第5話 秘密




始業式が終わり、友人たちと雑談していると突然、耳を疑うような単語が飛び出してきた。



「なんでも、最近魔力ってのが見つかったらしい。」


「は?それ、まじで言ってんのか?高橋。ラノベでもあるまいし。」


俺が高橋の言葉に驚いていいると、上田が高橋へ質問していた。


「別に、根拠があるわけじゃないけど、兄貴がめっちゃ興奮しながら俺に教えてくれたんだよ。なんでも、配信を見てたら、それがあるって確信できることがあったんだとよ。」


「なんだ、お前の兄が厨二病拗らせすぎてるだけじゃんか。一瞬でも期待した俺がばかみたいじゃん。」


配信というのはおそらく昨日俺が魔力錬成を手に入れたときのことだろう。

高橋の兄は、それを見て魔力の存在を確信したのだろう。


全く、ヒヤヒヤされられた。俺以外に誰かが魔力の存在を知ってそれを公開したのかと思って期待してしまったが、思い過ごしだったようだ。


「その配信ってのは見てみたのか?どこからそんな推察をしたのか気になるな。」


興味あり気に聞いてみると、高橋はなんてことなく話し始めた。


「いや?見てないけど。どうせデマカセだろうし、見る価値なんてないだろ。もしかしてお前、ホントだとでも思ってるんじゃないよな?」


「まさか。ちょっと気になっただけだ。そういえば、こないだ地震が起きたけど、お前らは何もなかったか?」


高橋は俺の配信を見ていないらしい。見られるのはちょっと都合が悪いから、話をずらした。


「地震?すまんけど気づかなかったな。でも、なんか急に家の庭に穴が空いたんだよ。危ないから埋めたんだけどよ、一体何だったんだろ。」




え?

高橋の言葉に、俺は言葉を失った。

流石に、アレがうちにしかないとは思っていなかったが、まさかこんな近くにあるとは。







HR後、俺は高橋を体育館裏へ呼び出した。


「どうした?裕司。俺に告白か?俺はホモじゃないから、すまんが、断っとくよ。」


なんで俺は告白なぞするつもりもないのに勝手に振られなきゃいけないんだ。


「違う、そんなんじゃない。ちょっとお前に相談したいことがあるんだよ。」


「相談?なんだ、好きなやつでもいるのか?」


全く、こいつはなんでも恋愛に結びつかないと気が済まないのか?


「そうじゃなくて。お前、庭に穴が空いたって言ってたろ?ちょっとそれを調べさせて欲しいんだ。」


「別にいいけど、何で?お宝でも埋まってんの?そういや兄貴も穴を埋めるなって言ってたようなな。」


「実はな、うちの庭にも、同じような穴があるんだよ。そんで、中に入ってみたらラノベのダンジョンみたいのができてたんだよ。」


高橋も、俺と同じようにラノベは履修しているので、言いたいことは伝わるはずだ。


「マ?」


「マ」


「マ?」


「そういうことだから、今週の土曜にお前の家行ってもいいか?」


「構わないが、多分兄貴が俺も!ってくるぞ?それでもいいのなら。あ、俺は同行するつもりないからな。」


「ありがとな!お兄さんも、多分大丈夫。これで、俺がお前に借りイチな。」


「それなら、明日ジュース奢ってくれ。貸し借りは早めに清算したほうがあと腐りがいいしな。」


「おけ。じゃ、また明日な!」


そう言って別れた後、俺は帰路についた。




「いや〜、まさか高橋のとこにダンジョンがあるとはな。すごい偶然だ。ウチのと違いはあるんかな。」


自分の部屋に転がって今日のことを振り返っていると、玄関のドアが開く音が聞こえた気がした。


「ん?なんだろう、母さんが帰ってきたのかな?まあいいや。」









◆◇◆◇◆◇◆◇


あとがき

ここまで読んでくださって、有難うございます。早く続きを読みたい!と思っている人も思っていない方も、作者のモチベーションが上がるので、ぜひ星や応援コメント、ハートなどをよろしくお願いします!






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