第7話 アンチよ それはパセリかセロリか
『パースリー、セージ、ローズマリー、タイム、そして、パースリー』
丁度、第一部を書き終えました小説の出だしは、スカボロフェアとして有名な曲に使われている古い詩と重ねました。
勿論、これを歌詞に使っているサイモン&ガーファンクルの音楽がいろいろ小説の設定に具合が良く、歌を思い浮かべて頂けると冒頭の雰囲気として余計な説明が要らない、というのも先頭に据えた理由ですが。
パセリをパースリーと表記出来る!
と思ったのが実は一番、大きかったです(苦笑)
日本の「パセリ(カーリーパセリ)」はまず種類から違い、イメージがずれる上に、パセリの説話や迷信を書こうとすると、アンチかと思われそうな域でして……パースリー表記を選びました。
その昔の人のアンチ・パセリぶりをここでは語ります。
まずパセリ、ヴィクトリア朝から花言葉では「祝祭:festivity」が挙がります。
というのも、古代オリンピックと並ぶ競技会、ネメア祭やイストミア祭で勝者の冠にセロリが使われたそうで。
「は? セロリ? パセリの話じゃないの?」
と思われた方、ご尤もです。でも、古代ギリシャの記述ではセロリかパセリか判り難い、古い文献の植物名、何を指すのかビミョー案件なのですね。
σελινον(セリーノン)がセロリ。
πετροσελινον(ペトロセリーノン)が直訳だと岩セロリで、これがパセリ。
……らしいのですが、古代ギリシャのセリーノンは、セロリではなく岩セロリ=パセリだ説もあります。当時のセロリは今のような太い茎ではなく、大袈裟に言えばイタリアン・パセリに近い見た目。
因みに古い日本語訳ですと、セリーノンは芹と置き換えられており、香る青葉の草を指す基本単語的に捉えると良いのかな、と思うのです。
兎も角、πετροσελινον=petroselinon からパセリの学名、petroselinumは導かれます。つまり、パセリの学名は岩セロリ。どっちがどっち? にもなります。
セロリとパセリの境界線は曖昧ってことで以下、面倒なのでセリーノン。
このセリーノンに「死」の伝承や迷信が結び付いています。
そもそもネメア祭やイストミア祭に弔いの競技会という位置付けがあり、だからセリーノンの冠を使った伝承になります。お墓にセリーノンの花輪という位、葬儀と縁が深い植物です。
日本で言うところの菊と似ていて、菊はめでたい花でも仏花のイメージが日常生活では強いですよね。お見舞いに避けます。それに近い感覚がセリーノンにあったことが文献から伺えます。
古代ギリシャの死者は適切に弔わないと壮絶に祟る設定なので、物凄く弔いに力が入っているのですが、その視点から要はスポーツ大会という鎮魂祭をしました。
そして、祟り(例えば、病気や災害)がおさまらないと亡者が慰められていないから、また弔うことになります。オリンピックを含めた四大競技会はこのように繰り返された先の定期開催、と唱える説もある位です。
少なくともネメア祭等は祝祭より先に葬祭がありました。そのネメア祭の発祥の伝説は、後付けの理由と言われているのですが、こんなです。
ネメアの赤ちゃんオフェルテス君、地面に寝かされ、蛇に殺される事故が発生。彼は「死の先導者」のような別名を与えられます。
彼の血からセリーノンが生えた、セリーノンの上に寝かされていて亡くなった等々、書いた人がいて、この植物は死と強く結び付いている訳です。そして、彼を弔うために開かれるのがネメア祭ということになりました。
ローマ時代、軍隊がセリーノン積んだ騾馬を見て不吉だと恐れ慄いた、と書く人がいる位、ホラー植物だったようです。隊長さんが機転を効かせ、
「ギリシャでは勝者にコレの冠、与えてたのに向こうから来たぜ! 冠被っちゃおうぜ! 俺達、もう勝ち決定!」
みたいなパフォーマンスをして戦に勝利したそうで。
必要ですよね、こういう人。
この優勝者を讃えるセリーノン冠の印象がパセリの祝祭の花言葉、という流れと存じます。
とはいえ、セリーノンはセロリが定説なので、その場合のパセリの立場が哀し過ぎる気がしますが、パセリはパセリで死者が出た時に花輪にされてはいたようです。深く考えるのはやめましょう。
昔、香りの強い植物は大概、死と関係がありました。パセリだけではありません。ご遺体には香料になるものが必要なのです。
栄養あるパセリを嫌わないでくださいね。
後、誰かがくれたお弁当にパセリが入っているから、呪われた、とかネットに投稿なさいませんように。パセリ業界がダメージを受けますから。
後の時代にもパセリは色々、酷いことを言われています。
連合王国では、welsh parsley(ウェールズのパセリ)という単語が絞首刑の縄のことだと聞いた時は「WHY!?」となりそうでした。
発芽しなかった種は悪魔のところに行った、という考え自体は判らないではありません。地下に行くイメージになりますので、古代ギリシャならば冥府のもの、キリスト教ならば悪魔になるだろうな、と思います。只、それって他の植物もでは、と私はツッコミたくなるのでした。
何となく不吉な感じの説話から、庭に生えたら年内に死者が出る説まで兎に角、呆れる程に嫌がられていましたパセリ。つくづくパセリに罪はないのに(溜息)
お陰様で、小説ではヒロインがとんでもなく苦労するしかなくなった、と言えば責任転嫁でしょうか。
このパセリを背負わせるキャラを誰にするか、と言えば、やはり主人公しか私は考えられませんでした。
さて、前回、キャラを語っているだけに見えたでしょうエピソード。実はこのパセリとセロリの前振りにしようと書きました。ダッフォディルとナルキッソスの区別など、パセリとセロリに較べれば! というネタでした(こんなに間があく予定ではなかったもので。エッセイは書いてあり、小説の第一部が終わったらアップするつもりでした)。
面倒なことをして申し訳ありません。
この作品は少し読者様の忍耐を必要とする構成や文章になっております。
私はこのエッセイも前提の小説も、もう古典化されて文学と呼ばれている作品を読む為の足がかりになれば、と願って書いています。習俗や言葉が遠いが故に、読み難くなってしまった作品へのバリア解消ができたらな、と思うのです。
私なりに年月かけて手探りで得た感触に過ぎませんが。習慣や文化に関しては、そんなものでもないよりマシな時がありますので。
でも、余り情報を整理して提供してしまうと、きちんと調べた本が売れなくなってしまうのです。あくまでも自作語りに織り交ぜる形で展開致します。
私一人で解消できる程、バリアは小さくないので、WEB小説のように自由に書けるところで書ける人が自分なりに書いたら、少しずつ段差が小さくなって優しい階段にならないかな、と私は期待しています。
でも、カクヨムにコンテストがあることすら知らず、登録した私のような道楽者はきっと少ないので、皆様、もっと別の目的がおありでしょう。ですので、カクヨム卒業に失敗した私は自作のネタ解説という形で、もう一段、段差解消のステップを作成できるかもしれない、と試行錯誤しております。
最後にパセリに戻りましょう。
このパセリに対するイメージを前提にすると、スカボロフェアの香草の並びが私には次のような印象です。
パセリ:玄冬 ……死のイメージの草
セージ:青春 ……人(命や健康)のイメージの草
ローズマリー:朱夏 ……生死超越(常緑)のイメージの葉
タイム:白秋 ……勇者(半神)のイメージの草
様々な解釈のある詩で、行商の決まり文句だと言われますが、並びとして見ると、それぞれのハーブにまつわるイメージが面白い繋がりにも見えると私は感じました。玄冬を出発点として活性化し、循環するような雰囲気に思えるのです。
玄冬は命の終着点であり出発点。パセリは単なる死を思わせる植物というより、玄冬のイメージなのではないかな、と私は思いたいです。
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