第42話 冬の帰省③

「おかえり、礼、頼人。」


と声をかけたのは父だった。


「ただいま、父さん。」


と言葉を返し、父さん以外の親戚を見た。


「礼くんと頼人くんお久しぶり。元気だった?」


と声をかけて来たのは俺の叔父、勝浦かつうら裕樹ゆうきさん。父と5つ離れた弟で、いつも親戚が集まっている時に可愛がってもらった思い出がある。


「お久しぶりです祐樹さん。も元気ですか?」


「あぁ、子供達はめっちゃ元気だよ。今は家にいるけどね」


と俺に言った。


頼人は叔父と話したそうにしてたので譲り、次の人と挨拶をする。


「お久しぶりです、佳奈さん。」


「礼くん久しぶり。また大きくなったね。」


と声をかけてきたのは俺からすると叔母の関係にある勝浦かつうら佳奈かなさん。まあ述べる必要もないが祐樹さんの妻だ。一応叔母の関係だけど、父より俺の方が実は年齢が近い。


お見送りに来てくれたのはこの3人だけだったのでもう話し終え、父が運転してきた車に乗る。後部座席に2人分のキャリーバッグを詰め込み、シートベルトを自身の身につけた。


そして車は動き出し、飛騨古川駅から俺の祖父が住んでいる家へと移動する。


父方の祖父の家は飛騨古川駅から車で10分程度。かつてよく足を運んだ懐かしい道を車で通り過ぎていくと、心が無邪気だった、子供の頃に戻ったかのように感じた。


そして祖父の家に着き、車から降りた。懐かしい風景を目にし、職場の広島も充分綺麗な年だけど、やっぱり故郷もいいなと思った。


どうやら結菜と愛香も来ていたらしく、外に出ていた二人は俺に気がつくと、一気に俺の方に近づいてきて俺の腰に飛び込んできた。


『久しぶりお兄ちゃん!』


「結菜、愛香、久しぶり。勉強は順調か?」


と聞くと、愛香は首を縦に振っていたが結菜はなんとも言えないような表情をしていた。まあ結菜は直前になると急に本気出すタイプだから全然大丈夫だと思うけど。


今回、クリスマスに2日も休みを取った理由。それは勝浦家の年末恒例行事、「餅つき」に参加するためだ。


ただでさえ男手が足りていないので大学生の頼人だけでなく広島で働いてる社会人の俺も呼ばれたのである。まあ今回は参加しようと思ってたから願ったりなんだけどね。


そして、俺を待ち構えていたのはこの二人だけではなかった。


叔父さんと叔母さんには子供が3人いる。この3人は全員僕からするといとこの関係にある。男子1人と女子2人の合計3人だ。ちなみに叔父さん一家は富山県黒部市に住んでいる。


まず俺に気づいたのは長男の勝浦かつうら真人まひと。20歳で、国公立の新潟大学に通っている大学2年生だ。


「礼兄さん久しぶり。」


と声をかけてきた。


「真人久しぶり。新潟での生活には慣れた?」


と聞くと


「黒部とそんな変わらないからすぐ慣れたけど、やっぱ新潟は寒い。広島はあったかいの?」


と聞いてきた。


「まあ広島は暑い時はとことん暑いけど寒い時はマジで寒いから。雪が降らないだけマシかな」


といった。比較的仲は良好だと思う。


そしてもう2人は今室内にいたらしく、俺が来ていることにまだ気づいていなかった。


そして現在、70代後半のおじいちゃんが餅をつこうと杵を持ち上げていたので止めて、早速だが俺がつくことに。


大学では部活みたいなのには入っていなかったが、高校では一応運動部に入っていたので体力は常人以上はあるはず。


杵は本当に重いが、つけないほど重くはないし非力なわけでもないのでテンポよく餅をつくことができた。


それを持っていくと、ようやく2人は俺に気づいた。


ちなみに2人の名前は姉の方が朱音あかね、妹の方はすいという。

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