第61話 ひっそりと動き出す歯車
ー
ー自遊目線ー
僕の名前は『
ちなみに『帝』のつく二つ名を与えられる者は、国裏守護団の最強戦力の証であり、選ばれた10人にしか与えられない称号だ。帝1人で一国の軍隊と同等の戦力を持っているとされる。
そんな僕は現在国裏守護団本部の会議室に呼び出しを受け、会議室で待機している。
正良
「自遊」
僕に声を掛けてきたのは、僕の幼馴染で国裏守護団第四番隊隊長を務めている男。『
自遊
「正良」
正良
「今回、隊長格全員を総集しての会議らしいが……何があったか聞いてるか?」
自遊
「特には何も聞いてないよ。隊長格を集めて一体何を話すんだろう?」
次々と隊長格が会議室へと入って来て、それぞれ自分の席へと座る。そして最後に一番隊隊長にして国裏守護団の最高責任者である人物が入って来た。
彼の名前は『
しかし、彼は老いて尚、国裏守護団最強の人物だ。
太郎左衛門
「皆、忙しい中よく集まってくれた……。その事にまず礼を言わせてもらう……」
落葉
「太郎爺ちゃん。長ったらしい話は無しにしてさぁ、本題から話そうよ。何かヤバい事があったんでしょ?」
そう言ったのは、第七部隊隊長を務める男。『
おそらく国裏守護団の中で桃原隊長と気軽に話ができるのはこの人だけだろう。詳しくは知らないが、落葉隊長は桃原隊長の愛弟子だったらしい。
太郎左衛門
「落葉。今は会議の場じゃぞ。まったくオヌシは昔から……。まぁ、良い……。では、本題から話す。先日S県S市に『黒焔路 焦土』が現れたと調査部隊より連絡があった……」
その言葉に皆、
『黒焔路 焦土』は、神出鬼没の世界最強の最悪の能力犯罪者だ。世界各地の貴重な物を強奪したり、破壊したりする。国裏守護団最強戦力の帝を殺した実績がある。
正良
「っ!? あの男がっ!? 何故っ!?」
自遊
「確か……あそこには元『帝』だった人が住んでいるところだよね? どうして、そんな所に……」
落葉
「……なんでいきなり現れたんだろうね……。黒焔路の部下を名乗る奴は結構暴れ回っているのはたまに聞くけど……本人自ら現れるとはね……」
その時、第二部隊隊長であり、調査部隊隊長でもある胸が真っ平らな女性。『真平 ペタコ』が挙手する。
ペタコ
「黒焔路の目的はわかりませんが、被害は酷く。ショッピングモールが爆破され、多くの人達が怪我をされました。今のところ死人は出ていません」
落葉
「ショッピングモールが爆破されて、死人が出ていないってのは奇跡的だね……」
ペタコ
「ええ。被害者達は皆、口を揃えて『赤い光が見えたと思ったら、ある程度の怪我が治っていた』と言っていたそうです。現在それについても調査中です。そして、流力反応を調べた結果、2人分の『真名解放』をした時に発生される流力反応を検知しました」
その言葉に皆、再び驚愕した。『真名解放』は能力戦闘の奥義だ。それが扱える者は多くはない。むしろほとんどの能力者は扱えないとも言ってもいい。
『真名解放』をするには、膨大な流力が必要になるのと同時に体に負担がかかる。それ以外にも『真名解放』には条件があるようでほとんどの人は使えない。
『帝』であったとしても、『真名解放』を行える者はあまりいない。現に僕や正良は『真名解放』はできない。
ペタコ
「1人は黒焔路で間違いないかと思われます。そして、もう1人は……かつて国裏守護団に所属し、不祥事を起こした事が原因で組織を追放された人物。『白神 美雪』のモノであると判明しました」
正良
「なっ!?」
自遊
「っ!?」
『白神 美雪』。彼女は、かつて国裏守護団で最速の能力者だった。『瞬月』の二つ名を授かった女性だ。あまりにも素早い歩法と剣術から『神速』とも呼ばれていた人だ。
今から9年前の秋に彼女は3人の同僚を殺害した。仲間殺しをしたのは事実だが、過去に多くの人達を救ったのもまた事実。
彼女の事で長い間、話し合いを行われた。結果、彼女は組織を追放される事になり、彼女は組織を去った。
今になって彼女の名前を聞く事になるとは思っていなかった。
正良
「っ!? なんで……。今更……なんでアイツがっ!?」
自遊
「……」
落葉
「まぁ、落ち着きなさいよ。正良くん」
正良
「落ち着いていられるわけないだろうっ!? アイツはっ!!」
太郎左衛門
「静かにせい……。正良……。オヌシの気持ちは、分からんわけではない……。じゃが、まだ会議中じゃ。冷静になれ」
正良
「くっ!! ……失礼しました」
太郎左衛門
「話を続けよ」
ペタコ
「他にも流力反応は3人分ありましたが……『真名解放』を行った時の流力反応はその2つのみです……。おそらく、黒焔路と白神がショッピングモールで戦闘をし、黒焔路を撃退したのではないでしょうか……」
自遊
「っ!? 黒焔路を撃退したっ!? そんな馬鹿なっ!?」
ペタコ
「黒焔路の血液がショッピングモールに大量の残されていた事。そして黒焔路の流力反応が弱まった反応があった事から撃退したのではないかと考えられます……」
正良
「美雪に黒焔路を撃退するほどの力がっ!?」
落葉
「それにしても、あの美雪ちゃんがね。正直、『真名解放』をできる領域には到達できないと踏んでいたから驚いたよ」
『真名解放』は、能力戦闘の奥義。それを使える者はある意味、世界の脅威だ。
どのような『真名解放』かにもよるが、1日で1つの国を崩壊させる事もできると考えられるほどだ。それほど脅威になるモノなのだ。
者者者
「こりゃ、やべぇんじゃねぇのか? だから俺は白神の奴は処刑するべきだと言ったんだ」
そう言い出したのは第十部隊隊長を務める男。『
者者者
「仲間殺しをする奴はロクな奴じゃねぇんだからよ」
落葉
「でも、彼女が多くの人達を救ったのも事実だし、無下に扱うわけにもいかないでしょう……。彼女に救われた人達が黙っていると僕は思わないから……追放が妥協だったんじゃないかと思うよ……」
者者者
「追放なんてしたらよ。どっかの厄介な組織に入って、悪さをするとは思わなかったのか? そうなる前に殺しておくべきだったんだよ。手っ取り早く殺すべきだったんだ」
落葉
「彼女が能力犯罪者になるよな子なら、真っ先に僕が殺していたさ。でも、彼女はそんな子じゃなかったからね。現に彼女が犯罪をした記録はないだろう?」
者者者
「……ああ。確かにねぇな……。だが、奴は『真名解放』したのは事実なんだろう? これだけでも脅威だ。さらに、あの黒焔路の野郎を撃退できるだけの力がマジであるんならとんでもねぇ脅威ある存在だぞ」
自遊
「……」
落葉
「……まぁ、確かにね……。どう考えても、このまま野放しにしとくワケにはいかないね……。どうしたモノか……」
者者者
「監視なんて生ぬるい事する気じゃねぇだろうな? 手っ取り早く、ぶっ殺しに行くしかねぇだろう」
落葉
「そう殺す殺す言うもんじゃないよ」
ペタコ
「まぁ、私としてもこのまま白神を放置して置くのは少々危険ではないかと思います。捕えて管理下に置くのが最善かと思います」
太郎左衛門
「そうじゃな……。このまま彼女を見過ごすわけにはいかぬ……。自遊隊長、並びに落葉隊長。元帝候補『白神 美雪』の身柄確保を命ずる……」
ー自遊目線終了ー
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