第387話 屍食鬼だけは絶対に許さない
ゆっくり食事を楽しんだ。
エッジや末松さんがいる部屋から笑い声が聞こえてくる。
酒も出したが……エッジたちがいるから問題ないだろう。
どうせ半日はここで足止めだ。
検疫が強化されのだ。
というか鬼神国側がその辺ガバガバだったので、銀河帝国側から検疫の強化を申し出たのだ。
屍食鬼問題だけじゃない。
鬼神国に存在しない農業害虫やら、なにかの拍子に入り込んでくる外来生物。
それだけならまだいいのだが、持ち込んだ食物に付着した微生物で全滅ってことも考えられる。
帝国は何度も失敗してるので殺菌技術は進んでいる。
執拗とも言える。
レオも言ってたが銀河帝国の技術は生物医学系に特化してる。
正確に言うと、日系人種がやたらこだわる食に関する技術が異常なほど進んでいる。
自主的に持ち込まないようにしてるんだけど、二重チェックはとても大事なのである。
というわけで半日は暇。
とりあえず殺菌殺虫をする装置でもう一度くぐって観光に出る。
後ろに護衛はいるけどね。
ミネルバと宇宙港周辺のリゾート施設で遊ぶ。
ただ鬼神国にこのような文化はない。
闘技場くらいしか娯楽がなかった。
つまりほとんどが銀河帝国の商社が建てた施設である。
それでも鬼神国のテナントも複数入ってる。
その辺の屋台や街の小さな食堂とかを地道に調査してテナントを出店してもらった。
こう、なんというか、外国と接するようになって銀河帝国の食べ物への異常なほどの執着心に気づいた。
他にも滅びかかってた伝統服の工房を出店したり、鬼神国側が熱心じゃなかった文化保護をなぜか帝国がやってる。
さらにはクレアの実家のアンテナショップの社員が地方をめぐって集めたセレクトショップなんかもある。
鬼神国には「え? うちってこんな文化力あったの?」と驚いている。
これらを輸入した店舗は帝国内でも人気であらたな需要を呼びこんでいる。
なんで知ってるかって?
最初期の出資者かつ役員だからだ。
どうせ使わねえと貯金をクレアちゃんに預けたら一財産になっていた。
怖くなったのでいじらないようにして、配当金だけありがたく頂戴してる。
その分配金もヴェロニカちゃんから紹介されたファンドに入れてる。
最前線にいるとお金なんてほとんど使わないのだ。
軍の給料すら余る状態である。
だからデートに使う。
「あ、これカワイイ! 買おうっと」
ミネルバは鬼神国の服に興味があるようだ。
「じゃ、俺が」
甲斐性というのをみせてくれる!
「ふふん、私の財布から出す! エディ、私のアルバイト先知ってる?」
「軍じゃなくて?」
退役者向けに軍は常時アルバイトを募集している。
事務から秘書から人手が足りない。
そもそもレオにフルタイムの秘書官がいない時点で人手不足のヤバさがわかるだろう。
しかたなくクレアが全部やってる状態だ。
当然、俺にもいない。
だから事務も秘書官もできるミネルバは軍でアルバイトしてるだろうと勝手に考えてた。
「レオくんの会社」
俺が役員やってる会社だ。
「その節は大変お世話になり……」
「やめて~。でもとっても給料いいんだよ。だからこういうのも買えちゃう。ふふーん、これができる大学生なのだよ」
婚約者殿はしっかりしてるようだ。
か、甲斐性を見せつけるチャンスが来ない……。
寿司くらいか。
あれも領地の経費で落とせるしな。
大人ぶるの難しくないか?
額にしわを寄せて考えたが答えなど出るはずもない。
「どうしたの?」
会計を終えたミネルバが俺の顔をのぞき込む。
「いやなんでも、あ、あそこのカフェ。ラターニアのスイーツがあるらしいよ。行ってみない?」
というわけでカフェで休憩。というか特に目的はない。暇つぶしである。
今までが忙しすぎた。
こういうのも悪くない……。
カラフルなシナモン香るお餅に甘いソースがかけられたものやフルーツ盛り合わせを注文。護衛の分もね。
食堂の【文化の相互理解週間】で出た。だいたいの味は知ってる。
これとお餅のドーナツみたいなのは俺たちの味覚でも充分美味しい。
鬼神国の珍しいフルーツと一緒に盛られたドーナツもやって来た。
ドリンクはココナッツミルク(のようなもの)にカットフルーツが入ってるものだ。
「へぇー、珍しい! 写真撮って……」
「どこかに送るの?」
「うん、アルバイト先。外宇宙に行くって言ったら、写真とレポート送ってって。出張扱いにしてくれるんだって!」
なんだか大事になりそうな予感がする。
ミネルバはそんな俺の予感など知るはずもない。
オレンジみたいな実を口にする。
「あ、これ美味しい! エディ、これ会社で扱わないの?」
「許可を申請中かな? 向こうの農業害虫とかまだわからないから」
「へえ……あ、このメロンみたいなのも美味しい。」
「それ瓜じゃなくてナスの仲間らしいよ。植え付けから3ヶ月くらいで収穫できるみたい」
ああ、なんて幸せなのだろう。
こういう日常が一番の宝なのだ。
そう……宝なのだ。
ぶち壊そうとするやつは生かしておかない。
そう気持ちをあらためた瞬間、ショッピングセンター内に警報が鳴った。
【本惑星へ敵国の船が接近してます。お客様は係員の誘導に従って避難してください】
……うん、レオの副官になったときからわかってた。
俺はこうなる運命だ。
俺の顔を見てミネルバが笑う。
「エディと出会ったときと同じだね」
「仕事してくる」
「うん、怪我しないでね」
護衛を半分ミネルバにつけて俺は宇宙港に向かう。
外に出ると軍の車両がすでに来ていた。
「大佐、鬼神国との条約に基づき指揮をお願いしたく」
「ああ、ちょうどよかったよ。今、俺は最高にイライラしてるからな。指揮は得意な人にお願いするとして……俺は出撃する」
屍食鬼絶対に許さん。
「雪原の悪魔の戦いを間近で見られるんですね!」
「すげー! あのレオ・カミシロの右腕だぞ!」
「いやっほー! もう勝ったも同然だぜ!!!」
護衛のうちの騎士団が盛り上がっている。
残念だが俺の戦いはレオと違って地味だ。
見ても面白くない。
宇宙港に到着するとうちの騎士団がすでに戦闘服に着替えて待機していた。
「アルコールは?」
そう聞くと全員が大きな声で答えた。
「ナノマシンで除去済みであります!!!」
「よろしい。諸君、敵は久しぶりの休みに遠距離恋愛中の婚約者とのデートをぶち壊した悪魔だ」
はっはっはっは。
これほどまでにイラつかせてもらえるとはね……。
「わかるな? 全力で殲滅せよ」
「はっ!!!」
人型戦闘機に乗り込む。
よかった。
専用機もエッジたちの船に積み込んでた。
「エッジ、戦闘実習だ! 船長として随行せよ!」
「は!」
屍食鬼だけは絶対に許さない。
俺はかつてないほど頭にきていた。
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