第13話 卒業とお礼
それから時間はあっという間に過ぎていく。凛花が3年生に進級したかと思えば、そこからもあっという間に時間が過ぎて卒業式を終えた。卒業式が終わったあと、凛花は静子に感謝の気持ちを伝えに放課後カウンセリングに向かった。
少し緊張しながらも、これまで伝えたかった気持ちを、ようやく言葉にするためにドアの前に立つ。カウンセリング室のドアを静かに開けると、静子はいつも通り、落ち着いた表情で迎えてくれた。
「先生!こんにちは!」
「凛花さん、卒業おめでとうございます。」
「ありがとう!」
凛花は少し照れくさそうに笑う。
「あ、今日はちょっと伝えたいことがあって。」
静子はうなずき、優しく席に誘った。
「どうぞ、座ってください。」
凛花が静かに席に着き、少し考えるように言葉を選ぶ。
「卒業して、もう学校には来ないけど…色々あったけど、ほんとに、先生に感謝してるんだ。」
静子は穏やかな表情で凛花を見守る。
「今の私があるのは、先生のおかげだよ。ずっと本当の自分を出せなくてさ、でも先生と話して、映像作品を見て、少しずつだけど変わったんだ。」
「本当の自分、ですか。」
静子は静かに言葉を重ねた。
「うん。なんかさ、今までは周りに合わせて、無理に明るくしようとしてたけど、最近はそれでもいいのかなって思えてきた。」
「自分を無理に変えなくても、大丈夫だと思えるようになったんですね。」
静子は微笑んだ。凛花は少し照れながらも、続けた。
「うん、そう。でもね、まだまだ悩んでることもあるんだ。今の私でいいのか、ちゃんと自分らしく生きていけるのかって。」
静子は黙って凛花を見つめた。その眼差しには、深い理解と共感が込められていた。
「でも、だんだんと、先生の言葉や作品が私に教えてくれたんだ。自分らしくって、もしかしたらもっと自由に、こうやって無理に誰かにならなくてもいいんだって。」
「その通りです。」
静子は頷きながら言った。
「本当の自分に戻るために、無理をしてまで変わらなくても良いのです。それは時に、誰かに合わせることよりも難しいかもしれませんが、それでも自分を大切にすることが一番大事です。」
「うん、ありがとう。」
静子は初めて出会ったときの凛花を思い出し、今の彼女があのときよりも確実に成長していることを実感していた。そして、じっと凛花の目を見つめてから、その気持ちを伝えるかのように優しく微笑んだ。
「ほんとにありがとう、先生。」
凛花は感謝の気持ちを込めて言葉を続けた。
「あ、あとね!映像作品もめっちゃ面白かった!今も色々見返してるんだよ。私はこれからも、BABOの、静子先生のファンだよ!」
静子は心からの笑みを浮かべた。
「ふふ、ありがとうございます。私も凛花さんが、心から自分を大切にして生きていく姿を応援しています。」
その言葉に凛花は少し胸が温かくなるのを感じた。そして、ふと思い出す。
自分らしく生きる
その言葉を胸に、これからどう進んでいけば良いのか、凛花は少しずつ見えてきた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます