第38話 信

ー光二目線ー


 想夜は俺達に太一達をたくし、龍に立ち向かって行く。


 たった1人でバケモノに挑むのは、恐ろしい事だって俺にだって分かる……。


 本当は今すぐにでも、想夜に加勢して、共に戦いたい……。だが、今は太一達を下山させる方が先だ。俺達は想夜に太一達を任された。


光二

「猿太郎。行くぞ。早く太一達を下山させて俺達も想夜に加勢するぞ」


猿太郎

「せやねっ!! おおおぉぉぉいっ!! 想夜ぁぁっ!! ちょいとだけぇ待ってろよぉっ!! プリティーでベリーグッドなナイスガイの俺が戻ってくるまでちょい待っときぃよぉっ!!」


黒い龍

「グォッ?」


猿太郎

「え?」


光二

「あ」


 あ、黒い龍がこっちを見た。なんか目が合っちゃった。


光二

「……まずくね?」


猿太郎

「せやね……」


黒い龍

「グウゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」


 あっ!? 黒い龍がこっちを向いて突進しようとするっ!!


想夜

「ウラアアアアアアァァァァッ!!!!」


 その瞬間、想夜が龍の顎に飛び膝蹴りを叩き込むっ!!


黒い龍

「グウゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッ!?!?」


 黒い龍が再び想夜の方を向く。


想夜

「猿太郎っ!! 何やってんだよっ!! あんまり大きな声を出さないでっ!! 龍をこっちに意識を向かせてるんだからっ!! 大きな声を出したら、そっちに意識が行っちゃうだろうっ!!」


猿太郎

「す、すまん……。つ、つい……」


想夜

「まったく……。早く下山してよ……。おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


 想夜はそう言うと再び龍に斬り掛かるっ!! 想夜は龍の爪を避けながら斬り込むっ!!


 俺が太一を抱え、猿太郎は庄之助とシコルノを担ぐ。そして走って下山する。


太一

「な、なんでっ!? 何がっ!! どうなってんだよっ!? なんなんだっ!? あのバケモノはっ!?」


庄之助

「なんでお前等はそんなに冷静なんだよっ!? 想夜をなんで置いて行ったんだよっ!? あのままじゃっ!! 想夜がっ!!」


シコルノ

「ガタガタガタガタガタガタガタガタ」


光二

「冷静なワケないだろうが。あんなバケモノが出てきたんだぞ。冷静でいられるワケねぇだろうが。想夜を置いてきたのだって心配だ。今すぐにでも戻りたい」


シコルノ

「だったらっ!!」


光二

「でも、俺達は想夜にお前等を護るように頼まれた。だからお前等を護って下山する事を優先した」


太一

「……」


庄之助

「けどよ……」


シコルノ

「……」


光二

「それに俺達は想夜を信じてるし、想夜は俺達を信じてる。だから、想夜は俺達が来るまで持ち堪えてくれるって信じてる。早くお前等を下山させて、俺達は想夜を迎えに行く」


庄之助

「っ!? またあの龍と戦う気かっ!? 今度こそ殺されちまうよっ!!」


太一

「無理だっ!! あんなバケモノに勝てるワケないっ!! みんな殺されちまうっ!!」


シコルノ

「あんなバケモノに勝てるワケないだろうっ!? 何考えているんだっ!? お前等が行ってもっ!!」


猿太郎

「ガタガタやかましいんじゃっ!! ボケがぁっ!!」


 騒ぐ太一達に対して猿太郎が怒鳴る。その怒鳴り声に太一達は黙る。


猿太郎

「親友であり、愛した人を見捨てられるわけないやろうがっ!! ボケッ!! 俺達はなぁっ!! 想夜と一緒にいたいんやっ!! そん為にこちとら強くなるってっ!! ずっと昔から決めとるのやっ!!」


光二

「ほら、ここでガタガタ言い争いしてる暇はねぇぞ。早く下山するぞ」


 俺達は急いで下山する。


太一

「……お互いを……信用してんだな……」


光二

「ああ。昔からの付き合いだからな……」


 待ってろよ、想夜……。


 必ず助けに行くから……。


 もう俺達は、通り魔に襲われた時に何もできなかった情けない男じゃねぇんだ……。


 想夜と一緒に戦えるくらい強くなったんだ……。


 だから、死なないでくれよ……。想夜……。


 その時っ!! 俺達の真横を白い何かがすごい速さで通り過ぎたっ!?


 しかも、その白い何かからは流力を感じたっ!?


光二

「っ!?」


猿太郎

「っ!?」


 その白い何かは真っ直ぐと俺達がいた場所に向かって行くっ!! 


光二

「っ!? な、なんだっ!? 今のはっ!? なんか白い何かがっ!? 物凄い速さで横切ったぞっ!?」


猿太郎

「すごい速さだったなぁっ!? な、なんなんやぁっ!? 今のはっ!? しかも今通り過ぎたのっ!! 流力を感じたでぇっ!?」


光二

「ああ。猿太郎も感じたか……。なら、流力を出していたのは……間違いないようだな……。なんなんだ? 今のは?」


太一

「な、なんか突風が吹いたっ!? なんなんだっ!? なんかビューンってっ!! なんなんだよぉっ!?」


庄之助

「な、何が起きたっ!? なんかよく分からねけどっ!! 一体なんなんだよぉっ!?」


シコルノ

「りゅーりょくー? 何それ? いろんな事が起き過ぎてわけわからねぇよっ!! それに今のもなんなんだよっ!? さっきよ黒い龍に関係してんのかっ!? あとなんか一瞬女の子特有のいい匂いがしたんだけどぉっ!?」


光二

「……猿太郎……。急いで下山して、太一達を安全なところに置いたら……想夜のところに戻るぞ……」


猿太郎

「おう。分かっとる」


ー光二目線終了ー

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