第3話「完全になりたい!」

 ミミカと恋人同士になった翌日の話であった。


「28円しか無い」


「良い数字じゃん」


 ミミカの財布の中には小銭として28円が入っていた。


「ふぇぇ、これじゃ何も買えないよー」


「え? じゃあその28円を私にちょうだい」


「? 何に使うの?」


 ミミカから28円を受け取ると、私は数学問題を出した。


「はい問題です。28とは何を意味する数字でしょうか?」


「えー!? 抜き打ち問題!?」


「ふふ、私と恋人になったなら、これぐらい覚悟しててよ? ……とは言え、これじゃ意地悪すぎるか、じゃあご褒美をあげよう」


「ご褒美?」


「私と添い寝する事を許す」


「負けられない戦いの火蓋が切られた!」


 おおう、私の事になると熱くなるな。


 そんなに添い寝が嬉しいのか?


「えーと、うーんと……!」


 私はわざとらしく28円の中にある5円玉と1円玉を両手に持ってミミカに見せつけた。


「分かった! 完全数だ!」


「はい、正解」


 完全数とは、自身を除く約数の合計が同じになる数字のことである。


 例えば、6なら、約数は1、2、3、6で、6を除いた1、2、3を足したら6になる。


 そして、28と言う数字も1、2、4、7、14、28で、28以外の約数を全て足したら28になる。


 これが完全数と言う数字である。


「よっしゃぁぁぁぁ!! 初めてリナツちゃんに勝ったぁ! 戦利品としてリナツちゃんをお持ち帰りぃぃぃ!! テイクアウト!」


「うわぁ!? 力強い!?」


 ミミカにお姫様抱っこされて教室を飛び出した。


 うわぁぁぁぁ(マリ◯風)メッチャ恥ずかしい!!



「うへへ、リナツちゃんの肌柔らかーい」


 思いっきりセクハラされてるけど、何故か怒る気分になれない。


 私達は、校庭の木下で添い寝をしていた。


 こちらを見てくる女子生徒達からは「あらあらまあまあ」みたいな視線を向けられている。


「ねぇ、リナツちゃん、ワタシはリナツちゃんみたいな完全な数学者になれるかな?」


「なれるんじゃない? 今は無理でも未来がどうなってるかなんて、誰にも分からないし。大事なのは日々の継続だからね」


 そう言って、私を抱き枕にしているミミカの頭をナデナデした。


「えへへ、幸せ〜」


 そうやって過ごしてると、あっという間に昼休みが終わってしまった。

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