第5話 スケルトンスーツ 何歳で着る?

 レディのジュエリー、男女共にあるアクセサリーと語ったので、今度は紳士……になる予定のメンズファッション。

 十八世紀から十九世紀の間、存在した男児専用子供服、スケルトンスーツです。


 先にお断りしておきますが、「スケルトンスーツ」で検索すると、コスプレ以外に出番のなさそうな骨格を描いた全身タイツの様なものが出て来ます。

 それではなく、ベルトのない長ズボンとジャケット風の上着が一体化している、または一体化しているように見える、お子様紳士服ですので。お間違いなく。

 これに白いヒラヒラ襟のブラウス着ているのが、良いとこの坊ちゃんの証。

 まぁ、白いものを白い儘、着ている時点で今でも裕福さだとは思いますが。


 え? フォントルロイ・スーツ?

 それは『小公子』が出てからなので、ちょっと違います。奇抜なダンディを売りにしたオスカー・ワイルドの服装を参考にして、どちらかと言うと、日本におけるメイドさん服の匂いのするフォントルロイ・スーツ。

 これより前、世紀を跨ぐ五十年強、もう少し礼儀正しい感じの、でも、流行に左右されてタイミングによる微妙な違いのある子供服があり、スケルトンスーツと呼ばれます。


 昔の男の子は赤ちゃん期、ドレスを着ていますよね。それを半ズボンとタイツの紳士風に変えるブリーチング。

 これが何歳に行われるか、かなり母親の考えに左右されたそうです。

 尚、半ズボンは少年だからではありません。紳士たるもの、労働着である長ズボンなど履けないからでした。本当、昔の人の服装は男女共に制約が多くて大変です。最近、英国の戴冠式でこの半ズボンは話題になりましたから、ご存じの方も多いことでしょう。


 絵画の情報でスケルトンスーツのない時代には八歳前後になると、ほぼ半ズボンを履いている印象があるのですが、スケルトンスーツを着ている子の画像には明らかに幼児もいます。

 でも、一応、ブリーチングしてスケルトンスーツを着る風習だったと昔、読みました。英語の本でしたので、読解を間違っていない自信はないのですが。

 すると、その幼稚園に通い始めた感じのお子様は儀式としてブリーチングしているのかが謎です。ブリーチングすると髪を男性風にするので、そこで見分けようとしたのですが、私には判りませんでした。


 で、うちのキャラは幾つでスケルトンスーツに移行したことにしたら良いのだろう。

 これがかなり悩みどころ。特に王子。

 王族はこういうのをどんな時、早めたり遅くしたりするでしょう。


 多分、遊び相手など、当てがわれたのはブリーチングしてからではないかと私は思います。ドレス姿の王子様とドレス姿の貴族の若様が遊んでいたら、それはそれで面白いのですが、ちょっとキャラ設定がおかしくなりそうで、少なくとも避けたい。

 そうすると王子が遅くまでドレス着ていた設定では、友達関係のあり方がちょっと変わって来ますよね。

 でも、ドレスを着る表向きの理由は「男児は魔物に狙われ易い」、つまり育ち難いから女児に見せかけることになっています。

 実際は実用面での需要があるとはいえ、この建前がありますと、うちの王子様を早くにブリーチングさせるのはどうかと思いました。兎に角、無事にお育ち遊ばすのを願うしかない王子様ですからね。

 それで七歳までにはスケルトンスーツをお召しになっていたことにしました。

 

 十九世紀というと「お子様」を何歳に設定するか、という重大な課題があります。

 もっと前の時代はそもそも子供という概念がないか、著しく薄いので、雑に設定し易いのですが、十九世紀は子供の概念が膨らんで行く過程なので、それをピンポイントで捉えるのも難しいです。

 十九世紀前半は熟練工の子が職につくのが十四、五歳で、それまでに教育と一定の修練を終えている必要があったと記憶しています。もっと貧しい家ですと十歳頃から大人同然に働きますが、一応、目安としては十二、三歳辺りから大人の準備をするイメージを私は多くの書物から感じました。

 この年齢を基準にブリーチング、社交界デビュー、結婚適齢その他、考えないといけない……だって、これで成人は二十一歳なんですもの! 誰かが一定の規則を作ってくださると楽ですよね。マニュアル万歳。テンプレート最高。


 このスケルトンスーツをお召しになった世代は、労働着である長ズボンに抵抗を抱かなかった為、長じても半ズボン(ブリーチズ)とタイツではなく、長ズボンをお召しになり、今の紳士フォーマルがあります。

 もし、これがなかったら職場行くと男性が半ズボンにタイツだったかもしれないのですよね。それが常識ならば、人は何の違和感もなく、それを「きちんとした」格好と思うのでしょう……が、この世界線から想像するとシュールです。

 私はスケルトンスーツはもっと日本で崇められて良い存在だと考える次第でありました!

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