第6話 協力者



早足で平日を駆け上がり、今日は土曜、高橋の家まで来た。


「おじゃましまーす。………エッ」


玄関のドアを開くと、高橋のお母さんがお出迎えしてくれていた。おかげで、驚いて変な声が出てしまった。聞こえていないだろうか。


「こんにちは、照人くんの友達の、小鳥遊裕司といいます。今日は、照人くんに用事があって、お邪魔しました。こちら、お土産です。」


これでやり過ごせたか?


「あらあらあらあら、いいのよ、お土産なんて。最近の若い子は礼儀正しくって素晴らしいわ。それに比べて、あの息子は、ろくな態度を取らないで、全く。」


高橋は苦労しているらしい。


「ちょっと母ちゃん、人の友達の前で俺の愚痴を言うのはやめろよ。」


「てるちゃん、お友達が来たんだから、まずはお出迎えなさい。だからあんたは、」


「わあーった、わかったから、それ以上はやめてくれ。とにかく裕司、いらっしゃい。とりあえずついてきて。部屋まで案内するから。」






「ふぅ、すまんな。あの人、ちょっとうざいんだよ。部屋の近くに母ちゃんはあまり近づかないから、もう安心してもらってもいいぞ。」


ここは安全圏内のようだ。まあ、初対面の人の前だと、緊張するしな。


「よし、まずは、お兄さんを呼んできてもらってもいいか?そうしたら本題に入るか。」


「いいぜ。兄貴は、隣の部屋だから、すぐに連れてくる。」






待つこと数分、高橋がお兄さんを引きずって戻ってきた。


「ごめん、ごねて中々来なかったから、引きずってきた。」


「お、おう。ありがとな。」


俺はお兄さんの方を向いて、声をかけた。


「こんにちは、お兄さん。はじめまして。あなたにしか、お願い出来ないことがあります。」


「んん?誰だ、アンタ。どっかで聞いた声してんな。 って、はあああ!?え、何でアンタがここに居んの!?」


予想通りの反応だ、お兄さんは俺の配信を見てるらしい。


「兄貴、裕司を知ってんのか?」


「知ってるも何も、この人の配信を見つけたのは俺だぞ。照人、クラスメイトってこの人のことだったのかよ。全く、早く言ってくれよ。」


「なんのことかわかんないけど、俺はこいつがうちに来たいって言うから受け入れただけだぞ?」


「それでもいい!とにかくありがとう。それで、俺にしかお願いできないことってなんだ?」


やっと本題へ入れる。


「直球に言うと、俺はあなたにダンジョン攻略の手伝いをしてほしい。」


「いいのか?俺で。まあ、できることは死力を尽くすけど、俺にできることなんて、そんなにないぞ?」


「ああ、大丈夫。あなたにしてもらうことは、カメラマンと俺の背中を守ってもらうことだけです。」


「結構大切なことじゃない?なにさも大したことじゃないかのように言ってんの?」


バレてしまったか。大仕事をたいしたことないように言って、言いくるめる作戦だったのだが、失敗してしまった。

それなら、最終手段を使うまでだ。


ズザザッ


「どうか、お願いします。あの状態で配信を続けるのは、難しいので誰かに協力してもらわなければいけないのです。それは、あなたにしか頼めないことなのです。」


最終手段、その名も土下座、頭を床にこすりつけてお願い(脅迫)することで、相手に認めてもらうことである。


「え、ええ、、、」


俺は引かれても土下座をやめない。そうすればいつかは、


「はぁ、わかった。まずは今日だけさせてもらって、俺が今後もしてもいいと思ったら、決めさせてもらう。」


ヨシ!後はなし崩し的に続けざるを得ない状況を作れば、完璧だ。


「よろしくお願いします。それでは早速、この家の庭にあるダンジョンに入ってみましょう。」


「お、おう。てか、庭に開いた穴のこと、知ってたんだな。」


「はい。それを目的に今日はここまで来たので。」


やっとダンジョンへ入れる。

これまでのは前座でしかなかったからな。





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