TRPGリプレイ「異世界転生は誰が為に!? HYPER☆HEARTFULLTRAVELER」
大山組@TPRGログ保管庫
幼年~少年期
1章 始まりの遺跡編
第1話 飛行機事故、そして異世界転生
【異世界転生は誰が為に!?HYPER☆HEARTFULLTRAVELER】
【20XX年――志摩半島上空・ANC131便旅客機内】
客室乗務員「皆さま、今日も全日航ANC131便、羽田行をご利用くださいましてありがとうございます。この便の機長は
【出発後、ほどなくして客室乗務員のアナウンスによりシートベルトサインが消え、離陸後の気圧変化による身体的な変調にも肉体が順応しはじめた頃合い――晴れて卒業旅行を迎えた鹿児島谷山学園の卒業生徒らはにわかに活気付きはじめていた。さもありなん、大抵の生徒らは進路先が決まり、あとは待ちに待った旅行を満喫することだけがやるべき事といっても過言ではない。】
【普段の仲のいいメンツだけで固まったグループは、ここぞとばかりに談笑を始める頃合いであった。】
男子学生「いやぁ、やっと卒業旅行だな――殆どが進路も決まったし後はのんびり旅を満喫するだけだ(ざわざわと生徒だけが座して占める航空機内では学生らはざわざわと会話をはじめ、それを担任がやんわりと注意する光景が広がっており)」
【航空機内の旅気分を満喫していると、不意に機内後部からドンッと小さい音が搭乗している全員の耳朶へと届いた。客室乗務員の顔までもが一瞬強ばるものの、なんの支障もなく機体は飛行を続け、支障はないことを暗に伝え】
男子学生「――おいおい、今なんか変な音したけど大丈夫かよ?誰か機内でジャンプしたんじゃねぇだろうな?(一瞬のしじまの末に、場の生徒らが安堵の表情と共に口々に文句を言い始め)」
担任「あー、良いから、みんな静かにしなさい。航空機は統計学上、最も安全な乗り物なんだ。安心しなさい。(未だにざわついている近くの生徒をなだめるように担任が軽く腰を持ち上げて言葉を告げ)」
客室乗務員「皆様、ただいまシートベルト着用のサインが点灯いたしました。シートベルトをしっかりとお締めください。これからしばらくのあいだ、揺れることが予想されます。機長の指示により、客室乗務員も着席いたします。お客様ご自身でシートベルトをお確かめください。なお、シートベルト着用のサインがついているあいだ、化粧室の使用はお控えください。」
【客室乗務員の落ち着き払った機内アナウンスが流れてしばらくしてからであった。機内に浅い緊張が走りながらも次第にそんな気流も弛緩していた頃、機体下部から聞いたことがないような厚い金属がバリバリと引き裂かれるような怒号が響き渡る――機体は上下に静かに動揺し、それでも尚、客室乗務員らの面差しは冷静そのもので、そも墜落など有りえないと言わんばかりの落ち着きであった。】
男子学生「おいおい、まじでこれ大丈夫かよ!!(流石に常軌を逸した破裂音に我慢ならないといった声が次々に上がり、機内は混乱の声でうずまき)」
【高度27000フィートの上空で機体一部が脱落すると同時に、機体が大きく上下に動揺した。アトラクションのコースターが落下する瞬間に似た浮遊感を一同は感じ――眼前には黄色の酸素マスクが降りる。】
【日本語と英語の両言語が2回ずつリピートされる緊急アナウンス、二度目の爆発によって旅客席にまで亀裂が生じると、それらはただ残聴となった。空洞、吹き飛ぶ人体、阿鼻叫喚――……濃い白銀色の雲が肉薄し、ひしゃげ破れた窓から覗く青空――】
【この日、ANC131便、東京羽田行きに搭乗した鹿児島谷山学園の生徒を含めた乗客、乗務員のすべてが凄惨な事故により死亡した。】
――――――
【????――】
【果てしなく広がった濃淡の、非幾何学的な、なんの意味も持たない模様。不気味なしじまが座して占め、それでいてまるで白昼夢の只中みたいに時間の筋道が欠いている。そこに自意識があるのか、あるいは自身であった意識の残滓が捉えたフィルムの一欠片に過ぎないのか、自我の判別すら「彼ら」には難しかった。天体が何千万、何億と悠久の歳月をかけて旅をするように、自身もまるでその一部になったと言われてもきっと疑う余地はないだろう】
【――……確かに、圧倒的な現実を前に彼らの人生は幕を閉じた。肉体はとうの昔に生命維持が不可能なレベルにまで砕け、本来ならば肉体と一体不可分な自意識の断片のみが暗澹とした闇を揺蕩っている。】
【やがて一個の自覚としては不確かであった、大小様々な「彼ら」の欠片――粒子単位であったそれら宙空を漂う無形の何者かによって縫合されてゆく。みるみる内に「彼ら」の不鮮明な個性が蘇っては、生前の肉体までもが虚ろな実像として途方もない暗黒の世界に浮かび上がる。】
【まるで午睡から目醒た直後であった】
【前後不覚のなか、平衡すらままならない内に彼らは得体の知れない空間へと放り出された。重力感の一切ない闇――ともすれば、独りであれば気が触れてもおかしくないであろう世界で、不可思議なことに恐怖は湧き上がってこない。】
【そうして周囲を見渡せば同じく、つい先刻――と表現すれば語弊があるかも知れないが、寸前まで時間を共有していた友人の姿が見て取れる。4人――それも、一糸まとわぬ姿でこそあったが】
【ロールスタート】
-
???「――ようやく目覚めたか、こうして4体も復元出来たのは実に喜ばしい。――……ウサミヤクロト、ウスイカンナ、クラタニアキハ、ザザラギカイチ……生前の名称に相違はないな?(冥濛の空間から、ふわりと柔らかな心象をもって青白い光が4人の前に不意に浮かび上がる。鼓膜――否、仮初めの脳に直接響く声音は女性とも男性とも似つかない中性的な声音であった。)」
???「お前たちの生まれの言葉を借りると藪から棒に、といった所だったか――私も性急に事を運ぶことを良しとはしない、拙速は時に不和と軋轢を生むからな……。(身構える4人の周囲をくるりと取り囲むように浮遊すれば、改めて4人の前で静止して)」
???「――単刀直入に言わせてもらおう、君たちは死んだ。搭乗機の圧力隔壁の事故によってな」
???「まぁ――身を以て臨死を経験した君たちにとっては自明であろうが――……私の自己紹介をしておこう。思考粒子というと混乱を招くが――神と言うには些か俗っぽいな、ひとまずは上位存在と名乗っておこう。そちらの方が通りが良い。ザザラギカイチ、それは私が君たちを復元することに成功したからだ。ウスイカンナ、いや、ここは君たちの棲んでいた世界と地続きである。」
上位存在「クラタニアキハ、残念ながらその肉体は君らに対し一時的に視覚化を可能にした虚像にすぎない。生前の肉体のままのほうが混乱も少ないだろう。配慮だよ、私のね。……仮名だがね」
-
上位存在「――ウサミヤクロト、ザザラギカイチ、ウスイカンナ、クラタニアキハ、良い質問だ。なにも君達を悪戯に復元させたわけではない。――そうだ、元の世界とはいかないが、ある条件で君たちと契約を結びたい。その為の場だよ、ここは。」
上位存在「20XX年のサブカルチャーには精通していないが――あくまで私の限界は君たちをその世界に産み落とす程度のものだ。(くるくるとクロトの周囲を飛び回っては、非情な現実を突きつけ)」
上位存在「そんな力はとうになくなった――言っただろう、私は随分に老いている。これでも相当に努力していることを理解して欲しいところだ。」
上位存在「……私の願いはただ一つだ。上位存在とまで名乗ったが、私は随分に老いている。――こうした力を発現出来るのもこれが最後となるであろう。自身の手足すらろくに動けかせない始末の私を……君たちとは異なる世界の私を……《ある場所》まで無事に届けてやって欲しい。……君たちの合意が得られるのであれば、全霊を以て君らの自意識のまま、新たな肉体を与え、私の万顔が成就した際にはあらゆる願いを叶えようじゃないか。」
上位存在「酷く乱暴な話だが――成熟した頃に君たちを迎えに来よう。それまで研鑽を積み、新たな世界に順応するといい。――……産まれてすぐ野垂れ死ぬのも良いだろう、不本意だが、私は万能の願望器ではない。大層な仮名を使っているが、本質的には君ら人間と大差ない一個人なのだから。」
上位存在「君たちが素直な子で感謝するよ。――それでは契約は成立した。努々忘れるな――……必ず迎えに来る。」
上位存在「さあ、流れよ。――あらゆる星の記憶を呑み込み、欠けた月を満たすため――……廻せ、世界を」
【上位存在と称する青白い発光体がチカチカと明滅すれば、4人全員の視界が揺らぐ、視程の奥へ奥へと発光体が吸い込まれてゆくのに比例して、彼らの生前の姿を象った肉体もまた霞がかかったように薄らいでいった。――唐突な事故であった、航空機内よりも明白に理解できる意識の消失が至近へと迫る】
【やがて肉体が完全に消失し、意識体となった彼らは元の宙空へと尾を引いて溶けた。】
【霧散し果てた魂魄が、混沌のなかで再構築される。星間を縫って巡る無形の種子が脈動して成熟すると、那由汰を駆けて異なる地表へと「神の賽」が投げ込まれた。それらは胎盤に横たわり、この星の胎児(あなた)として生まれ変わった。】
【その間――胎児(あなた)は長い夢を視た。海と鰭――土蔵と狩猟、農奴と封建制――……飢饉と戦争―……凄惨な情景が、次から次へと鮮やかな夢の一部となって胎児を苛める。血に濡れた顔貌、常軌を逸した姦淫――胎児を縊る両指――……おぞましい悪夢が現れるたび、胎児は腹を蹴った。】
【ああ――堪らない。こうして、胎児(あなた)は母の夢まで見てきて、いよいよ見るべき夢がなくなると、やがて静かに眠りに落ちた。】
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