第47話 黒焔路襲来

ー美雪目線ー


 ぼっちゃまの学校がもう直ぐ夏休みになるそうです。


 夏休みはぼっちゃまとどこにお出掛けしましょうかと少々悩みます……。


 ぼっちゃまは可愛らしいお顔をされているので、いろいろな方から声を掛けられてしまいます……。なので出掛ける先にも困ります……。


 私もよく男性の方に声を掛けられますが、私の場合は睨むと大体の方は逃げて行かれるので、そこまで困らないのですが……。


 ぼっちゃまの場合はしつこいそうなので……出掛ける先にも悩みます……。


 普段は背の高い光二さんや猿太郎さんと一緒にいらっしゃるので声を掛けられる事はあまりないそうです。


 光二さんや猿太郎さんにもご一緒してもらえば、そのような心配はないかもしれませんが……。


 せっかくならぼっちゃまと2人っきりでお出掛けしたいです。


 普段は光二さんと猿太郎さんと一緒にいる事が多いですので……。


 夏休みの時くらいぼっちゃまを独り占めする時間が欲しいという我儘わがままは許していただきたいです……。


美雪

「ぼっちゃまは、どういう場所がお好みでしょうか……」


 水族館、映画館、美術館、博物館、遊園地、プール、川、海……。どこが一番喜んでくださるでしょうか……。本当に悩みます……。


 ショッピングモールで今夜のお夕飯の買い物をしながら、ぼっちゃまの夏休みにどこに行くか考え中であります。


美雪

「……ヒロコ様から車を借りてますし、あまり長くお借りするわけにはいきませんね……。早く買い物を終わらせて帰らなくては……。……ん? っ!?」


 私が最も憎しむ相手の流力を感じ取ったっ!! それも近いっ!!


 私はショッピングモールから飛び出して駐車場に出るっ!! そこには私が最も憎む男っ!! 『黒焔路こくえんじ 焦土しょうど』がそこにいたっ!!


黒焔路 焦土

「おや? こんな所で、君と出会うとは思いもしなかったよ……。『白神しらかみ 美雪みゆき』……。いや、『瞬月しゅんげつ』と呼んだ方が良いかな?」


美雪

「黒焔路……焦土っ!!」


 『黒焔路 焦土』。年齢不詳だが、少なくとも50年前から存在していた。世界各国で様々な物などを強奪もしくは破壊している。また多くの有名人を襲撃した事もある。


 彼を捕まえる為に多くの戦士達が挑んだが、彼はその全てを返り討ちした。


 それどころか国を裏側から護る組織『国裏守護団こくりしゅごだん』の最強戦力である『帝』の称号を持った戦士を今までに10人殺害している。


美雪

「何故っ!? 貴方がここにいるっ!?」


黒焔路 焦土

「何。ちょっと興味深いモノがここにはあるようでね……。私自ら足を運んだまでだよ……」


美雪

「……興味深いモノ?」


黒焔路 焦土

「ああ……。先日、私の部下達がこの町で戦闘を行い、敗北したらしいのだ……。私の部下達を倒した者……。一体、どのくらいの力があるのか、どのような能力を持っているのか、どのようにして彼等を倒したのか……。少々興味が湧いてしまってねぇ……」


美雪

「……」


黒焔路 焦土

「私の部下達を倒した者は、鬼のお面をつけ、白いスーツ姿をしていた身長150センチくらいの人物で、武装は黒い刀身の刀を持っていたそうだ……」


美雪

「っ!?」


 身長150センチに武装が黒い刀身の刀……。ぼっちゃまの特徴と当てはまる……。


 ぼっちゃまの身長は150センチ。熊丸さんを武器にした時は大体黒い刀身の刀。


黒焔路 焦土

「私の部下達を倒した後、白い巨大ゴリラに乗り、時速100キロという速度で立ち去ったらしい……」


 ん? 白い巨大ゴリラ? 


 あ……。そういえばそんな事が新聞やニュースにありましたね……。


 ぼっちゃま……白い巨大ゴリラなんて……一体、どこで捕まえたんでしょうか……。そしてどこで飼育しているのでしょうか……。


美雪

「そんな事の為にわざわざこの地に来たのですか? 『世界最強にして、最悪の能力犯罪者』と呼ばれた悪党も随分と暇なんですね」


黒焔路 焦土

「私はそんな肩書きにはあまり興味はないのだがね……。私はしがないコレクターに過ぎないのだからな……」


美雪

「……」


黒焔路 焦土

「欲しいと思ったモノを奪い、時に破壊する……。それ以外にはあまり興味は無いのだがね……」


美雪

「……」


黒焔路 焦土

「しかし、私の期待していた部下に勝利し、白い巨大ゴリラの乗り立ち去るという……。そんな面白そうな人物……。是非この目で見てみたいと思ってしまったのだよ……。これほど面白そうな事を成し遂げる人物はどんな人間なのだろうと……」


美雪

「……」


黒焔路 焦土

「君もそう思いはしないか? かつて『国裏守護団』の『帝候補』であり、『帝』に最も近かった君なら……。理解できなくはないと思うのだがね……」


美雪

「……どうですかね……。今の私は、もう『国裏守護団組織』の隊士ではありませんので……」


黒焔路 焦土

「……ふむ……。そうかね……。まぁ、そろそろ私も失礼しようかな……。私は私の部下を倒した者を探さねばならないのでね」


美雪

「行かせると思いますか?」


黒焔路 焦土

「ほぉう。組織を去る事になっても、なおも、正義の心は持ち合わせているというわけかね? それとも私に対しての復讐をしたいのかね? 『瞬月』」


美雪

「……復讐……。確かに私は貴方を殺したいほど、憎んでいます……。今すぐにでも貴方を殺したい気持ちもあります……。ですが、違います……」


黒焔路 焦土

「ほぉう……」


美雪

「私は今の私の居場所であるこの町に、貴方のような人にいてほしくないだけですよ」


黒焔路 焦土

「……その目……。挑んで来る気かね? 逃げずにこの私に向かって来るつもりかね?」


美雪

「……」


黒焔路 焦土

「良かろう……。ならば、挑んで来るといい……。今の君の居場所とやらも……潰してやろう……。そしてかつて『瞬月』と呼ばれた君の首を……奪ってやろう……」


 奴が右手の指をパチンと鳴らした瞬間、ショッピングモールが爆発したっ!?


美雪

「っ!?」


 ショッピングモールが爆発っ!? 奴はショッピングモールに爆弾でも仕掛けていたのかっ!? ショッピングモールの中にはまだ人がっ!!


黒焔路 焦土

「敵を前に余所見をしている場合かね?」


 気が付くと奴はすでに私の目の前にいたっ!? 私は咄嗟に後ろに跳んで距離を取ろうとするっ!!


 だが奴の前蹴りが私の腹部に直撃するっ!! 私はそのまま吹き飛ばされ地面を転がるっ!!


美雪

「ぐぅっ!!」


黒焔路 焦土

「ふむ。咄嗟に腹部に流力を集めて、防御したのか。なかなか良い判断をするではないか……。しかし、君は少し腕が鈍ったように見える……。あの程度の陽動で私の接近に気がつけないとは……」


美雪

「くっ!!」


 私は素早く立ち上がるっ!! そして胸元に小さくして隠し持っていた『白刀白蛇』を取り出すっ!!


黒焔路 焦土

「組織を追放された今の君の力が、どの程度のモノか、見せてもらおうではないか」


 奴は懐から紫色の宝石が装飾された指輪を取り出すっ!! それを空に向かって投げるっ!! ある程度の高さまで指輪が上がると指輪が突然砕けたっ!! すると黒い煙が出現するっ!! その煙はショッピングモールの駐車場全体を包み込むっ!!


美雪

「っ!?」


黒焔路 焦土

「安心したまえ。ただの結界にすぎない。外からの侵入を妨害する為のモノだ。君が所属していた組織にも似たような道具があったと思ったのだがね……」


 奴はそう言いながら腰に差した剣を抜く。片刃白の刃、片刃黒の刃の刀身をこちらに向けながら不敵な笑みを浮かべる。


黒焔路 焦土

「さぁ、場は整えてやった……。今の君の力を……この私に見せてくれたまえ」


ー美雪目線終了ー

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