「甘すぎますぞ! 悪羅ノブナガ」(比率:男2・女1・不問1)約25分


・登場人物


悪羅おらノブナガ:♂ 敵味方関係なく恐れられている大名。モチにはとんでもなく甘い。


モチ:♀ 何をしてもダメダメな、ちっさい忍び。


ジィ:♂ ノブナガとモチにいつも振り回されている。一応剣の達人。一応。


忍び:♂♀ ノブナガを暗殺しにきた忍び。




役表

ノブナガ、手裏剣:♂

モチ:♀

ジィ、家来A:♂

忍び、家来B:♂♀





※ 途中の『あまノブ!』は、場面転換の合図だと思ってください。


・最後の「家来たち」は、演者皆さんでやってください。




ーーーーー




ジィ(M)世は、せんごっく時代! 戦乱が頻発ひんぱつに起こり、あっちやらこっちやらでいくさがわっしょいわっしょい! 力こそ正義のこの世では、全国各地に大名だいみょうと呼ばれる人がおり、その土地を納めていた。


ジィ(M)今宵語るは、その大名の一人……大うつけと呼ばれる大名、悪羅おらノブナガ様のお話である。




 ノブナガの部屋。ノブナガは一人で大量の銭を触り、豪快な笑い声をあげている。



ノブナガ「がっはっはっは! 今日もたんまり銭を稼いだわ! これでまた豪遊ができるわ! がーっはっはっは!」


モチ「ついに見つけたぞ、悪羅おらノブナガ……!」


ノブナガ「むっ⁉︎ なにやつ⁉︎」


モチ「私は、モチ。貴様を殺すためにやってきた」


ノブナガ「なにぃ⁉︎ この阿呆が! 無礼者めが! 今すぐに八つ裂きに……な、なんだ、これは……⁉︎ か、身体が、動かない……⁉︎ ま、まさか……!」


モチ「ふふふ……! あなたが先ほどまで触っていた銭には、大量の毒が仕込んであったの」


ノブナガ「な、なんということだ……! このままでは、この俺は……!」


モチ「お命、ちょうだいいたす!」


ノブナガ「ま、待て……! ま……ぐわぁぁぁぁぁぁ⁉︎」


ジィ「はっ⁉︎ 殿の叫び声が! 殿ぉぉぉぉ! ご無事ですか、殿ぉぉぉぉ!」



 ジィが勢いよく戸を開ける。

 ノブナガは紙手裏剣を受け、大袈裟に倒れる。



ノブナガ「や、やられたぁぁぁぁ! ガクリッ」


モチ「まだまだ! くらえ、紙手裏剣! シュシュシュシュ!」


ノブナガ「ぐはっ⁉︎ ぐぼっ⁉︎ ぐぎぃ⁉︎ む、無念……! ガクリッ」


モチ「はーはっはっはっ! 大魔王と呼ばれる悪羅ノブナガは、この私モチが成敗してやったわ! はーはっはっはっは!」


ジィ「紛らわしいことはやめろって、何度も何度も言ってんでしょうがぁぁぁぁ!」





ノブナガ『甘すぎますぞ! 悪羅ノブナガ』





ジィ「いいですか、殿……何度も何度もおっしゃっておりますが、あのような遊びはおやめください」


ノブナガ「やめるわけにはいかぬ」


ジィ「どうしてですか?」


ノブナガ「それはもちろん、モチがやりたいと申すからだ」


ジィ「おい、そこの忍び。今後二度とあのような遊びをするな。わかったな?」


モチ「は、はい……ごめんなさい……」


ノブナガ「別にあれくらいいいだろ。お前は本当に頭の硬いやつだな」


ジィ「毎度毎度大慌てで駆けつけるこっちの身にもなってくださいよ! それに、いいんですか⁉︎ このようなことを続けていると、本当に殿が襲われて悲鳴をあげたとしても『あぁね、どうせあれでしょ?』ってなって誰もこなくなりますよ! いいんですか⁉︎」


モチ「私は、主殿あるじどのの悲鳴が聞こえたら、いついかなる時であってもすぐに駆けつけますよ! ですから、ご安心ください主殿!」


ノブナガ「モチ……! お前はなんて心強いやつだ! ほれ、こちらに来い! 抱きしめてやる!」


モチ「主殿~!」


ノブナガ「可愛いやつめ! このこの~!」


ジィ「おやめくださいおやめください! そのような行為もおやめください!」


ノブナガ「なぜだ?」


モチ「もしかして、ジィ様も主殿にギュッてされたいでござるか?」


ジィ「違うわ、阿呆! 殿、この際ハッキリと言わせてもらいますが、殿は甘すぎますぞ!」


ノブナガ「この俺が甘いだと? どこをどう見たらそうなるというんだ。モチ、飴食べるか?」


モチ「食べまする!」


ジィ「写真、パシャ! 現場とらえました! これですよ、これ! みてください!」


ノブナガ「いつも通りの日常ではないか。なぁ、モチ?」


モチ「ですです!」


ジィ「それがダメだって言ってんだよ! どんだけこの忍び甘やかす気だよ! アメアメばっかでムチがどこにも見当たらない! こやつをダメ忍びに育て上げる気ですか⁉︎」


モチ「うぅ……! そうです、そうなんです……! モチは、ダメダメな忍びです……!」


ノブナガ「そ、そんなことはないぞ! モチはダメなんかじゃない! とても優秀な忍びだ! だから、そう落ち込むな!」


モチ「あ、主殿……!」


ノブナガ「モチ、顔を上げろ。もしお前がダメダメな忍びだとしても、俺はお前を見捨てたりはせぬ。お前が立派な忍びになるまで、俺が共に歩んでみせよう!」


モチ「主殿ぉぉぉ!」


ジィ「もうずっとやってろ! ジィ、知ーらない! ふんっだ!」


ノブナガ「まぁ待て、ジィ」


ジィ「なんですか! 今更謝ったって、もう遅いんだからね! いつもいつもモチモチモチモチ……! 私たちのことなんて、何も考えてくれない! もう知らない! ふんっだ!」


ノブナガ「なぜ俺がお前に謝らなければいけなんだ? モチ落ち込ませたから、お前切腹な?」


ジィ「厳し! こいつ、ジィに厳しすぎ!」


ノブナガ「あと、俺が襲われた時に誰も来なかったら、お前ら全員切腹な?」


ジィ「マジで少しでいいから、そやつへの優しさこっちに分けてくれません⁉︎」


ノブナガ「用が済んだのなら、さっさと出ていけ。シッシ!」


ジィ「きぃぃぃ~! そのうち、ジィのありがたみを感じる時が絶対に来るからね! 絶対だからね! 後でなんか言ってきても、知らないからね! 殿のバカ! ぴぇぇん!」


ノブナガ「モチよ。なぜジィはあれほど怒っておるのだろうな?」


モチ「わかりません! ……あっ、わかりました! きっと、あれです! かるしうむというやつが足りていないんだと思います!」


ノブナガ「きっとそれだ! さすがモチ! 褒美に頭を撫でてやろう!」


モチ「ありがたき幸せ!」


ノブナガ「よ~しよしよしよし!」


モチ「主殿~♡」


ノブナガ「モチ~♡」


モチ「あぁ~るぅ~じぃ~どぉ~のぉ~♡」


ノブナガ「モォ~チィィ~♡」


忍び「ふっふっふ……! ノブナガという男が、こんな軟弱者だったとはな」


ノブナガ「むっ⁉︎ なにやつ⁉︎」


モチ「なにやつ⁉︎」


忍び「あまりの軟弱っぷりに、つい声が漏れちまったぜ。私は──」


モチ「あー! これは、あれですよ主殿! あれです、忍びです! あの人、絶対に忍びです!」


ノブナガ「なぬっ! 本当か⁉︎ 俺は全然気がつかなった! さすがモチだな!」


モチ「ふふんっ! まぁ、モチはできる忍びなので、これくらいは当然でございまする! 次の問題も、かかってこいです!」


ノブナガ「次は絶対に負けんぞ、モチ! さぁ、次だ、次!」


忍び「……」


ノブナガ「……」


モチ「……」


忍び「……」


ノブナガ「……おい、問題まだか?」


忍び「え? 問題? もしかしてあんたたち、私のこと急にクイズ出しにきた人だと思ってる?」


モチ「え? 違うの?」


ノブナガ「違うのか?」


忍び「違うに決まってんだろ! 大外れだよ、阿呆どもが! この状況、見ればわかるだろうが!」


モチ「こ、この状況を見れば……う、うーん……!」


ノブナガ「ピンポーンッ! ノブナガを暗殺しにきた!」


忍び「正解っ! いや、正解だけど! クイズっぽくするな!」


ノブナガ「よっしゃ! 一ポイント!」


モチ「ぐぬぬぬ……! 次は負けないですよ!」


忍び「もっと焦れ、阿呆ども! 暗殺されそうなんだぞ! お前たちはそれでいいのか⁉︎」


モチ「はっ⁉︎ これは、少し前にやりました! 防災訓練の時にやりました! 主殿が暗殺されそうになったら、大声で助けを求める!」


ノブナガ「正解っ! 一ノブナガポイント!」


モチ「やったぁ!」


忍び「防災訓練でそんなこともやってんの、あんたたち! というか、クイズっぽくするなって言ってんでしょうが! 私は暗殺しにきたって──」


モチ「曲者くせものじゃ曲者じゃ! 曲者が出たぞー!」


忍び「話を聞けぇぇぇ!」


忍び「ちくしょう! 助けを呼ばれたら、こちらが不利! ここはひとまず──」


ノブナガ「逃すかぁぁぁぁ!」



 ノブナガは忍びに飛びかかり、忍びを羽交い締めして動きを封じる。



忍び「えぇぇぇ⁉︎ なんであんたが止めるのぉぉぉ⁉︎」


ノブナガ「貴様はモチの教育の生贄いけにえとなるのだ……! 大人しくしていろ……!」


忍び「教育の生贄とはなんですか⁉︎ この可愛らしい子に、なにを教育させる気ですか⁉︎ 血を見せるようなことは、やめておいた方がいいと思います! トラウマになっちゃいますよ!」


モチ「ふっふっふ! 拙者、残忍な忍びゆえ、血など見飽きているでござるよ……!」


忍び「とか言いながら思っクソ目ぇ隠してるじゃん! 手で覆ってるじゃん! 可愛いな、あんた!」


ノブナガ「そう。モチは可愛い。貴様にも一ノブナガポイントを授けようではないか」


忍び「いらんわ、そんなもん!」


モチ「では、私がもらいます!」


忍び「それはなんか嫌だ! だから、ノブナガポイントもらいます!」


モチ「曲者だー! 曲者だー!」


忍び「ちくしょぉぉ! 離せぇぇぇ! 私はこんなところで死にたくないぃぃ! 助けてぇぇ!」


モチ「曲者だー! 曲者だー!」


忍び「うわぁぁぁん! 嫌だぁぁぁ! 誰かー! 誰でもいいから助けてくれぇぇぇ! うわぁぁぁん! なんで、なんでこんなこと……に……」


忍び「……」


モチ「……」


ノブナガ「……」


モチ・ノブナガ「なぜ、誰も来ぬ……⁉︎」


忍び「こっちが聞きたいんだけどぉ!」


モチ「ど、どどどどどうしましょう主殿! 助けが来る気配が全く全然ありません! どうしましょう⁉︎」


ノブナガ「あのクソ野郎ども! モチの声を無視しおってからに! あとで全員切腹だ!」


忍び「なんかよくわかんないけど、助かった!」


モチ「主殿! 今から私が手裏剣を投げまするゆえ、お逃げくださいです!」


忍び「全然助かってなかった!」


モチ「覚悟しろ、暗殺者め! この手裏剣で……あ、あぁぁぁぁ⁉︎」


ノブナガ「どうした、モチィ!」


モチ「大変です、主殿! 先ほどまでノブナガ暗殺ごっこをしていたせいで、ただいま紙手裏剣しか持っていません!」


ノブナガ「な、なにぃぃぃ⁉︎」


忍び「驚くポイント、そこじゃないんだけど! ノブナガ暗殺ごっこって、なに⁉︎ あんたら普段からなにしてんの⁉︎」


モチ「すぐに手裏剣を取ってきます! ですので、少しだけお待ちを! 暗殺者さん!」


忍び「待つわけないでしょうに! 阿呆か、お前──」


ノブナガ「待つよな……? 待つと言わなければ、今ここでお前の首をへし折る……!」


忍び「待ちます待ちます待ちます。どれだけ待たされようと忠犬ハチ公のようにお待ちいたします」


モチ「ありがとうございます! では、いってまいります! しゅたたたたた!」


忍び「……な、なんなんだ、あいつは? 本当に同じ忍びなのか……?」


ノブナガ「はっはっはっ! モチのやつめ、紙手裏剣だけを持つ忍びがどこにおる! そういうところも、可愛いなぁ~!」


忍び「……おい、ノブナガ」


ノブナガ「ん? なんだ?」


忍び「どうしてお前が、あのような出来損ないを下に置いている? あんなもの、いても邪魔なだけだろ」


ノブナガ「……出来損ないだからだ」


忍び「なに?」


ノブナガ「大バカ者が大バカ者を拾っただけだ。それ以外に理由はねぇ。あっ、そうだ。おい、お前。モチの教育係にならねぇか?」


忍び「……はい?」


ノブナガ「見ての通り、モチは忍術の一つも使えねぇ。それに比べて、お前はこの部屋に音もなく侵入してきた。それなりの忍びなんだろ? 違うか?」


忍び「……本気で言ってるのか?」


ノブナガ「なんだ? 死にてぇのか? それなら今すぐにやってやるが……どうする? お前にとっちゃ、悪い話じゃねぇだろ?」


忍び「……ふふふ、ははははは! 悪羅おらノブナガは大うつけ者だと聞いてはいたが、聞いた通り……いや、それ以上の男だな」


忍び「いいのか、ノブナガ……いや、ノブナガ様よ。私の教えは、あの娘にはちと厳しいものだと思うぞ?」


ノブナガ「バカを言え。モチは、このノブナガ様を暗殺できる唯一の忍びだぞ? 貴様のような三流忍びの教えなど、屁でもないわ」


忍び「それもそうだな。あのノブナガをこんなふうに変えちまう忍びだ。とんでもねぇやつに決まってる」


忍び「わかった。あんたの提案、受け入れて──」


ジィ「すいません、殿~。ここにワシのハンカチーフが落ちてません……か……」


忍び「あっ」


ジィ「く、く、曲者じゃぁぁぁぁ!」



忍び(M)先ほどとは比べ物にならないほど、秒で人が集まってきました。とてもとても怖かったです。





ノブナガ『あまノブ!』




 とある日、ノブナガの城。城の庭で、ノブナガは的めがけて弓を引いている。



ノブナガ「……せいやぁ!」


ジィ「これまた的の真ん中に。お見事でございます、殿」


ノブナガ「ふん。弓で真ん中を射抜くなど、俺にとっては『じぃやの首を切る』ようなものだ」


ジィ「それは、あれですか? 『赤子の手をひねる』のようなものですか? ジィ、泣いていいですか?」


ノブナガ「泣いたら殺す」


ジィ「厳しぃ……! 殿、ジィに厳しすぎるぅ……!」



 ノブナガはジィのことを全く気にすることなく、もう一度弓を引く。



ノブナガ「せいやぁ!」


ジィ「またしてもど真ん中。いやはや、お見事です。素晴らしいです、殿。それに比べて……」


忍び「いいですか、モチ殿。的をよく見て投げるのです。わかりましたか?」


モチ「わかりました! いきます! 忍法、手裏剣の術! えいっ!」


手裏剣「しゅりしゅりしゅりしゅり……!」


モチ「あぁぁ⁉︎ どこに行くの、手裏剣さん! 的はそっちじゃないよぉぉ!」


手裏剣「しゅりしゅりしゅりしゅり……しゅりけんっ!」



 手裏剣は、ジィの額に突き刺さる。



ジィ「じぃやんっ⁉︎」


忍び「あぁぁ⁉︎ またしてもジィやさんの額にグサリと!」


モチ「ご、ごめんなさいごめんなさい! 大丈夫ですかぁぁ⁉︎」


ジィ「大丈夫なわけあるかぁぁぁ! 何度も何度もワシの額に突き刺しおってからに! そんなにワシが憎いか⁉︎ そんなにワシを殺したいか⁉︎」


モチ「ごめんなさいごめんなさい! 許してくださいぃぃ!」


ジィ「今日という今日は許さんぞ、この小娘がぁぁぁ!」


ノブナガ「まぁ待て、落ち着け。ジィよ、よく考えろ。的には当たらんが、お前の額には百パーセントの確率で当てている。この命中率は、そう簡単に真似できるものではない。つまり、これは怒ることではない」


ジィ「褒めることでもなぁい! 殿、なんとかしてくだされ! このジィ殺人マシーンを! このままでは、ジィの命がいくつあっても足りませぬ!」


忍び「ご安心を、ジィやさん。モチ殿はこの私が教育しておりますので、近いうちに必ずや──」


ジィ「そんなこと言って何週間経ってると思ってんだ、お前は⁉︎ というか、いつまでここにいるんだ、貴様は! とっとと出ていけぇ!」


忍び「出ていけと言われましても、私はモチ殿の教育係ですから。出ていけませ~ん」


ジィ「なにが、いけませ~ん。だ! この暗殺者が! ワシは貴様が殿の命を狙ったことを、絶対に忘れはせんからな!」


忍び「ね、狙ってません~! 暗殺なんてしようとしてません~! 私は、ノブナガ様とモチ殿にクイズを出しに行っただけですぅ~!」


ジィ「そんなクソみたいな言い訳でジィを騙せると思っているのか⁉︎ 年寄りだからと舐めるではないわ!」


モチ「落ち着いてください、ジィやさん! 先生は、本当に私たちにクイズを出しに来てくれたんです!」


ノブナガ「これは本当のことだ、ジィ! 俺たちはあの時、クイズをしていた!」


ジィ「あっれれぇ~? おっかしいぞぉ~? どうしてそっちに味方がいるのぉ~?」


忍び「はっはっは! 残念だったな、クソジジイ! 言葉には気をつけろ!」


ジィ「味方がいるとわかった途端、なんだこいつ! ぶち殺してやろうか、おぉん⁉︎」


忍び「あぁん……! やんのか、こら……! こちとら現役の忍者やぞ、ボケが……!」


ジィ「年寄りだからって舐めんなよ、クソガキ……! こう見えてこちとら、すぽぽぽりゅう師範しはんやぞ……! お前なんぞ、すぽぽぽんっ! とやってやんぞ……!」


忍び「上等だ、こら……! やれるもんならやってみろや……!」


ジィ「殿! 立ち合いの許可をくだされ!」


ノブナガ「よかろう。やるからには、見てるこっちを楽しませろよ」


ジィ「お言葉ですが、あのような雑魚は一瞬で片が付いてしまいます。が、殿のめいとあれば、やってみせましょう。さぁこい、クソガキ! 私の強さを見せつけてやるわ! そして、私が貴様よりも上だということを、叩き込んでやるわ!」


忍び「モチ殿、あの的をジィやの顔だと思って投げてみて。絶対に当たるから」


モチ「わ、わかりました!」


ジィ「おいぃぃぃ⁉︎ かかってこいよ、クソガキ! なんで精神攻撃してくるんだ! 正々堂々勝負せんかぁぁぁ!」


モチ「忍法、手裏剣の術! えーい!」


手裏剣「しゅりしゅりしゅり、しゅりけんっ!」


モチ「さ、刺さった! 刺さりました! 的に刺さりましたよ、主殿!」


ノブナガ「ど真ん中ではないか! よくやったぞ、モチよ!」


忍び「さすがモチ殿! 素晴らしいです!」


ジィ「なんで当ててんだよ小娘ぇぇぇぇ! そんなにジィのこと嫌いか⁉︎ ワシ、そんな酷いことしたか⁉︎ 頑張って直すから、ワシの嫌いなところ教えてぇぇ!」


ノブナガ「口うるさい。やかましい。何かあればすぐ泣くぞと言ってくる」


忍び「なにかあれば『ワシの若い頃は』と昔話ばかりしてくる。いびきがうるさい。あと、臭い」


ジィ「お前らには聞いとらんわ! 口塞げ!」


ノブナガ「モチよ、次はあの的を先生の顔だと思って投げてみてくれ」


モチ「わ、わかりました!」


忍び「いやぁぁぁ! やめて、モチ殿ぉぉぉ! 私たちは、同じ忍びでござろう! 我々の絆が壊れてしまうようなことは、しないほうがいいと──」


モチ「えーい!」


忍び「あぁぁぁ⁉︎ いやぁぁぁ! モチ殿に嫌われてたら、私生きていけないぃぃぃ!」


モチ「あぁ⁉︎ 手裏剣さんが、とんでもない方向に! どこへ行くのですか、手裏剣さぁぁん!」


忍び「おっしゃぁぁぁ! きたきたきたぁぁぁ!」


ジィ「ちくしょうがぁぁぁ! ジィやの悲しみ二倍しぃぃぃ!」


ノブナガ「敗者、ジィ!」


ジィ「わざわざ敗者を言うなぁ! 勝者をたたえぇ!」


忍び「まぁ、やる前から結果は見えていましたけどね。はっはっはっは!」


ノブナガ「つまらん、つまらんのぉ~! ジィ、お前いつからそんなつまらん男になった? ノブナガ、悲しいのぉ~!」


ジィ「ゆ、許せん……今日という今日は許しはせんぞ……! 小娘も、クソガキも、ノブナガ様も、許しはせん……!」


忍び「おやおや、おじいさまが何かおっしゃっておりますよ、ノブナガ様。負け犬の遠吠えですかねぇ~? はっはっはっは!」


ノブナガ「おい、近くに来るなジィ。手裏剣が飛んでくるだろ」


忍び「ノブナガ様のおっしゃる通り。離れろ、ジジイ。あっちいけ」


ジィ「きぇぇぇぇぇぇ! 許しはせんぞ、貴様らぁぁぁぁぁ!」


ノブナガ「おい、待て待て待て! 来るなといっただろうが!」


忍び「はっはっは! 忍びに足で勝てると、って、クソジジイ足早っ⁉︎ いやぁぁぁ!」


ジィ「小娘ぇぇ! 忍びの修行じゃ! ワシめがけて手裏剣を思い切り投げろぉぉぉ!」


モチ「え? い、いいんですか?」


ジィ「手裏剣だろうがクナイだろうがまきびしだろうが爆弾だろうが、じゃんじゃん投げてこい! 立派な忍びになりたければ、言う通りにせんかぁぁぁ!」


モチ「は、はい! 私、立派な忍びになりたいです!」


忍び「待って待って待って! モチ殿、待ってくだされ!」


ノブナガ「考え直せ、モチィィィ! 今は投げるべきではない! 今投げれば、お前の大好きなノブナガ様まで──」


モチ「それでは、いきますっ! 忍法、モチスペシャル! え~いっ!」


ノブナガ・忍び・ジィ「ぎゃぁぁぁぁ⁉︎」








家来A「……今、爆発音みたいなの聞こえなかったか?」


家来B「ノブナガ様とモチ殿が遊んでいるだけだろ。気にしなくていいって」


家来A「それもそうだな。おっ、休憩時間になったぞ! なにするなにする⁉︎」


家来B「庭でドッチボールしようぜ!」


家来A「やるやる! いくぞー!」


家来B「お~い! ドッチボールやるやつ、この指止ーまれ!」


家来たち「いやっふ~!」「やるぜやるぜ~!」「ドッチボール、最高~!」


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