聖女オーレリアと悪役令嬢なる魔女の夢~辺境でのんびりとやり直しを望む、とある貴族の選択~
羽羽樹 壱理
聖女オーレリアと悪役令嬢なる魔女の夢 ~辺境でのんびりとやり直しを望む、とある貴族の選択~・1
「イギィイイイイイイーーーッッ!!」
……見目麗しい令嬢のあげた奇声に、オーレリアは目を横棒のようにして、頬に一滴の汗を浮かべていた。
さて、どうしたものだろうか。
両者の考えはそれぞれに正しさがあるように思える……。
顎に指を当てて、まだ幼き皇女は、苦悶の表情を浮かべる【魔女】を見つめながら考えを巡らせた。
◇
水の国、アリアメル連合。
中立の国、ウィザ連合。
原油の国、パレミアヴァルカ連合。
帝国、オルエヴィア連合。
戦鬼の国、イグニュス連合。
技巧の国、アルファミーナ連合。
祈りの国エレアニカ連合の、周辺各国。
この世界には、【領域】と呼称される領地があって、そこをいくつかの貴族家が集まり、所有する地を管轄、支配している。
そして領域は必ず、一つの国に属している。国とはつまり身の寄せ合い、領域同士を結ぶ結盟、これを【連合】と呼称している。
ただしかし、話の舞台である【祈りの国エレアニカ連合】における小さな領域については、世界でただ唯一の例外的な領土である。
エレアニカ連合は、【エレアニカの教え】と呼称される、大きな宗教を擁する象徴的な国だ。
その平等的な教えの
アイリーンの一族という。
その一族の末裔たる血統者、名をオーレリアという。
アイリーンを示す、人ならざるモノの如き、発色の良い銀色の髪を継承して生まれた少女は、生まれながらに
そして、ここはエレアニカ連合【オーレリア領域】。彼女の生誕の瞬間、彼女の母【ミリアイリス】を冠した名から、その小さな地は【オーレリア領域】と名を改めたのだ。そう、ここは、オーレリアという名を世に象徴顕示する、そのためだけの領土である。
「では、今日はご相談ごとが初めにあるということですね? いえ、大丈夫、スケジュールの調整をお願いしまして」
洗練された落ち着きと、淡い
発色する銀色の髪。
手足のスラリとした
小さな、整った顔立ち。
それらの――まだ背も小さな全体容姿。
未だ、若干九歳の少女であった。そのような子が、一流の社交人と遜色のない、慌ただしい朝の支度を過ごしている。
「ラリアヴェール領域の、ロズワード家様ですか。――【魔女】? その女性、カティア様は……魔女と呼ばれているのでして? ふぅん――」
オーレリアに相談が舞い込むということは、母の元に届けられる程ではないにせよ、よほどのことである。
オーレリアはお付きの執事――この世界では、屋敷に仕える使用人は男女問わず《執事》と呼ばれる――から、一枚の紙面を受け取った。
「ルディールインス領域での講演、続いてアルタシア領域の大聖堂への挨拶、最後にお母様との少しの時間……。――ふむ、これらをあとに倒しての予定となると、なるほど、それは重要であるようですね。分かりまして」
そして、オーレリアは象徴に相応しい、
「九歳の私の人生に出来る、限りを尽くしまして、今日も問題に向き合いましょう」
彼女の
ミリアイリス・アイリーン・ルミナルクスの眼からはもはや見えない視点から物事を解釈することを宿命とした、【ジュミルミナ】の役割を担う、次代の【ルミナルクス】を継ぐ定めにある少女である。
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