が言いたいかというと華一はまだこれが何者かによる演出であると疑っているのだ。ありていに言えばテロリストに誘拐されたと思っている)ちなみに俺の実家から身代金を毟ろうと思っても無駄だぞ。ケチだからな」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「(すると、目の前に、光り輝く青白い光が現れ、人間の言葉をしゃべり始めれば)うお!?なんだ――っ!!えっ、なにこれ・・・人魂・・・?(っと、自分の知っているオカルト知識を総動員して、知っている正体の答えをとりあえず口にし)」


???「お前たちの生まれの言葉を借りると藪から棒に、といった所だったか――私も性急に事を運ぶことを良しとはしない、拙速は時に不和と軋轢を生むからな……。(身構える4人の周囲をくるりと取り囲むように浮遊すれば、改めて4人の前で静止して)」


???「――単刀直入に言わせてもらおう、君たちは死んだ。搭乗機の圧力隔壁の事故によってな」


座散乱木華一ざざらぎかいち「は?ではなぜ俺たちは生きている?寝言しか喋れんのか?(飲み込み難い真実であったためつい煽ってしまったが…内心は動揺が隠せないのである。事実自身は中空へ放り出された記憶がある…生きていられるか…?あの状態で。爆発したのに)」


宇師神拿うすいかんな「―――ッ。(はっきりと突き付けられた現実に深くのしかかる様に顔をこわばらせる、やはりあの現実は本物だったと嫌でも理解できるように生々しい光景がフラッシュバックすれば)ということは此処は死後の世界と呼ばれるものか。(そう思考を巡らせるようにして答えれば)」


倉谷秋葉くらたにあきは「ふむ、これはつまり、どういうことだね(謎の声から死亡宣告をされる。それは理解できる。あの状況で死んでなければ問題だ。この超常現象とも呼べる事象にも理解は出来る。いや、もしかしたら座散乱木くん言う通り、実は死んではおらず、何者かに保護または拉致されている状況というのも……)いや、ボクの手が生え変わっている時点でそれはないか」


???「まぁ――身を以て臨死を経験した君たちにとっては自明であろうが――……私の自己紹介をしておこう。思考粒子というと混乱を招くが――神と言うには些か俗っぽいな、ひとまずは上位存在と名乗っておこう。そちらの方が通りが良い。ザザラギカイチ、それは私が君たちを復元することに成功したからだ。ウスイカンナ、いや、ここは君たちの棲んでいた世界と地続きである。」


倉谷秋葉くらたにあきは「おお、上位存在……(超常現象であり己を上位存在と自称する未知の生命体もどきに興奮して思わず声を荒げる)ちょうかっこいい……!」


上位存在「クラタニアキハ、残念ながらその肉体は君らに対し一時的に視覚化を可能にした虚像にすぎない。生前の肉体のままのほうが混乱も少ないだろう。配慮だよ、私のね。……仮名だがね」


倉谷秋葉くらたにあきは「ふむ、つまるところこの肉体もとい魂は認識するためのガワとしてのみ機能しているということかね(しばらく理屈をこねくり回して考えてみたが、自身の理解を超えた現象である。当然理解することも出来ず)しかし超かっこいい上位存在よ、ボクたちにこの依り代を与えて何をしたいんだね。なにも適当にここに裸体のまま顕現させたという羞恥プレイではあるまいに」


宇師神拿うすいかんな「自分たちが棲んでいた世界と地続きだと………?(ますます混乱する単語が並び立てられれば眉を寄せて一層目付きが悪くなるようにして視線を巡らせると)兎に角だ、他の生徒がいなく自分たちだけが此処にいるということは何か目的があるのだろう?(そう言葉を返せば)」

-

宇佐宮黒斗うさみやくろと「(目の前の青白い光の正体は分からないが、自分達が死んだと言われれば)あっ――・・・、まあ、そうだよな・・・(っと、表情に暗い影を落とし、奇跡的に助かったのかと思ったが、この情景を見れば分かるが、どう考えても自分達の生きていた世界じゃない、神拿が、死後の世界かと言葉を投げかければ、目の前の光の塊は、自分を神様、もとい、上位存在だと名乗り)上位存在・・・、つまり、どっ・・・どういうことだってばよ・・・?(っと、間の抜けた表情で、疑問符を作り)」


上位存在「――ウサミヤクロト、ザザラギカイチ、ウスイカンナ、クラタニアキハ、良い質問だ。なにも君達を悪戯に復元させたわけではない。――そうだ、元の世界とはいかないが、ある条件で君たちと契約を結びたい。その為の場だよ、ここは。」


座散乱木華一ざざらぎかいち「フン…随分と気の利く『カミサマ』だな。その調子で元の世界に還してくれると嬉しいがな(秋葉は何故かときめいているが胡散臭いことこの上ない。やはり幻覚なのか…?)」


宇師神拿うすいかんな「契約………いいだろう。(相手から出た魔法少女になるかのような展開だが、臆することなくそう答えれば)どうせ選択肢はなさそうだしな。」


倉谷秋葉くらたにあきは「契約とな。それは面白そうだ(上位存在が示す提示に興味津々で頷く)どうせこの場に留まっていてもなにも始まらないのだろう。契約とやらの内容を教えてくれたまえ。アニメで見たことあるぞ。魔法少女になって闇落ちしていくようなものだろう?(目を光らせながらドヤ顔で謎の知識を披露していく)」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「(契約、多分言葉的に、生き返してくれると言われれば)えっ、マジか!それってゲームとか漫画とかラノベにある異世界転生ってやつか!!(っと、自分の生きていた現実世界で、有り触れていた作品知識を口にし)チートくれるの――っ!チート!!(っと、表情を輝かせながら、テンション爆上げしながら、その場でピョンピョンと跳ね)」


上位存在「20XX年のサブカルチャーには精通していないが――あくまで私の限界は君たちをその世界に産み落とす程度のものだ。(くるくるとクロトの周囲を飛び回っては、非情な現実を突きつけ)」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「(チートをくれるのかと、神様的存在の上位存在に、投げかけてみたが、チートはくれず、倉谷の言葉と共に、ただの転生だけといわれれば)ちぇ・・・チートなしかよー・・・つまんねー(っと、両手で後頭部を抱え、不満そうに唇を尖らせれば)せめて、平穏で健康的な身体で生まれたいぜー、まったくぅー・・・」


上位存在「そんな力はとうになくなった――言っただろう、私は随分に老いている。これでも相当に努力していることを理解して欲しいところだ。」


宇師神拿うすいかんな「生を得るだけめっけもんだと噛みしめるんだ。(そうはしゃいでいた男性の肩を力強く叩けば)」


座散乱木華一ざざらぎかいち「条件ねぇ…いいだろう迅速に話せ。黒斗と神拿が秋葉の素っ裸に辛抱たまらなくなりそうだ。俺?俺は俺より美しい女がタイプだ(正直まだ受け入れがたいが…混ぜ返したとてどうしようもない。癪だがここは話に乗ってやろう)」


上位存在「……私の願いはただ一つだ。上位存在とまで名乗ったが、私は随分に老いている。――こうした力を発現出来るのもこれが最後となるであろう。自身の手足すらろくに動けかせない始末の私を……君たちとは異なる世界の私を……《ある場所》まで無事に届けてやって欲しい。……君たちの合意が得られるのであれば、全霊を以て君らの自意識のまま、新たな肉体を与え、私の万顔が成就した際にはあらゆる願いを叶えようじゃないか。」


倉谷秋葉くらたにあきは「宇佐宮くん、残念なお知らせだ。チートどころか大仕事を押し付けられそうな雰囲気だ。まことに遺憾である」


倉谷秋葉くらたにあきは「とはいえ、このまま意識を閉じて生涯を追えるのも少々未練じみたものがあるのは確かだ(前世は親のアクセサリーのように生きていた。自分の自我を通せば殴られ、罵られた。只一自我を通したことは、ここに居る皆が通う高校に通えて友達が出来たことだろう。そのせいで家では両親と話さなくなったが……)次の人生があるというのなら、ぜひともあやかりたいな(そう、今度は自分らしく生きるために)」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「まあ、このままおっ死ぬより、はるかにマシだよな、オーケー、乗ったよ、その話!!(っと、ニヤリと笑いながら、サムズアップし)」


座散乱木華一ざざらぎかいち「テロリストにどこまで出来るか知らんが…いいだろう。俺は乗った。貴様の望みを叶え全国に俺の名を載せた自販機を置いてやる(全く信用できんがとりあえず口車に乗ることにした。そうでもしないといつまでもこのままだろう。早く服が着たい)」


宇師神拿うすいかんな「また4人で歩めることに俺は感謝する。(そうぐっと拳を握りしめれば)」


宇佐宮黒斗うさみやくろと「(友情を感じる宇師の熱い言葉に対し)ああ!どんな境遇でも、どんな姿でもお前ら俺を間違えるなよ!必ずこの四人で集まろう!」


上位存在「酷く乱暴な話だが――成熟した頃に君たちを迎えに来よう。それまで研鑽を積み、新たな世界に順応するといい。――……産まれてすぐ野垂れ死ぬのも良いだろう、不本意だが、私は万能の願望器ではない。大層な仮名を使っているが、本質的には君ら人間と大差ない一個人なのだから。」


上位存在「君たちが素直な子で感謝するよ。――それでは契約は成立した。努々忘れるな――……必ず迎えに来る。」


上位存在「さあ、流れよ。――あらゆる星の記憶を呑み込み、欠けた月を満たすため――……廻せ、世界を」


【上位存在と称する青白い発光体がチカチカと明滅すれば、4人全員の視界が揺らぐ、視程の奥へ奥へと発光体が吸い込まれてゆくのに比例して、彼らの生前の姿を象った肉体もまた霞がかかったように薄らいでいった。――唐突な事故であった、航空機内よりも明白に理解できる意識の消失が至近へと迫る】


【やがて肉体が完全に消失し、意識体となった彼らは元の宙空へと尾を引いて溶けた。】


【霧散し果てた魂魄が、混沌のなかで再構築される。星間を縫って巡る無形の種子が脈動して成熟すると、那由汰を駆けて異なる地表へと「神の賽」が投げ込まれた。それらは胎盤に横たわり、この星の胎児(あなた)として生まれ変わった。】


【その間――胎児(あなた)は長い夢を視た。海と鰭――土蔵と狩猟、農奴と封建制――……飢饉と戦争―……凄惨な情景が、次から次へと鮮やかな夢の一部となって胎児を苛める。血に濡れた顔貌、常軌を逸した姦淫――胎児を縊る両指――……おぞましい悪夢が現れるたび、胎児は腹を蹴った。】


【ああ――堪らない。こうして、胎児(あなた)は母の夢まで見てきて、いよいよ見るべき夢がなくなると、やがて静かに眠りに落ちた。】


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