22. 間違えて生おっぱい

 いつものホームルームの最後。


「あとでオパールくんは職員室へ来るように」


 また、ハスリア先生に呼び出された。


「ハスリア先生、その生徒をどこへ?」


 ハスリア先生に連れられて資料室へ行く途中。

 口髭の中年紳士——この学校の校長先生に不審がられてしまっている。


「ええ、少々資料室へ」

「ふうむ、この前も連れ込んでいませんでしたかな?

 生徒と逢瀬を重ねている、なんて噂が立つと良くないのじゃが」


 おうせ?

 『おうせ』ってなんだ? あとで先生に聞いておくか。


「俺、部活の道具を資料室に保管したいと思って、先生にお願いしました」


 口から出まかせを言う。


「というわけで先生、オカルト部室から道具を取ってきます。資料室を開けておいてください」

「そうだな、わかった。『ちゃんと持ってくる』んだぞ」

「ふうむ」


 俺がオカルト部の方向に向かって歩き始めると、校長もその場を離れて行く。

 やっぱ生徒と教師が誰もいない資料室で何度も会っているのは怪しいよな。

 別にやましいことはしていな……していたわ!

 前回も前々回も、資料室でハスリア先生のおっぱいを揉みまくっていたわ!



 ◆ ◆ ◆



 オカルト部の部室。

 アホメットがクッキーを食べながら窓の外を眺めている。

 こいついつも何か食べているな。


「おいアホメット、適当にオカルトっぽい道具をいくつか持って行くぞ」

「ああー、いいぞー。これとかこれとかおすすめ」

「どれでもいいんだよ」


 なぜか渡されたいくつかのおすすめ品を手に、資料室へ向かう。



 ◆ ◆ ◆



「ハスリア先生、部活の道具を持って来ました」

「また色々と持って来たな。オカルト研究部だったか?」

「いえ、オカルト部です」


 あれ? 『オカルト部』とは別に、『オカルト研究部』があるのか?


「でも、本当に道具を持ってくる必要あったんですか?

 その場しのぎで言ったことだったのに」

「ここに道具があった方が、きみが頻繁に出入りしていることの信憑性に繋がると思ってな」


 なるほど?


「さて、きみに聞きたいことがある」

「なんですか?」

「きみのパーティ、女の子だらけじゃないか。

 あの中の誰かと付き合っているのか?」

「えっ? いえ、付き合っていません」


 おっぱいは揉んだけど。


「あの中じゃなくても、付き合っている彼女とか、いるのか?」


 てっきり学園のスキルの謎について話すのかと思ったら恋バナが始まった。


「い、いえ。いませんけど」

「そうか、なら安心した」


 安心って、まさか先生、俺のことが好きとか……?


「じゃあ、わたしのおっぱいを揉んで欲しい」

「え? 話がつながらない……」

「だからだよ。

 きみは理解力が低く、少々知力が足りていないからな。

 難しい話を始める前に、わたしのおっぱいを揉んで知力をレベルアップしておいてもらおうと思ったんだ」

「それと俺に彼女がいるかどうかって、どう関係が?」

「彼女がいたら、別の女のおっぱいを揉ませるのは申し訳ないだろう。

 だが、いないなら安心して揉んでもらえる」


 俺に知力がもっとあったら、最初の言葉でここまで察することができたのかもしれない。

 だが先生、その貞操観念は諸刃の剣だ。

 そういう考えの先生が俺におっぱいを揉ませるということは、先生にも彼氏がいないことの証明になる!

 言わないけど。


「さあ、早く!」


 先生が胸を突き出す。

 うう、『不幸なハズレスキル持ちを増やさないため』という使命感がなければ、逃げ出したいサイズだ。

 俺は仕方がなく先生のおっぱいに手を伸ばし、揉み始める。


「前回と同じくらいの回数は揉んで欲しい。あ、ただ、優しくね……」


 先生、揉まれたがっていないか?

 あ、もしかしておっぱいの若返えり効果も期待している?


——たぷんたぷんたぷんたぷん!


 相変わらずの重量感。


「いい……」


 先生、これがいいんだ?


——たぷんたぷんたぷんたぷん!


 前回は下から揉んだから腕がつらかったが、今回は対面だから多少は楽だな。


——たぷんたぷんたぷんたぷん!


 よし、やっと終わった!


「はい、先生。たしか前回もこのくらいの回数だったと思いますよ」


《ぴー! 24回、モミモミを確認しました。知力を36レベルアップします》


「え……もう、終わり?」

「終わりですよ、先生。物欲しそうにしないでください」

「も、も、も、物欲しそうになど、していないが」


 先生は顔を紅潮させ息を荒げている。

 男子生徒に胸を揉ませて恍惚とするなど、本来、教師としては言語道断だな。

 だがやりすぎると俺の知力が上がっても、前回のように先生の方が話ができなくなってしまう。

 ここは淡白にこの辺りが引き際のはずだ。


「先生。俺を呼び出したということは、調査に進捗ですよね」

「あ、ああ。ちょっと待って、呼吸を整えてから……」

「先生、早くしましょう。俺の手の、おっぱいの感触が消えないうちに」


 でないと、もう一回揉み直しになってしまう。


「では先生の呼吸が整うまで、俺の方が先に進捗を伝えますね。

 まず、『ハズレスキルを紛れ込ませているのが誰なのか』については、分かっていません。

 ただ、俺自身の『おっぱい揉んだらレベルアップ』について、その後判明したことがあります」


「まず——

 ・スキル発動条件の、揉む対象は女性のおっぱいであること。男性は無効

 ・揉む回数が増えると、効果が上がる

 ・おっぱいと俺との相性により、どのステータスがレベルアップするか決まる

 ・副次的な効果として、癒し効果があり、揉まれたおっぱいが癒される

 ・おっぱいを揉んだときの状況により、各種モードが発動する

  効果はモードによって異なる

 ——こんなところですかね」


「きみ、よく調べたね。

 わたしの調査した資料には載っていなかったことばかりだ。

 どんな文献を漁ったんだ?」


 やべ!

 いろんな子のおっぱいを揉んだ実体験です、とは言いにくい。


「ほら俺、オカルト部なので、イタコで呼びました!

 過去の『おっぱい揉んだらレベルアップ』スキルの持ち主の生き霊を」

「生き霊!? それは誰だ?

 もう少し詳しく話を聞きたいな。

 また呼び出してもらえないだろうか」


 やべー、やべー!


「えっと、一回しかできないイタコなんです。

 スキルの詳細を聞くのが精一杯で、誰かまで聞きませんでした」

「そうか……」


 勢いで誤魔化したが、先生、『イタコ』って部分を信じたのか?

 まあ、この学園なら本当にそういう系統のスキルを持っている人がいてもおかしくはない、のか?


「『彼女の胸を揉み続けたが、レベルが1つ上がっただけ』って過去のスキル持ちの先輩いましたよね?」

「ああ、資料に書かれていた人物だな」

「あれ、彼女が貧乳だったと思うんですよ。

 貧乳は、たくさん揉んでも全然レベルが上がらないようです」


 話の信憑性を増すために、具体例を挙げてみる。

 これも実体験だ。あの絶壁少女——タテロルのおっぱいを揉んだときの。


「そういうことだったのか」

「で、先生の方はどうなんです?」


 よし、相手が納得したタイミングで話を切り替える。


「わたしの方は、この学園に限らずスキル全般の話になってしまうが——」


 そう前置き、先生は続ける。


「スキルは、国民がより暮らしやすくなるように、国選の割合で各スキルが指定されている。

 モンスターに対抗するための各種スキルの他に、クラフト系のスキルや、生活に役立つスキルなどだな。

 それとは別に、地域ごとの——主に各学校ごとに割り振るスキルの枠がある」

「地域ごと?」

「そうだ。

 たとえば雪の多い地方にある学園なら、除雪スキルが追加されていたりする」


 なるほど。

 うちの学園では冒険者を多く輩出しているから、冒険者向きのスキルを多く割り振っているのだろう。


「きみのスキルは、国選スキルに含まれていたのか、地域ごとのスキルに含まれていたのか。

 それがわかれば、犯人を絞り込めるだろう」

「その言い方だと、まだ絞り込めていないのですね」

「それと、もう一点」


 先生は俺の目の前に人差し指を立てる。


「『いつから、ハズレスキルが紛れ込むようになったか』だ。

 わが国では、100年ほど前から学生にスキルを付与するようになった。

 それまでは一般的に人々はスキルを持っていなかった。

 このあたりは歴史の授業でやったな?」

「はい」


 『はい』と答えつつも、実は覚えていない。

 今は知力が高まっているが、授業を受けている最中は知力1だからな……聞いていても理解していなかったのだろう。


「別の大陸で体系化されたスキルが、100年前に伝来し、わが国でも取り入れたのがきっかけだ。

 導入当初は貴族が金で有能なSランクスキルを買い集め、平民はCランク以下のスキルしか手に入れられなかった。

 そのために、大きな格差ができてしまった」


 近代化に伴い、今は貴族制度は廃止されている。


「その格差を埋めるために——あみだくじ方式が採用されたのですね」

「そうだ。

 当初は別の抽選方式だったのだが、貴族が金で買収して不正にSランクを引き当てていた。

 そのため、みんなが見ている前でくじに名前を書き、みんなが見ている前で線をつけ足し、みんなが見ている前で公表する『あみだくじ』形式が最適解となった」


「その歴史のどこかで、ハズレスキルが意図的に混入されるようになった、と……」

「それが『いつなのか』は、分かっていない。

 100年以上生きている証人がいれば別だが、あり得ないしな」

「あっ」


 アホメット……あいつのおっぱいを揉んだとき、100年以上若返ったとか言ってよろこんでいたよな。


「どうした?」


 いや、アホメットの存在は言わない方がいいような?

 代案でごかますか。


「俺たちの調査の仲間に引き込みたい人物がいます」

「それは?」


「転校生のスミレです。

 彼女は、入学式時点では学園におらず、後から別の大陸から来ました。

 つまり、学園のあみだくじに関与してなく、なおかつ国のスキル選別にも確実に関与していない人物です」

「ふむ」

「それに、別大陸のスキルの知識を持ち合わせている可能性があり、それが何かのヒントになるかもしれません」

「たしかに、協力が得られれば頼もしそうだ」

「彼女はオカルト部員です。

 今日、ここにオカルト部の道具を置いたことが幸いしましたね。

 ここに来てもらっても不自然ではありません」

「ならば次回の進捗報告の際には、是非とも彼女にも参加してもらおう。

 ——きみ、どうした?」


 俺は左手で右腕を押さえ、かがみ込んでしまった。


「うおお、お、俺の右手がッ!!」

「右手がどうしたんだ!?」

「長く話をしすぎました。残念ですが時間切れです……」

「なに!?」

「先生のおっぱいを揉んだ感触が、右手から消えました。

 左手は既に消えています」

「は?」

「おっぱいの感触が消えると、レベルアップも元に戻るんです」

「えええ!? きみのステータス・オープン!

 ほんとだ! 知力レベル1に戻っている!」


「せんせえ、むずかしいおはなしをつづけるには、おっぱいもみもみの『ほきゅう』がひつようです」

「きみ、喋り方がつたなくなっているぞ!?」

「おっぱい」

「語彙もなくなっているぞ! 深刻だな」

「お、おっぱいを……」


 知識の波にもうろうとして、おっぱいに向かって手を伸ばす俺。


「わ、わかった、ほら!」


 それを見かねた先生は、あわてて片方のおっぱいを出した。

 え?

 出した?


「あっ! 間違えた!!」


 だが、伸ばした俺の手は止まらない。


——たぷん!


 な、生!?

 先生の、生おっぱいの感触! うそだろ?


——たぷんたぷんたぷん!


 うそじゃないだと!? やわらかっ!

 なんで!?


《ぴー! 4回、なまなまモードでモミモミを確認しました。

 知力を6レベルアップします》


 と同時に、俺は制服の上から銀色のビキニアーマーを身につけていた。


「うぅ、もう、おっぱい、しまっていいか? しまう……」


 そういうと先生ははだけていたシャツを直し、おっぱいを隠した。


「ぐす……なんか、おっぱいと言いながら助けを求められたら、お乳をあげないといけないのかと焦ってしまって……」


 いつもなら「なんでだよ!」とツッコむところだが、先生本気で凹んでいそうだ……やめとこ。


「今日はもう、お開きでいいか? くれぐれも、このことは秘密に……」

「誰にも言えませんよ」


 言えませんよ、まじで。


 ……次に進捗を報告する機会には、スミレも同伴か。

 快く引き受けてくれればいいのだがな。


————

次回、お菓子をくれなきゃ……?

お楽しもみに!

————

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