第35話 VSニヘル&マリオネッツ

紅玉烈火ルビーフレイム蒼玉激流サファイアラピッド翠玉烈風エメラルドエア黄玉迅雷トパーズサンダー斧石土豪アキシナイトアース! 五色結晶フィシスクリスタル完全収束コンプリート・コンバート! 収束された力を今、目の前の敵を消し炭にせよ!』

五色完全掃射フィシス・フルバースト!」


 ニヘルは詠唱し終えると懐から五色の宝石が飛び出し、一つに収束して極太レーザーのように放つ。

 俺はそれを見て即座に回避し、先ほどいた場所が一直線の焼け野原が出来上がった。

 かなりあぶねぇな! それにあいつも転生者だろうな。

 天魔と協力している事とさっきの砲撃で確信した。

 するとニヘルはへらへらとしながら言う。


「アハハ、もしかしてビビっているの? あんたの雑魚チートと私の最強チート・宝石の王クリスタル・ロードの差に気づいて絶望したの?」


 ニヘルはそう言いながら、次の砲撃に向けて構える。

 あいつが言う宝石の王クリスタル・ロードは宝石を使った魔法を放つことはできる代わりに、大量の宝石を消費しないといけない。

 だからあいつはゲーツ以外の家族をマリオネッツの権能で操り、好きに宝石を手に入れることを確したんだ。

 ニヘルがゲーツの家族を操った理由を見つけたが、この状況がどうにかなるとは考えにくい。

 だけどさっきの攻撃は詠唱と、もう一度放つためのチャージ時間が長く、隙をつけば勝率はあるだろう。

 俺はそう思いながら風魔刀とトンプソンコンテンダーを構え、さっきの放たせないために接近する。

 ニヘルは近づかれたことに毒づく。


「チッ、近づいてくるんじゃないわよ!」


 ニヘルはそう叫びながら懐から結晶を取り出し、魔力を込めて詠唱する。


『透明な輝きよ、我が魔力を糧に敵対者を撃ち殺せ!』

結晶弾クリスタルショット!」


 詠唱し終えると結晶が弾丸として、俺に向かって襲い掛かる。

 だけど俺は風魔刀に魔力を込めて詠唱する。


『風のエレメントよ。我が魔力を糧に、風を刃にまとわせよ!』

疾風付与アタッチ・エア!」


 詠唱し終えると風魔刀の刃に疾風がまとい、俺は襲い掛かる結晶の弾丸に横一文字切りを放つ。

 すると疾風の刃が結晶の弾丸を弾き飛ばし、その一つがニヘルの肩に向かっていく。

 それを見たニヘルは慌てて回避し、風の玉で俺から少し離れる。

 俺はニヘルが慌てた様子を見て考える。

 あいつはどうして慌てて回避したんだ? 多少かすってしまう程度の傷になると思うが、腕を傷ついたらチート能力が消失・あるいは能力低下になってしまうのか?

 そう思っていると、ニヘルは腰に下げている黒い龍滅剣バルムンクを構える。

 俺は指をさしながら言う。


「オイオイ、何で逃げ腰になっているんだ? もしかしてその自称最強チートにも弱点があるのか?」

「ハッ、そんな負け惜しみ知ったこっちゃないわ!」


 ニヘルは俺の言葉を鼻で笑い、黒い龍滅剣バルムンクを構えながら襲い掛かる。

 どうやらニヘルは近接戦闘に取り掛かろうとしているが、相手がかなり悪かったな。

 俺はそう思いながら、黒い龍滅剣バルムンクをトンプソンコンテンダーと風魔刀をクロス状で受け止め、片足の指先でニヘルの鳩尾みぞおちを蹴り抜く。

 するとニヘルは鳩尾みぞおちを蹴り抜かれて、後退しながら苦しむ。


「ゲホゲホ! な、何なの今の蹴り……結晶でガードしたはず……!?」


 ニヘルはそう言いながら混乱して苦しむ。

 マァ、さっきの蹴りは肉体全強化をフルで発動したから、よくてもろっ骨三本程折れたんだろう。

 俺はそう思いながら、混乱しているニヘルに向かって言う。


「お前は俺の持つチートが弱いと思っているけど、肉体全強化は肉体をフルで強化することが出来て、さらに俺の鍛錬によって蹴りの威力は砲弾そのものだ」

「ハァ……!?」


 それを聞いたニヘルは驚愕し、俺は驚くニヘルを見下す。

 コイツ、もしかしてゲーム感覚で暴れ、予想外に対することに耐性がないんだろう。

 ニヘルの精神に呆れつつ、俺はゲーツの方を向く。

 マリオネッツはゲーツの怨恨の龍滅姫カースド・クリームヒルトに苦戦しており、ゲーツは龍滅剣バルムンクを構えて言う。


「さぁ、貴様ら天魔の狙いはなんだ? 目的は真理の王ロード・オブ・ワンなのか?」


 ゲーツはそう言いながら質問するが、マリオネッツは怒りを込めて叫ぶ。


「弱くてもろい人間どもの分際で……調子に乗るのもいい加減にしてください!」


 マリオネッツはそう叫ぶと、指先から鋭い糸をゲーツに向けて振り下ろす。

 しかしゲーツは慌てたりせず、龍滅剣バルムンクを構えて詠唱する。


『第四伝承解放。我が祖の栄光は財欲の邪龍を討伐し、民に平穏を与えた者はジークフリート。邪龍を滅ぼし、蒼き炎によって邪念を祓いたまえ!』

龍滅剣バルムンク超加速オーバードライブ!」


 ゲーツは詠唱し終えると龍滅剣バルムンクに蒼い炎を収束し、超エネルギーの刃を鋭く振り下ろす。

 それを見たマリオネッツは魔力で固めた爪で防ごうとするが、膨大な熱エネルギーに耐え切れず、爆裂と共に叫ぶ。


「そ、そんな馬鹿な――!?」


 マリオネッツはそう叫びながら爆音に包まれていった。

 よし、天魔の方は解決したし、あとはニヘルをぶっ飛ばして学園戦争を終わらせるのみだ。

 そう思いながらニヘルの方に向くと、ニヘルは俺がまるで化け物を見る目で叫ぶ。


「来ないで……来ないでよ、化け物! イカレタ化け物!」


 俺はそれを聞いて頭を掻く。

 化け物ねぇ、この世界では聞いてこなかったが、前世の世界だと俺のことを化け物や人でなしなど、侮辱してきたからな。

 だけど他人を嘲笑えるお前の方が人面獣心なんだよ。

 俺はそう思いながら秘密を絞り出そうとするが、ニヘルは結晶を取り出して放とうとする。


「死ねぇぇぇぇ!」

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