第3話「完全になりたい!」
ミミカと恋人同士になった翌日の話であった。
「28円しか無い」
「良い数字じゃん」
ミミカの財布の中には小銭として28円が入っていた。
「ふぇぇ、これじゃ何も買えないよー」
「え? じゃあその28円を私にちょうだい」
「? 何に使うの?」
ミミカから28円を受け取ると、私は数学問題を出した。
「はい問題です。28とは何を意味する数字でしょうか?」
「えー!? 抜き打ち問題!?」
「ふふ、私と恋人になったなら、これぐらい覚悟しててよ? ……とは言え、これじゃ意地悪すぎるか、じゃあご褒美をあげよう」
「ご褒美?」
「私と添い寝する事を許す」
「負けられない戦いの火蓋が切られた!」
おおう、私の事になると熱くなるな。
そんなに添い寝が嬉しいのか?
「えーと、うーんと……!」
私はわざとらしく28円の中にある5円玉と1円玉を両手に持ってミミカに見せつけた。
「分かった! 完全数だ!」
「はい、正解」
完全数とは、自身を除く約数の合計が同じになる数字のことである。
例えば、6なら、約数は1、2、3、6で、6を除いた1、2、3を足したら6になる。
そして、28と言う数字も1、2、4、7、14、28で、28以外の約数を全て足したら28になる。
これが完全数と言う数字である。
「よっしゃぁぁぁぁ!! 初めてリナツちゃんに勝ったぁ! 戦利品としてリナツちゃんをお持ち帰りぃぃぃ!! テイクアウト!」
「うわぁ!? 力強い!?」
ミミカにお姫様抱っこされて教室を飛び出した。
うわぁぁぁぁ(マリ◯風)メッチャ恥ずかしい!!
◇
「うへへ、リナツちゃんの肌柔らかーい」
思いっきりセクハラされてるけど、何故か怒る気分になれない。
私達は、校庭の木下で添い寝をしていた。
こちらを見てくる女子生徒達からは「あらあらまあまあ」みたいな視線を向けられている。
「ねぇ、リナツちゃん、ワタシはリナツちゃんみたいな完全な数学者になれるかな?」
「なれるんじゃない? 今は無理でも未来がどうなってるかなんて、誰にも分からないし。大事なのは日々の継続だからね」
そう言って、私を抱き枕にしているミミカの頭をナデナデした。
「えへへ、幸せ〜」
そうやって過ごしてると、あっという間に昼休みが終わってしまった。
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