第5話

「はよー」

 性転換した成海はめちゃめちゃ可愛かった。元々中性的な顔立ちだったが、女体化したことでさらにそれが可愛いの方向へと際立っている。

「あ!梅ちゃんおはよー」

 成海が俺に抱きついてくる。俺は戸惑いながらもそれを受け入れた。

「おい、成海…」

「梅ちゃん、俺さぁ……今女の子じゃん?どう?なんか日に日におっぱい大きくなってきてると思うんだよねー……」

 そう言いながら胸を押しつけてくる。柔らかくて弾力があり、そして温かい。俺はドキドキした。

「そ、そうなのか……?」

「うん♡あ、梅ちゃんちょっと感じちゃってる…?」

 そう言って成海は俺の股間に手を伸ばす。

「ちょっ!そこはやめなさい!」

 慌てて止めると残念そうにしながらも手を引く。そんな仕草も可愛らしいが、同時に少し残念そうでもあったので罪悪感を覚えた。なぜだ。

「あ、あのな……成海……」

 俺は意を決して言うことにした。

「ん?なに?」

「その……成長期の性転換のリスクとしてさ、ホルモンバランスの関係上、女体化後も胸が大きくなったりすることはあってだな…」

 俺がそう言うと成海は目を輝かせた。どうやら興味を持ったようだ。

「マジ!?じゃあ俺もっとおっぱい大きくなるんだ!」

 そう言って自分の胸を揉み始める。その様子はとてもエロかったが、同時に微笑ましくもあった。だがちょっと、思春期の元男子校でするのはちょっと…

「成海」

「ん?なに?」

「ここは学校で教室なんだ。そういうことはやめろ」

 学級委員の誉が険しい顔をしてこちらを睨んでいた。成海は元々中性的な顔だったが、誉は一言で言うと端整な顔立ちだ。そのため怒ると迫力があった。

「んだよ誉、固いこと言うなよな」

 成海は唇を尖らせる。そんな様子を見て、俺は思わず笑ってしまった。

「梅ちゃんも笑ってんじゃねーよ」

「いやだって……」

 俺が言いかけるとすかさず俺の頰を引っ張る成海。その様子を見てまた誉が怖い顔をする。

「梅沢先生も梅沢先生です。いくら個別ケアが必要とはいえ、甘やかすことは全体にとって良いことではありません。ここは学校ですよ?ちゃんと節度を持って行動してください」

「ああ……そうだな、すまない……」

 俺は素直に謝ることにした。成海が女になる前からこの二人のやりとりはもはやお馴染みの光景になっている。

「誉ったらほんと真面目ちゃんなんだから〜」

 そう言って笑う成海に、誉は顔を強張らせる。

「…もしかして、うらやましいの?ほーまーれ♡」

「……は?」

 成海の言葉に誉の顔が赤くなる。俺はそんな様子を微笑ましく思いながらも、そろそろ止めに入った方がいいかと考え始めた時だった。

「…もしかしてさぁ……俺が梅ちゃんに抱かれてるかもって、嫉妬してた?」

 ブフォッ!!!という音がしたかと思うと誉が盛大に吹き出していた。そして咳き込んだ後顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「そ、そんなことあるわけないだろ!!」

 その反応を見て成海はニヤリと笑った。どうやら完全にからかいモードに入っているようだ。

「ぷっ図星かよ。真面目な優等生クンなのにむっつりスケベなんだな?」

「うるさい!黙れ!!」

 誉が怒鳴る。だが成海は怯むことなくさらに続けた。

「あ、それとも……梅ちゃんが俺に取られちゃうのが嫌で怒ってんの?可愛いとこあんね〜♡」

「……ッ!!!」

 誉の顔がさらに真っ赤になる。俺は慌てて止めに入った。

「こら!お前らやめろ!」

 すると二人はピタリと動きを止めて俺を見た後同時に言った。

「だってぇ」

「こいつが……」

 そんな様子に俺はため息をつく。

「成海、あんまりからかうな。誉も、まだ成海は新しい身体に馴染んでないんだから、あまり刺激を与えるな」

「はーい」

「……はい」

 素直に返事をする二人に俺は満足して頷く。そして改めて二人を見た。成海は元々中性的な顔立ちだったが女体化したことでさらにそれが際立っている。胸も大きくなっているしウエストは引き締まっているがお尻は大きくムチッとしていた。元々の身長は178cmくらいだったが、今は160cmくらいになっているためかなり小さく見える。過保護になってしまう俺の気持ちも、分かってほしい。

「梅ちゃん、俺の身体エロい目で見てる」

 成海がからかうように言ってくる。俺は慌てて否定した。

「そんな目で見てない!」

「ふーん?そう?ま、いいけど」

 ひらり、とスカートが揺れる。俺は視線を逸らして頭を抱えた。

「……目のやり場に困る」

「あはは!梅ちゃん可愛い〜」

「…成海、いい加減しろ」

 誉が低い声で言う。成海は「はいはい」と肩をすくめる。

「誉お前、マジでうらやましいんじゃん?お前も女になったら、梅ちゃんとイチャイチャできんだぜ?」

「うるさい!僕は、そんな!」

 そんなやり取りを見ながら俺はため息を吐く。

「授業始めるぞー。成海、お前は後でお仕置き」

「え…♡」

 目を細めて今日一番嬉しそうな顔をされて俺は股間を鎮めるのに苦労しつつ、授業を始めた。だが、この一件がきっかけとなり性転換した成海と誉の距離がさらに縮まる結果になることを、この時の俺はまだ知らなかったのだった。

***

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