第48話 モノクローム・キャンバス

ー美雪目線ー


美雪

「くっ!!」


 『白刀白蛇』を鞘から抜き、鞘は腰に差し、切っ先を奴の方へ向ける。


黒焔路 焦土

「ほぉう……。剣技で私に挑むのか……」


美雪

「……」


黒焔路 焦土

「君の二つ名の由来は、目にも止まらぬ速さで敵に攻め込み、斬り込む……。その斬撃はまるで一瞬だけ月がその場に現れたように思えた……。ゆえに『瞬月しゅんげつ』名付けられたと聞く……。ならば、その自慢の剣技……じっくりと味わってみようではないか……」


 奴は片刃白、片刃黒の両刃の剣を右手持ちするっ!! その剣の切っ先をこちらに向けたまますごい速さで突進してきたっ!?


美雪

「っ!? は、速いっ!?」


黒焔路 焦土

「『情熱的な愛ティ・アーモ』ッ!!」


 奴は恐ろしく速い突きを連続で繰り出すっ!!


美雪

「『海神細波流かいじんさざなみりゅう』っ!! 『冬月とうげつ嘆き護り渦巻きなげきまもりうずまき』っ!!」


 私は刀を持った両腕を振り回して相手の攻撃を防御の技を使って黒焔路の連続で放たれる突きを防ぐっ!!


美雪

「くっ!?」


 一撃一撃が重いっ!! 片手で繰り出している技とは思えないほどに重いっ!!


黒焔路 焦土

「ほぉう。なかなかやるではないか……。ならこれならどうかね?」


 黒焔路は一瞬で剣を両手で握るっ!!


黒焔路 焦土

「『一途な愛フォーリング・ラヴ』ッ!!」


 一撃の鋭い突きが繰り出されるっ!! 刀で防御するっ!! だが黒焔路の凄まじい一撃を防ぎ切れなかったっ!! 私は吹き飛ばされ地面を転がるっ!!


美雪

「がっ!? くっ!?」


 私の防御が押し負けたっ!? 流力を全身にもっ!! 刀身にもまとわせていたのにっ!!


 『白刀白蛇』の刀身でなければ今の一撃で殺されていたっ!! ただの刀だったら容易く折れ、私の体が貫かれていたっ!!


黒焔路 焦土

「ふむ……。流石の君でも……この突きは防ぎ切れはしなかったか……。先程の連続技も、今出したこの技も……技名は少々気に入らないのだが……それなりの威力と速さがあるのでね……。強者と戦う際にはよく使うのだ……」


 私はすぐに立ち上がり、刀を構えるっ!!


黒焔路 焦土

「連続で突きを繰り出す技はイタリアで出会ったとある恋多き男剣士から……。両手で握り重めの一撃の突きを放つ技はイギリスで出会ったとある1人の女性を愛し続ける男剣士から……。それぞれ盗み見して、会得した技なのだがね……。なかなかいい技だろう? 技名以外」


美雪

「……確かに……技名はともかく……。凄まじい威力の剣技です……。愛にまつわるような剣技は貴方らしくない気はしますが……」


黒焔路 焦土

「……そうかね? 私はコレクターとして……奪ったモノには愛を注いでいるつもりなのだがね……」


 それにしても……黒焔路の剣……。何故、切れない? 


 『白刀白蛇』には、『絶対切断』の効果がある……。大抵のモノなら切断できるはず……。


 なのに奴が持っている剣には傷一つ無い……。


黒焔路 焦土

「ん? 何やら解せぬという顔をしているな……。『瞬月』よ……。何を不思議そうにしているのだ?」


 黒焔路は不敵な笑みを浮かべながら話をする。


黒焔路 焦土

「君の使うその刀……。魔剣や妖刀の類いでなのであろう? それを私も魔剣や妖刀を持っていないと……いつからそう思っていたのかね? 私の持つ剣もその類いなのだよ」


美雪

「……なるほど……その剣が折れないのは……その剣自体の能力ですか……」


 黒焔路は不敵な笑みを浮かべたまま、片刃白、片刃黒の両刃の剣を私に見せつけるように持つ。


黒焔路 焦土

「この剣の名は、魔剣『モノクローム・キャンバス』。別名『異能殺しの刃』と呼ばれる剣だ。私がイギリスに出向いた時に見つけ、奪った魔剣なのだよ……。 この魔剣には、とても面白い能力があるのだよ……」


美雪

「……面白い能力?」


黒焔路 焦土

「ああ……。この魔剣には、『様々な能力に関係する効果を無効化する』という……とても面白い能力があるのだよ……」


美雪

「っ!?」


黒焔路 焦土

ゆえに君のその刀にどのような能力があろうと……この剣の刀身に触れた瞬間、君の刀の能力効果は無効化できるのだよ……。一体、いつ頃、何を材料にして、どのような方法でこの剣は作られたのか……いまだ謎のままだがね……」


 つまり『白刀白蛇』の『絶対切断』の効果を無効化したわけですか……。なんと厄介な……。


 おそらく、あの剣には『白刀白蛇』の『不破壊』も『効果停止』も通用しないだろう……。


 『不破壊』が無効化できるなら、『白刀白蛇』が砕けたり、折れたりする可能性はある。


 『効果停止』が通用しないなら、『白刀白蛇』での能力の効果の停止も使えない。


 本当に厄介だ……。


黒焔路 焦土

「この魔剣は能力もとても面白いのだが……私が最も気に入っているのはこの見た目だ……。この両刃……。片刃は雪原を連想させるかのような純白、片刃は闇夜を連想させるかのような漆黒になっている。あぁ……なんとも不思議で魅力的だな刀身だ……。つばは金色に輝き、さらにこの模様……。蛇の鱗を連想させるような模様が刻まれている……。は紅玉を連想させるような美しい赤……。これほど芸術的な剣もなかなかあるまい……」


 黒焔路は自慢げに自分の剣について語る。


 しかし、黒焔路の剣が無効化できるのは、おそらくあの刀身に触れた能力による攻撃のみ……。


 私の流力による攻撃の威力までは無効化していないはずだ……。


 力でゴリ押せるのなら、まだこちらにも勝機はある……。


 私の能力『雷脚脱兎らいきゃくだっと』は、自分の時間を加速させ、高速で動き回れるが、能力発動の際に流力の消費が激しく、長時間の使用は体力の消費も激しい……。


 流力の消費が激しい能力を使いながら、さらに流力を大量に流力を体と刀身にまとわせるのは少々厳しいですが……やるしかない……。


美雪

「『白刀白蛇』。ちょっと無理をするから……耐えてくださいよ……」


ー美雪目線終了ー

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