第6話 若き宮廷魔術師との出会い

 数日後、父が本当に宮廷魔術師を呼んでくれた。


 しかもなんと“王宮No.3”と言われるほどの若き天才らしい。

 

 父いわく、彼女は難しい仕事を任されていて普段は忙しいが、たまたま短期間だけ休暇に近い期間ができたそうだ。


 それを父が自慢のコネと財力で無理矢理呼び寄せたらしい。

 

 その魔術師は青髪のロングヘアに、透き通るような青い瞳を持ち、涼やかな美貌をたたえた少女――というより、二十歳前後くらいだろうか。


 もっと年配の渋い魔術師をイメージしていたので、拍子抜けしたというか、俺は驚いた。

 

「初めまして。私、エリシア・ウェントワースと申します。王宮に仕えておりますが、ご縁あってこのグランフィード家へ来させて頂きました」

 

 エリシアは俺に丁寧に一礼をする。


 その姿は淑やかだが、その目には確固たる自信が宿っているのがわかる。

 

「俺は……レオン。短い間だが、よろしく頼む」

 

 そう挨拶を交わすと、エリシアはまっすぐ俺を見つめた。

 

「失礼ですが、レオン様、魔法を本気で学ばれるおつもりですか?」

 

「もちろん。学園に入るまでの間に、できる限りの力を身に付けたいんだ。正直、今は素人同然だけど……」

 

 俺がそう宣言すると、彼女は微かに目を細める。


 まるで値踏みするような視線だ。

 

「スキルをお伺いしても?」

 

「『絶対快眠(スリープキング)』だ。いつでもどこでも安眠できるらしい……。回復効果も多少あるとか」

 

「そうですか……」

 

 エリシアの瞳には一瞬、落胆とも取れる色が浮かぶ。


 周囲の評判通り、戦闘や魔法にはほぼ寄与しない地味なスキル……という認識なのだろう。

 

「ですが、私が見る限り、魔力自体はゼロではない。問題は使い方ですね。短期間でどこまで伸ばせるかは、レオン様の努力次第です」

 

 きっぱりと言われる。


 だが、彼女が俺を完全に見下しているわけではないことも感じ取れた。


 おそらく“真面目に努力する意志があるなら、最大限のことは教える”というスタンスなのだろう。

 

 俺も負けじと視線を返して、口を開く。

 

「教えてくれ。俺はこのスキルをどう活かせばいいか、一緒に探ってほしい。魔法の基礎から叩き込んでくれれば、俺は食らいついていく」

 

「承知いたしました。私は厳しいですよ?」

 

「望むところだ」


 こうして、俺は青髪の美貌の宮廷魔術師、エリシア・ウェントワースを師として迎えることになった。


―――



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