第10話 兄のキゼンと僕の因幡さん
放課後になって教室を飛び出した僕は、そのまま屍術師の事務所へやってきた。
その建物は喧噪から逃れた隠れ家のようで、裏路地にひっそりと佇んでいた。古びた外観と錆びた格子窓は時間の経過を物語っており、色褪せた看板には「榎柄(えのえ)建築事務所」と記されていた。
威乃座家と榎柄家の付き合いは長く、主従関係のような繋がりがある。そのため榎柄家は威乃座家の縄張り内の暴力沙汰を片付けており、裏社会の治安を担っている。
美珠市を見張るようにウロつく屍術師はだいたい榎柄家で、今は荒芭島連合の残党狩りに勤しんでいるらしい。
「ここなら……たぶん大丈夫」
自信なく呟いてしまうが、訪ねるならまずはここだ。
榎柄家なら僕をいきなり追い返す可能性は低いし、危害を加える可能性はさらに低い。爺様の死体の在処を知る僕には最もデリケートに接するはずだ。
ここに因幡さんを元に戻す手がかりがありますようにと、事務所の前で深呼吸する。緊張で手を震わせながらドアベルを押そうとして。
ガシャン! と、入り口横にあるガラス戸から人が勢いよく飛び出してきた。
「いいっ!?」
ワケがわからず僕は驚く。
飛び出した人はその勢いのまま対面の建物の壁にブチ当たると、地面に落ちて動かなくなった。悲鳴はない。叫ぶ暇もなく気絶したようだ。
「ど、どういうこと――うわっ!?」
何が起こっているか理解する間もなく、同じ場所から二人目が飛び出てきた。さらに三人目、四人目と続き、投げ捨てられた空き缶みたいに地面に転がっていく。
疑う余地はない。何者かが攻撃している。事務所内に榎柄家と敵対する人物がいるのだ。
咄嗟に事務所の入り口から離れるが、もう遅い。
事務所内の人間を始末した敵が、破壊された玄関からのそりと出てきた。
「……何をしに来た?」
「璃英様……」
「に、兄さん!? キゼン!?」
驚く僕の前に現れたのは騨漣兄さんとキゼンだった。ということは、コレをやったのはこの二人ということになる。でも、全く意味がわからない。
「榎柄の人達に何やってんだよ!?」
「榎柄家に騨漣組を攻撃する動きがあった。だから始末した。榎柄家は無垢組に降っていたんだ」
息を吸うのは当たり前とでもいうように、平然と騨漣兄さんは言い放った。
「始末って……まさか!?」
「ああ、そこに転がってるヤツらは俺の眷属にする」
騨漣兄さんが指を鳴らすと、倒れていた榎柄の人達がフラリと立ち上がる。騨漣兄さんの眷属にされたのだ。
「まだそんなことをッ!」
「ふん、吠えるだけなら犬でもできる」
騨漣兄さんは胸ポケットから拳銃を取り出す。それはあまりに自然で、何度も繰り返された行動なのが窺えた。
「何しにここへやって来たのか知らんが丁度いい。お前とは話したかった」
銃口は僕を捉えている。
「俺の部下になれ」
この間、僕を殺そうとした人とは思えないことを言った。
「部下になるというなら威乃座家領土の五分の一をくれてやる。そこなら屍術を禁止するなり好きにしろ。悪い条件じゃないはずだ」
「……意味がわからないな」
「お前の眷属剥奪は唯一無二の力だ。敵に回すとやっかいなことになる。なら、俺の元で監視した方がいい」
「拳銃で脅しながら言うことじゃない」
「わかりやすくていいだろ?」
底冷えのする声で僕に告げた。ここで僕が頷かなければ始末する、ということだろう。
騨漣兄さんはキゼンと他の眷属(榎柄)を僕の前に晒している。父さんと同じく、僕が眷属剥奪を自在に使えないことを知っているようだ。でも、それなら因幡さんの眷属術(瞬間移動)も知っていてもおかしくない。
僕を撃っても因幡さんが庇いに来る。脅す意味がないのはわかるはずだが――まさか呼び出すのが目的なのか?
「璃英様。私からもお願いします。どうか騨漣様の力になっていただけませんか?」
キゼンは胸に手を当て、決意したように言った。
「騨漣様は今の威乃座家を……いえ、屍術師界を変えようとしています。それには璃英様の力が必要なのです。眷属剥奪があれば無垢様の眷属を無力化することができる。撃つ敵を無垢様だけにできれば、騨漣様は威乃座家を掌握できます」
「そんなふざけた願いは聞けないよキゼン」
当然のように言い返す。無垢姉さんがいなければ今の僕はいない。味方でいてくれる無垢姉さんと敵対するなんてあり得なかった。
「聞いてください璃英様。無垢様は危険なのです」
キゼンは僕に強く訴える。
「あの方は威乃座家を自分勝手に扱える玩具だと思っている。それは璃英様も例外ではない。あの悪意を自由にさせてはなりません。屍術師界だけでなく、必ず他の世界にまで害をなします」
「姉さんが悪意? 害をなすだって?」
僕は眉をひそめた。たしかに僕の味方をしてくれている以上、無垢姉さんの立場は良いモノではないかもしれない。屍術師の家系である威乃座家にとって、その行為は悪意と例えられてもおかしくないと思う。
でも、キゼンが言うほどのモノか?
キゼンは無垢姉さんが全てを破壊する悪魔だと忠告している。そんなの妄想が過ぎるとしか思えない。
「あの人は誰であろうと関係なく己の眷属にする人なのです。騨漣様がこうしているのも――」
「ワガママはここまでだキゼン。無垢に腑抜けにされた愚弟を説得するなど無駄だったな」
キゼンを制して、騨漣兄さんは引き金に力を込めた。
「無垢が愚弟をいいように扱う前に俺達で始末する」
ダァン、と裏路地に銃声が鳴り響いた。初めて聞いた銃声は思ったほどじゃなくて、銃口から上る硝煙の方が鼻についた。
無傷とわかっているので、恐怖よりも申し訳なさの方が勝っている。
僕は目の前に現れた人物に開口一番で謝った。
「呼び出しちゃってごめん因幡さん……」
「気にしないで。ピンチに駆けつけるヒーローってかっこいいしさ」
制服姿の因幡さんは愛車(ペリオン)で銃弾を叩き落とすと、駆けつけたヒーローみたいな笑顔を僕に向けた。
騨漣兄さんは現れた因幡さんに構わず撃ち続ける。銃撃と共に因幡さんの豪快なスイングが火花が散らし、それは弾倉が空になるまで繰り返された。
因幡さんは全ての銃弾を防ぎきると、大剣でも突き刺すように愛車を地面に突き立てた。
銃弾を弾き、地面に突き立てたのに愛車は曲がってもいなければ傷一つない。
これは二つ目の眷属術だ。因幡さんが手に持つモノは武器(頑丈)に変質するようだった。
「私だけでは飽き足らず、威乃座君まで殺すつもりですか先輩?」
「平然と自転車を振り回して銃弾を防ぐか。愚弟の眷属としては破格の強さだな」
「屍術士の眷属ですから当然です」
「ネクロマンサー? ふん、まあいい。そんなことよりもだ」
二人は空気を張り詰めさせるように睨み合う。
「因幡咲華。お前は眷属の才能に溢れている。元々眷属の身体能力は高いといっても、銃弾を防げるとなればそういない。力量の低い愚弟が主で、瞬間移動や武器化といった複数の眷属術が発現していれば尚更だ」
言いながら騨漣兄さんは拳銃を懐にしまった。
「だが、今のままではその才能が宝の持ち腐れになるのは見えている」
「だから何ですか?」
「俺の部下になれ因幡咲華。ああ、案ずるな。腑抜けの愚弟にお前を始末、縛るといった覚悟はない。愚息が主のまま俺に降れる」
騨漣兄さんは僕の前で堂々と断言する。
「俺の見立ては間違いでなかった。主が何処にいようと瞬間移動で必ず駆けつけられる護衛力、手に持つモノを武器とし攻撃と防御の双方を高められる継戦力。これらはキゼンの不足部分を補い、俺の野望を達成する力となる――」
「もう結構ですよ。どう褒めてくれてもお断りですから」
べた褒めする騨漣兄さんを遮って、因幡さんは首を振った。
「私を殺した人の部下になるとかあり得ません」
因幡さんは「よく誘えるな」とばかりに呆れ顔をする。
「付け加えると、弟を殺そうとする人とも一緒にいたくないです。少しは無垢さんを見習ったらどうですか?」
「……無垢を見習え……だと?」
騨漣兄さんの眉が激しくピクついた。
「無垢さんは相手を思いやれる人です。あんな人ならついて行きたいと思いますけど、先輩はそうじゃないですから」
因幡さんはカレーを食べたあの日、僕と無垢姉さんから騨漣兄さんのことを聞いている。
おそらく騨漣兄さんを無垢姉さんと不自然に比べているのはワザとだ。
このくらいはいいだろうと、因幡さんは厚かましく勧誘してきた騨漣兄さんに嫌がらせをしていた。
「眷属ごときが随分と言ってくれるな……」
「そういうこと言っちゃうのがダメなんですよ。器の小ささが知れますね。だから無垢さんの良さが際立っちゃうんです」
「貴様ぁッ!」
騨漣兄さんの顔が不機嫌に歪む。声も怒りに震えている。煽るように無垢姉さんと比べられて頭にこないワケがなかった。
「何で逆ギレしてるんですか? 私は被害者ですよ? 謝られてもキレられる筋合いはないですね。無垢さんなら――」
「キゼンッ!」
完全に頭にきている騨漣兄さんは因幡さんの言葉を遮り、キゼンの名を叫んだ。
「そこのクソ眷属を始末しろッ!」
「……わかりました」
キゼンが主に頷いた瞬間、その姿が消えた。以前、僕が騨漣兄さんを殴ろうとして止められた時と同じだ。因幡さんを始末すべく、キゼンは眷属術を使って致死の一撃を放とうとしていた。
当然、気取ることはできないし、攻撃方向もタイミングもわからない。闇雲に動いてはキゼンの思うつぼだ。動作後をすかさず狙われてしまうだろう。
静寂が支配する。
「…………」
因幡さんはその場から動かずジッとしている。ヘタに動くのは危険と判断したようだ。
「ッ!?」
僕と騨漣兄さんの位置からは見える。突然、因幡さんの背後にキゼンが現れた。鋭利な刃物を連想させる手刀が、因幡さんの背中を貫こうと迫っていた。
完全な死角だ。叫んでも間に合わない。避けられない鋭撃が因幡さんに――
「よっ!」
だが、因幡さんは宙を舞う木の葉のごとく、あっさりとキゼンの手刀を避けた。そして、中国憲法の鉄山靠(てつざんこう)のような体当たりをキゼンにブチかます。
「がっ!?」
攻撃を躱され、無防備態勢(カウンター)でくらったキゼンは豪快に吹っ飛んだ。そのまま対面の壁へ突っ込んでいったが、身体を反転させ壁に足をつける。衝撃を無理矢理打ち消すように壁を蹴り、因幡さんへ突撃した。
因幡さんは両手を正面でクロスし、防御の姿勢を取る。
「眷属戦を素直に受け取りすぎです!」
「えっ!?」
キゼンを待ち受けていた因幡さんだが、そのキゼンの姿が再び消えた。
真っ直ぐ突撃したのはフェイントだったのだ。本命は眷属術による奇襲であり、因幡さんは虚を突かれてしまう。
当然、消えたキゼンを因幡さんは警戒する。しかし、刹那の時間では先程のように気取ることはできない。
突如足元に手刀を構えたキゼンが現れ、因幡さんの首を狙う。
「くっ!?」
ギリギリ間に合ったのか、因幡さんが身体を大きく反らす。豪快なアッパーのように放たれたキゼンの手刀が空振り――いや、空振っていない。
手刀は因幡さんの首筋を掠っており、そこからシャワーのように鮮血が飛び散った。因幡さんの顔が歪むと同時に溢れ出た血が宙を舞う。
「おっ、返しッ!」
血が舞う最中、因幡さんは傷に構わず、大きく反らした身体をそのまま一回転させた。それは手刀を放った直後のキゼンの顎を蹴り上げ、高く打ち上げる。
「がぐっ!?」
因幡さんの後方宙返り蹴り(サマーソルトキツク)をモロにくらい、打ち上げられたキゼンは態勢を立て直せないまま落下した。受け身を取れず、バウンドするように地面へ激突し、ヨロヨロと立ち上がる。
「……やりますね因幡咲華」
「ご主人様助けに来てやられちゃカッコつかないもん……ぐっ」
首筋を手で押さえてながら因幡さんは僅かに呻く。
一見、二人のダメージはキゼンが大きいように思えるが、因幡さんの傷も同等だ。致命でなかったとはいえ、鮮血するほど首筋を斬られたのだ。一撃でもその傷は深い。
流れ出る血はキゼンに対する警告だ。隙を見せれば一撃で命を持って行くのが騨漣兄さんの眷属だった。
「カッコがつかないのはこちらも同じ。次は仕留めます因幡咲華」
「どうかな。私を倒すのは簡単じゃないって、わかってくれたと思うけどねキゼンさん?」
両者の空気が張り詰める。前座は終わりこれからが本番だと、二人の目が語っていた。
「さて、キゼンが相手している間にたしかめておこうか」
「うっ!?」
騨漣兄さんの呟きと同時、銃声が鳴り響き、肩に火傷したような痛みが走った。
見れば肩口の衣服が裂けている。
いつの間にか装填を済ませた騨漣兄さんが、僕の肩に銃弾を擦らせたのだ。
「……因幡咲華が来ないな。なるほど。眷属の視界内に主がいる場合、眷属術は発動しないということか」
再び銃口が向けられる。
「この際だ。もっとたしかめておくか」
騨漣兄さんは「死ぬ一撃ならどうだろうな?」と、ぴったり僕の額に照準を合わせた。普通なら命中率を考えると頭より心臓を狙うべきだが、騨漣兄さんには肩口を擦らせるというとんでもない射撃の腕がある。
撃てば間違い無くその弾丸は僕の額を貫くだろう。
「威乃座君ッ!」
僕に迫った危機に因幡さんが庇いに来ようとするが、そう簡単にはいかない。
「行かせません!」
キゼンは地面を思い切り蹴り上げ、一足で因幡さんへ駆け寄った。直後、因幡さんの両手をガッシリと掴み、その場に拘束する。
因幡さんは振りほどこうとするが、両者の力は拮抗している。互いに睨み合うだけで動かなかった。
「離してよッ!」
「そう言われて離すバカはいませんよ」
裂帛の気迫が周囲に溢れ、付近の小石が浮いては砕け散り、バチバチと大気の爆ぜる音が響く。それは因幡さんとキゼンの力量を示しており、強者の眷属がぶつかる光景が展開されていた。
「因幡咲華はキゼンが抑えている。お前を守る眷属はいない」
騨漣兄さんが二人の戦闘を横目に軽く腕を振り下ろす。すると、壁として立っているだけだった榎柄の人達(眷属)が僕の周囲を囲んだ。
どうやら念のため、確実に僕を射殺できるよう逃げられない壁にしたようだ。
「本来なら眷属剥奪でこの場を圧倒できただろうにな。己にある力(屍術師)から逃げたツケだ愚弟が」
イラつきを隠さない騨漣兄さんの鋭い声が僕を刺す。
爺様のような例外や眷属と違って、主の身体能力は並みの人間と変わらない。そのため大半の屍術師は、敵の眷属に襲われた時点で詰みになってしまう。
僕は騨漣兄さんから逃げられず、因幡さんはキゼンの相手で手一杯。この状況は誰もが絶体絶命と疑わないだろう。
でも、僕には焦りも不安も全くなかった。
おそらく自分の眷属が戦闘を行ったことで、本能的に因幡さんの強さを感じ取ったのだ。
因幡咲華はこの状況を打開できる眷属だ、と。
「えぇぇぇぇぇぇいッ!」
気合一閃、因幡さんは取っ組み合いしているキゼンを持ち上げて、そのまま僕の方へと走ってきた。
「ご主人様から離れなさーいッ!」
因幡さんは持ち上げたキゼンをグルグルぶん回(ジヤイアントスイング)し、僕を囲む眷属達を蹴散らしていく。眷属達は耐えようと踏ん張るが、そんなの無駄な抵抗だった。
「ちっ……」
騨漣兄さんは巻き込まれないようこの場から距離を取った。僕も因幡さんを間に挟んで騨漣兄さんの壁となるよう、即座に移動する。
「い、因幡咲華ッ!」
キゼンはどうにか離れようとするが、こんどは因幡さんがキゼンの手をガッシリと掴んで離さない。
「は、離しないッ!」
「そう言われて離すバカはいないよッ!」
キゼンはロクな防御ができないまま、その身に眷属をガンガンぶつけられた。
眷属達は次々とボーリングピンみたいに飛んで行き、地面に転がるとそのまま動かなくなった。
普通は吹き飛ばされた程度なら立ち上がるし、死んでもないのに戦闘不能になることはないのだが、これは因幡さんがキゼンを“武器”にしているせいだろう。
二つ目の眷属術は手に持ったモノを武器にするだけでなく、その武器で瀕死にした者を戦闘不能(気絶)にする効果もあるようだった。
「ええーーいッ!」
因幡さんは眷属達を全て戦闘不能にした後、キゼンを天高く放り投げた。直後、その真下から腕をまっすぐに伸ばして飛び上がる。
「とりゃーー!」
それは鯉が滝を登って龍になるような光景で、キゼンの腹部に因幡さんの拳が勢いよく突き刺さった。
ドンッ! と、巨大鉄球を叩きつけたような鈍い音が響き渡る。衝撃がキゼンの身体を貫き、振動した空気が軽く僕の身体を痺れさせた。
「ぐ、はぁッ……」
キゼンは因幡さんに体を預けて、ダラリとしたまま動かなくなる。
必殺技とでもいうべき因幡さんの一撃は、完全にキゼンを戦闘不能にしていた。
因幡さんは気を失ったキゼンを両手で抱えて地面へ降りる。
「キゼンッ!?」
キゼンがやられて初めて騨漣兄さんに動揺が走った。
従える眷属が全て戦闘不能、銃はあるがキゼンが倒されては意味がない。因幡さんの動きを封じられないのでは、撃ってもあっさり防がれてしまう。
「因幡さん」
「うん」
因幡さんは騨漣兄さんの近くまで歩いていくと、抱えているキゼンをそっと地面に降ろした。
「……何のつもりだ?」
「何のつもりもないです。私は誰かの大事な人を奪う趣味はないですから」
自身を殺した人物が目の前にいる。騨漣兄さんは八つ裂きにされてもおかしくなかったが、因幡さんはキゼンと騨漣兄さんを何度か見比べただけで何もしない。
報復することなく、因幡さんは僕の隣に戻ってきた。
「ご主人様もそうだよね?」
「うん。キゼンも兄さんが眷属にした榎柄の人達も始末するつもりはないよ」
何の偽りもない僕の本心だった。騨漣兄さんは嫌いだけど、眷属を無力化して戦闘を終えられるなら、それに越したことはない。
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