第22話 理不尽はぶち壊すためにある

 受験生の約半数が迷路を突破し、この後の面接について話し合う中、フォンは不敵な笑みを浮かべながら考える。


(見た感じ……ふざけた小僧はいなさそうだな。それもそうだ、いかにも間抜けなアーク家の末っ子には豚に真珠だろう)


 フォンはそう思いながら、ルイがいないことを内心嘲笑う。

 それと同時に大爆発が起こり、それを聞いた受験生たちは驚きだす。


「いきなりなんだ!? 爆発か?」

「でも、かなりすごい音だったよね?」


 受験生たちはそう言いながらざわめき、フォンは爆発音を聞いて考える。


(爆発だと? 確か送ったのは爆撃を使わないはず……まさか!)


 フォンは最悪の事態が脳裏を過ぎ、今すぐ中の様子を見ようとする。

 しかし茨の壁がぶち抜かれ、そこから重々しく長い筒状の武器レールガンを背負ったルイやエステルたちが出てきた。

 それを見たフォンはあごを外し、ルイとぶち抜かれた壁を見て固まる。




△▼△▼△▼




 俺は背負ってあるレールガンを見る。

 レールガンの銃口はドロドロに溶けており、もう一度放つのは難しそうだ。

 ふむ、これは改良の余地があるな。

 そう思っていると、後ろからエステルとリザが恐る恐るやって来て呟く。


「わぁ、初めてダンジョンの壁を貫く所見たよ……」

「うん、本当に色々とすごいね……」


 俺はそれを聞いて少し反応に困る。

 一応こうなるかもしれないって思っていたけど、俺を怪物のように見るなんて、少し反応に困るな。

 なんて思っていると、フォン先生は俺に指さして叫ぶ。


「貴様、何をやっているのだ!」

「ハイ、壁をぶち抜いただけですけど?」


 俺はフォン先生の質問に真面目な表情で答える。

 するとフォン先生は青筋を立てて叫ぶ。


「ふざけるな! 確かに脱出せよとは言ったが、壁を貫いて行けとは言っていない!」


 フォン先生はそう叫ぶと、他の受験生たちも俺たちに向けて叫ぶ。


「そうだそうだー!」

「迷路の壁をぶち抜くなんて聞いたことねぇぞ!」

「そもそも迷路とは!?」


 受験生たちの糾弾に俺は返答を考える。

 うぅむ、このままだと俺たちが悪者扱いになるけど、俺が言っても信じることは無理だろう。

 どうすれば受験生たちの怒りを治めるか考えると、エステルが前に出て叫ぶ。


「待って、これには事情があるの!」

「「……え?」」


 エステルの言葉に、受験生は驚きながら静かになり、それを聞いたフォン先生は一気に青ざめて叫ぶ。


「ナッ!? それ以上は――」


 俺はそれを確実に慌てていると見え、空間所持ストレージから鎖分銅を取り出し、慌てて止めようとするフォン先生の足を絡ませる。

 するとフォン先生は足が鎖分銅で絡まったことで、華麗に地面にダイブした。


「ガベッ!?」


 豪快に行ったと同時に、エステルが真実を叫ぶ。


「実は、フォン先生が『ルイを失格にさせないと、お前の親友を失格にさせるぞ』って脅されたの!」

「「ナッ、何だってー!?」」


 エステルから放たれた真実に、受験生たちはそれを見て仰天し、俺は驚く受験生たちを見て頷く。

 分かる分かる、俺も最初は驚いていたけど、慌てて止めようとしていたから、黒確定だからな。

 そう思っていると、フォン先生は地面から立ち上がり、鼻血を垂らしながら叫ぶ。


「キ・サ・マ・ラァ、よくもこの俺様に泥をかぶせやがって! もう許さねぇぞゴラー!」


 フォン先生はそう叫ぶと、樹木でできた杖を掴んで詠唱する。


『闇のエレメントよ。今一度、屍を我が軍門に下せ!』

上位屍生成アーク・クリエイトアンデッド!」


 詠唱し終えると、地面から大量の屍骨鬼スケルトン白骨剣士ボーンソードマン、その上槍と盾を持つ屍骨鬼スケルトン白骨騎士ボーンナイトが大量に出てきた。

 それを見た受験生たちは驚きだす。


「あれって屍骨鬼スケルトン白骨剣士ボーンソードマンに、白骨騎士ボーンナイトだと!?」

「じゃあ、さっきの子が言っていた事は本当だったってこと?」

「今更気づこうがもうどうでもいい! 貴様らを殺せば俺様の人生バラ色確定なんだよ!」


 受験生たちの驚きに対し、フォンは醜悪な笑みを浮かべながら屍骨鬼スケルトン軍団を襲わせる。

 クソッ! あいつ、初見じゃわからなかったけど、まさかあそこまで下衆だったとは思いもしなかったな。

 俺はそう思いつつ、空間所持ストレージからもう一つの銃器を取り出す。

 それは一言でいえばとても武骨で、六本の銃身を持ち、鈍い灰色が陽光を反射する。

 受験生たちはそれを見てあ然とするが、俺がこいつに魔力と7.6mmNATO弾を装填して叫ぶ。


「お前ら、早く伏せないと死ぬぞ!」


 俺の叫びを聞いて、エステルとリザを含めた受験生たちは慌てて伏せ、フォンはそれを見て即座に多重結界を展開する。

 しかし、伏せない時点でもう遅い。

 俺はそう思いながら、フォン以外伏せているのを確認し終え、襲い掛かる屍骨鬼スケルトン軍団に向けて引き金を引く。

 すると銃身が回転し始め、六つの銃口から数多の弾丸が放たれ、屍骨鬼スケルトン軍団を容易く葬っていく。

 受験生たちは必死に耳をふさぎながら伏せ、エステルは結界を展開して受験生たちを守っていた。

 おっ、エステルナイス!

 俺は心の中でエステルを称賛しつつ、襲い掛かる屍骨鬼スケルトン軍団を葬っていく。

 この武器はM134・別名ミニガンはGE(ゼネラル・エレクトリック)社が開発した武器で、アメリカ軍が実用している銃器である。

 本来は重量100kgだが、肉体全強化を発動していることで、振り回すことだって可能だし、充電は魔力に変え、ベルト給弾は空間所持ストレージ内に収めればいつでも使えるから問題なしだ。

 そう思いながら、屍骨鬼スケルトン軍団を全て粉パウダーにしていき、これ以上召喚されないためにフォンに向けて無力化させる。


「グォォォォォォ! この俺様がガキに負けるものかァァァァァ!」


 フォンはそう叫びながら、必死に7.6mmNATO弾を多重結界で防いでいくが、数多の猛攻に結界が耐え切れず、そのまま弾丸の雨をもろに受けて叫ぶ。


「ウギャァァァ!? 嘘だ、この俺様が負けるわけが――」


 フォンはそう叫びながら、弾丸の雨を受けて吹き飛ばされる。

 俺は引き金を引くのをやめると、M134は銃口が赤くなりつつもゆっくりと止まり、フォンの生存を確認する。

 フォンの体はズタボロだが、息をしているから急所に当たらないようにしていたんだな。

 俺はそう思いながらM134を空間所持ストレージに収め、トンプソンコンテンダーをフォンの額に突き付けて質問する。


「さて、どうして俺を失格にしようとしたり、天魔を使ってエステルとリザを殺そうとしたり、その訳をきっちり話してもらうぞ?」


 俺はいつでも引き金を引けるように指をかけ、鋭く睨む。

 しかしフォンは歯を食いしばって言う。


「黙れ、この貴族の恥晒しの息子がー!」


 フォンはそう叫びながら、懐に隠しているナイフを取り出し、俺に向けて刺そうとする。

 チッ! こうなったら、最悪やりたくなかったけど、こうなったらこの場で始末する――!

 俺はそう思いながら、地震の身を守るためにトンプソンコンテンダーの引き金を引こうとする。

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