第9話 私は桃瀬に嫉妬する

ここで一週間後に練習試合なんて……


「さすが、先輩なら、いけます!」


 すかさずに桃瀬が月夜の腕を組んでいた。


「そうだとも、天音。あの面打ちなら大丈夫だ。私が油断していたとしても、一本とれたのだから、これなら大丈夫だ」


 宍戸先輩が月夜の肩をたたく。


 まけおしみで認めている大物感だしているけどね皆わかってるよ。

 

 宍戸先輩……カッコ悪い……


「そんなに私を期待をしてくれるなんて!」


 月夜は感激している。


 うわっ、そんな簡単なはずかしなるよ………この茶番。


 宍戸先輩も引いてる。


 たぶん、記憶喪失になってから、より素直になっている気が……


「次も勝てますよ! 月夜先輩!」


小手越しに手をにぎる桃瀬、うらやましいな。


なんで、あんなにアピールできるんだろう。

キラキラした目の桃瀬。そんな彼女に月夜も純真にみている。


「みんな、ありがとう……そんなに」


グスりと涙をふく月夜。


いいよね。純粋な月夜にあこがれた。


 人を疑わないというか……だから、私の恋人の話を受け入れてしまったんだろうけど……それって……本当は。


 思い悩んでしまう。ほんとは月夜は別に好きな人が……男の人じゃなくても。


「月夜先輩、すごいです! すごいです!!  尊敬します!!」


「小春。うれしいよ」


 あんな風に無邪気にしがみつく桃瀬のほうが。 

 小柄で愛らしい後輩って、しかも慕ってくれているって……


 うらやましい、私はあんなに月夜にしがみつけない。


 暗い欲望がつのってしまう。


 これって、昔から感じてた。

 ちやほやされる月夜、一番初めに好きになったのは私だった。


 気づけば、みんなに月夜に好かれようとしてる。

 桃瀬なんて素直に、好きをしめしていた。


ねぇ、私って恋人になればさ、特別になれるって信じていたけど、でも、本当はどうなの。


 わからなくなる。


月夜周りと宍戸先輩は勢いに盛り上がった。


けど、それだけじゃない。


「あ、あの、1週間後の試合、天羽さんには辛くないですか?」


でも、同時に月夜がいないことで試合でれるかもしれない部員は慌てているだろう。


だって、月夜の入院で試合に出れたのは後藤先輩だったし。


「大丈夫さ。手を抜いていたとはいえ、私から一本取れるんだから、天羽は大丈夫さ」


にこやかに宍戸先輩が口にする。

空気を読まないように。


わかるよ。彼女は月夜には劣る腕前なのだから、先輩と月夜がいなくならない限り、試合にはでれない。


「けど……」


辛そうに顔を歪めていた、

なにせ、自分の立場は危うくなったんだ。


「ありがとう。心配してくれて、私は大丈夫だから……」


月夜は彼女にほほえむ。


あっ、そんなこと言われると彼女は何も言えない。


かわいそうに。


表情を隠すように下をむいている。


これも、嫉妬だよね。


あとは、先制が決めること、月夜のファンと宍戸先輩は、先制の判断をまっていた。


やがて、先生はため息をついて、決断する。


「しかたない。もう、すきにして」


先生の判断に盛り上がる人、下がる人。


でも、どちらの気持ちもわかる。

月夜の活躍をみたい私、そして、月夜が出ることででれなくなる可能性のある子。


月夜さえいなければ、月夜がいてくれでは、そんな二つの感覚がうずまいていた。


月夜はそれに気づいていたのだろうか……

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