第66話 失言

想夜

「さぁ、反撃開始だっ!!」


 複数の熊丸が口からビームを出しながら栗色の髪の男性に向かって突進するっ!!


自遊

「くっ!?」


 彼も白いアサルトライフルを発砲しながらビームを避けるっ!! 彼が放つ弾丸は僕に向かって来るが、近くの熊丸がそれを防ぐっ!! そして別の熊丸が栗色の髪の男性にビームを放つっ!!


自遊

「くっ!? なんでもありかっ!?」


 彼は突進てくる熊丸に発砲するが、別の熊丸がその攻撃を防ぎ、反撃するっ!!


自遊

「くそっ!! ぬいぐるみ1つ1つが素早い上に防御力が高いっ!! 流力を大量に集めて圧縮して放つ隙がないっ!!」


想夜

「可愛いからって舐めて掛かると痛い目見ますよ」


自遊

「ぬいぐるみはっ!! 可愛いだけであれよっ!! 無数のぬいぐるみが口からビーム出して襲ってくるなんてっ!! 子供はトラウマモノだろうっ!? 正直、僕はトラウマになりそうだよっ!!」


落葉

「うん。確かにトラウマモノだね……。僕の若い頃ならぬいぐるみ恐怖症になるかもしれないね……」


美雪

「……いくら熊丸さんの見た目が可愛くても……無数のぬいぐるみが襲われたらトラウマになるかもしれませんね……。しかもビームを出しながら襲ってくるなんて……恐怖の象徴がぬいぐるみになってもおかしくはないかと思います……」


 こんなに可愛い熊丸が群れを成して襲ってくるのは、僕以外の人からしたら怖いらしい……。


 まぁ、かなりの数がいるから怖いのかもしれない……。


 僕はこの技を出せるようになった時は怖いと思わなかったけどね……。


自遊

「くそっ!? どうやってこんな攻撃ができるんだっ!? こんな攻撃を何度もしたらっ!! 普通は流力がすぐに切れるのにっ!! どうやったらこんな厄介な技が思いつくんだっ!?」


想夜

「この間、見たロボットアニメでさ……。追尾して来る攻撃とか、ロボット本体から分離して敵に飛んでいく砲台ついてる小型兵器とか……。僕、その兵器を見て、思った事があるんだよね……。『アレ、実際にできたら強くね?』って……」


自遊

「それをぬいぐるみで再現するかっ!?」


想夜

「再現しました」


美雪

「ぼっちゃま……。そんな簡単に言われても……。ぼっちゃまの流力が多いから成せる技であって、普通は思いついてもできませんからね……」


 いや、そう言われても……できちゃったんだよね……。それに誰でも思いつきそうな技だと思うんだけど……。


落葉

「『真名解放』してないのにこんな事するとはね……。末恐ろしい子だ……。これはいくら自遊くんが強くても、対処は難しいかもね……」


自遊

「こ、このぉっ!! 調子に乗るなっ!! 『空翼くうよく風刃乱ふうじんらん』っ!!」


 ものすごい突風と共に熊丸達が切り刻まれていくっ!? 無数に風の刃を飛ばして熊丸達に攻撃しているっ!!


 その事を察知した僕は熊丸の本体を抱き寄せるっ!! そして周囲の熊丸の分身達を集めて無数に繰り出される風の斬撃を防御するっ!!


想夜

「……熊丸の分身が全部切り刻まれるほどの威力か……。すごい切れ味……。流力をまとった状態でもバッサリ切られそうなほどの威力だ……」


 切り刻まれた熊丸の分身達は消えてなくなる。


自遊

「複数のぬいぐるみごと君を斬ったつもりだったんだけどね……。君には届かなかったか……」


想夜

「……」


 マトモにあの風の攻撃を受けるのは避けないとな……。でも、あの白いアサルトライフルの弾丸もマトモに受けたら絶対痛いよね……。


自遊

「僕の風で、厄介なぬいぐるみ達は消え去ったぞ……」


想夜

「……」


 この栗色の髪の男性……。やっぱり強い……。


 空中に飛ぶ技。銃による遠距離攻撃。熊丸達の攻撃を避ける素早さ。複数の相手に対する高威力の技。なかなか厄介だ。


 『熊丸流星群』をまた使っても、さっきの風の斬撃でまた切り刻まれる。


 だが、少し引っ掛かる事がある……。何故、彼は無数の熊丸に襲われた時、風の刃を出さなかったのか……。


 最初からあの風の刃を出していれば、簡単に対処はできたはずだ……。


自遊

「『反撃開始』と先程言ったが、もう無数に現れたぬいぐるみの防御力は大体把握した。また出したとしても、破壊する事は可能だ」


想夜

「……」


 今、僕の頭で考えられる理由は2つ……。


 1つは、栗色の髪の男性が僕の事を舐めていたから。僕が子供だから大した技は出さないと踏み、僕の出した『熊丸流星群』に対して舐めて掛かっていたから、対処が遅れた。


 もう1つは、無数の風の刃を出すのになんらかのデメリットがあるから。例えば、無数の風の刃を出すと肉体的な負担がある事や流力を大量に消費してしまう事が考えられる。その為、技を使うのに躊躇ためらい対処が遅れた。


想夜

「……なんにしても……攻めてみれば見えてくるかもね……」


自遊

「右目に眼帯をつけてるようだが、オシャレのつもりか? 本気を出して僕に挑むのなら……しっかり両目で僕を見た方がいいと思うよ……。それとも僕を舐めているのか?」


想夜

「別に舐めてるわけじゃないです。僕、ちょっと前に右目を失ってしまって……」


自遊

「え? えっ!? そ、そうだったのっ!?」


落葉

「……自遊くん……。今のは流石にデリカシーがない発言だったと思うよ……」


自遊

「えっ!? これは僕が悪いんですかっ!?」


落葉

「そりゃそうでしょ……。考えてもみなさいよ……。今さ、結構シリアスな場面だよ……。そんな状態でも眼帯をつけたまま戦っているんだよ……。そう考えるとさ、右目を怪我しているとか、最悪失明しちゃっているかもとか思わなかったのかい?」


自遊

「あ、い、いや……そ、そんな事を言われても……。そこまでは……。えっと、ごめんね? 別に悪気があったわけじゃ……」


想夜

「あ、いえ……。気にしてないので……」


落葉

「えっと、そこの君……。僕の同僚がすまないね……。決して彼に悪気があったわけじゃないんだよ……。ただ、少しデリカシーがないだけで……」


想夜

「いや、だから気にしていませんって……」


美雪

「私が……私が……もっと……もっと強ければ……ぼっちゃまは……」


落葉

「えっ!? あ、あれぇっ!? 美雪ちゃんにもなんかダメージが入ってるっ!? えっと、なんかごめんね……。彼も悪気があったんじゃないんだよっ!!」


自遊

「え、えっと……な、なんか……その……すみません……」


想夜

「……」


熊丸

「……」


 ……なんだ? このぐだぐだの感じは? さっきまでのシリアスはどこ行った?


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