ぬいぐるみに、魂を

かえで

第1話 いつもの、毎日

「ごはんだよ~~。」

そういうとひょいっと僕を持ち上げた。

美優だ。崎本美優さきもとみゆ。年中のみつあみの可愛い女の子。優しいから、好き。

「ったく。ガキだな。小学校行ったときにいじめられるぞ。」

そういうと僕を美優から奪った。

智樹か_!崎本智樹さきもとともき。小5のきわめて普通の髪形の男子。なんで僕の言葉が厳しいって?コイツは乱暴だから嫌いなんだよっ!


へ?何で軽々と持ち上げたり、奪ったりできるかって?奪うって言い方はおかしいんじゃないかって?

いや、間違いじゃないんだよ。僕は__


ぬいぐるみだから。


でも、ただのぬいぐるみじゃない。僕は、生きている。

簡単に言うとなんだ。

何かにより、魂が入ったぬいぐるみ。

名前は、ココ。名前を付けてくれたのは、美優。

見た目は、中くらいのサイズのくま。

美優の母_崎本絵理奈さきもとえりなが美優の性別が決まった時に美優のために買ったもの。その時、智樹はその時6歳だった。

智樹は、僕をよく思ってない。嫌いなのかもしれない。

年少に美優がなるまではかわいく見ていた。

でも、美優と大喧嘩して仲が悪くなり、僕を乱暴に扱うようになった。

仲の悪い兄妹ってことだ。

美優は、いろんなことを教えてくれる。幼稚園で習ったことをすぐ教えてくれる。

優しくて、大好きだ。


僕には、もう一つ特徴がある。夜にだけ動き出すという事だ。

昼は、簡単に言うと封印されている状態。夜_18時から動き出すことができる。夜18時にはみんな起きているから、止まっているのは大変だと思うだろうが、基本、呼吸を必要としないため、簡単だ。制止するのも、もう慣れた。


美優が僕を椅子に座らせる。

「ちょっと待って~」

美優はたたたとおままごとグッズが置いてあるおもちゃのキッチンへ向かうと、僕のご飯を作ってくれる。

まあ、僕は1日1食、わたを食べるだけで生きていけるのだが,,,

だからじっと見ているだけ。僕の手を美優が動かして食べているようにしている。

「おい美優。コイツも食わしとけ。」

「なに、お兄ちゃん。」

ポイと投げたのはピーマン。美優が決めた僕の好き、嫌いな食べ物の嫌いな食べ物に当たる食べ物だ。

「お兄ちゃん!ココがピーマン嫌いなの、知ってるでしょ!」

「好き嫌いなく食べねえとダメなんだぜ~」

「好き嫌いだらけのお兄ちゃんに言われたくない!」

「あん?今なんつった!」

「お兄ちゃんは偏りすぎの好き嫌い男って言ってんの。」

「はぁ!!なんだとテメーー!」

とまあ、毎日こんな感じ。これにも、慣れた。

ホントにケンカが多い兄妹だ。

僕はご飯をじっと見つめる。

本当に丁寧に作ってくれている。

ふつうにある野菜などのおままごとセットのものを組み合わせて、サラダやハンバーグなどを細かく、本物の料理のように作ってくれている。

将来良い子になるよぉ!!


「ふんっ」


ケンカに負けたのだろうか??

ツカツカと僕の方へ歩み寄ってくる。

僕のお皿の上の食べ物をとるとピーマンを投げ込む。

や・な・や・つ

「あーー!智樹!!」

「呼び捨てすんなバカ美優!」

「あー!言ったわねーーーー!!!!」


僕の周りにも、いろんなぬいぐるみがいる。と言っても、夜になっても全然動かないから多分生きてない。夜になると僕は隠してあるわたを食べて智樹のおもちゃで遊んだりしている。


これが、僕の毎日。でも、さすがに飽きてきた。

しゃべることは出来るのにできない。智樹には乱暴に扱われる。


僕は思う。 いつか、美優と話したい。

そんな革命を、起こしたい。




















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