21. 温泉おっぱい大豊作

 林間学校の宿には、露天風呂があるらしい。

 俺たちは宿に戻る山道で、その話題で盛り上がっていた。


「楽しみだね! オパール!」

「だな! 今日は疲れたから、ゆっくり温泉に浸かりたいな」

「オパっちも、あーしらと一緒に入れたら良かったのにね〜?」

「いいわけないだろ!」

「ここの温泉、お肌すべすべ、肩こりも改善される効能があるらしいわ」


 肩こりという言葉に、全員が反応する。

 こいつらみんな、重そうだしな……。


「効能といえば、聞いてよ!

 あーしの雷撃を威力よわよわで撃って、電気風呂できることを発見したよ!

 名付けて『サンダーホットスプリング』!

 羨ましいっしょ?」

「あたしだって、炎のスキルでお風呂を沸かせるよ!」


 こいつら、スキルを便利に生活に使用しているな。

 俺のスキルは——『おっぱい揉んだらレベルアップ』は、私生活では使い所がないスキルだな……。



 ◆ ◆ ◆



 夕食後の宿、男子の大部屋に、がさつな声が響く。


「ぐへへ、林間学校は夜が本番! わかっているだろうな」


 ノーキンが仲間たちと何か相談している。


「もちろんでやんす!」

「露天温泉……女子風呂の覗きっすね!」


 覗き、だと!?


「フッきみたち、聞こえていたのだよ。覗きをする気かい?

 あわれなきみたちは女子のおっぱいなんて見たことがないだろうからね。

 ボクはもう見飽きるほど見たけど」

「うるせえ! ハナマール、てめえは邪魔すんじゃねえ!」

「邪魔だなんて、とんでもない。覗きは男のロマンなのだよ!

 ぜひとも協力させてくれたまえ!」

「話がわかるじゃねえか!

 よし、おまえも誘ってやるぜ!」


 ちょ、ハナマール! おまえもそっち側かよ!

 頭にきた!


「おいおまえら!」

「ぐへへ……なんだ? オパールおまえも仲間に入りたいのか?」

「違う。俺は覗きなんてしない」

「ちっいくじのねえやつだな!」

「チキン野郎でやんす!」

「ロマンのわからない男なのだよ!」

「おまえら、いくじとかチキンとかロマンとか関係ないだろ!

 そういうのは覗く側の都合でしかない!」


 わかってくれよ、おまえら!

 覗き行為には、覗かれる側——女の子の被害者がいるんだぞ?

 覗く側の都合だけで語っているんじゃねえよ!


「別に興味ないならいいけどよ、邪魔だけはするなよ」

「嫌だね。絶対に阻止する!」


 こうして、『男子連合』対『俺』の火蓋は切って落とされた。


 まず、風呂の時間までにやることは……男子側が俺が警戒するとして、女子側の協力も必要だな。

 ハスリア先生! 先生に伝えて協力を仰ごう!



 ◆ ◆ ◆



 だが、先生は見当たらない。

 うーん、廊下を歩いていた宿の人に聞いてみるか。


「ああ、その先生なら女生徒に誘われて温泉に行ったよ。

 しばらくしたら戻ってくるんじゃないかねえ」


 しまった! 出遅れた!

 すでに女子たちと先生は温泉に行っていたのか!


 ならば男子側から阻止するしかない。



 だが、こちらも手遅れだった。

 男子の大部屋はもぬけの殻。

 俺が先生を探してうろついている間に、温泉——または覗きに出て行ってしまったようだ!


 またしても出遅れた!

 浴場に急げ!



 ◆ ◆ ◆



「いよいよだな」

「ほう……この柵の向こう側が桃源郷——女子の温泉なのだね?」


 男子浴場の脱衣所に入ると、湯船の方からハナマールたちの声が聞こえてきた。

 俺も服を脱ぐ。

 慌てていたので着替えとタオルを忘れてきてしまったが、仕方がない。

 そのまま温泉に突撃する。


「やめるんだ! おまえら!」

「おや? どうあってもボクたちの邪魔をする気なのかい?」

「ぐへへ、この丸出し野郎が! 格好がつかねえんだよ!」

「これは……タオル忘れたから仕方がないだろ!」


 服を着たままで、ここに入るわけにはいかないしな。


「だが俺様たちは野郎に用はないぜ!

 我が筋肉よ、筋肉せよ! マッスル&マッスルズ!」


 ノーキンの筋力アップスキル!?

 なにをする気だ!?


「ノーキン! まさか柵を壊して女子を覗くつもりか!?」

「違うな。邪魔者をこうするんだよ!」


——バチコーン!!


 ぎゃっ!?


 反応できなかった。

 俺はノーキンの剛腕アッパーカットに吹き飛ばされた。


——バッシャーン!


 そして地面に……いや、落下した場所が温泉だったため、ダメージはなかった。

 助かった——!


「ええっ!? オ、オパール!? なんで空から!?」


 エレインの声。は? これってもしや?

 温泉から顔を出し、見回すと、おっぱい。

 おっぱい、そしておっぱいおっぱいおっぱい……!

 お、女湯!? 吹き飛ばされて柵を越えたのか!?


「きゃっ」

「ちょ、なんで!?」

「み、見ないで!」

「やはり、彼が悪魔!?」


 落下した周囲にいたのは、エレイン、レモン、ルーコ、スミレ。

 温泉の隅でパーティメンバーで固まって入浴していたところに、俺が落ちて来たのだろう。

 幸い、彼女たち以外の生徒には気付かれていないようだ。

 みんな慌てて胸を隠す。


「ご、ごめん! 俺、すぐに出て行くから!」

「オパール! 立ち上がったらオパールのが見えちゃう!」


 エレインが俺の股間を手で隠す。

 って、手が!

 エレインの手が、俺のに触れちゃっているんですが!

 そしてエレイン、俺のは隠さなくていいから、自分のを隠すんだ!

 そうじゃないと先っちょが見え——


「オパール、見てはいけないわ」


 ルーコが後ろから、両手で俺の目を隠す。

 せ、背中にルーコの生おっぱいが当たっている!?

 たしかにこれで俺は見えなくなったが、ルーコさん、おっぱいが当たっていることに気がついています?

 背中が、やわらかいのですが……!


「ちょ、ルーコ! それじゃ何も見えないって!

 いや、おっぱいが見たいとかじゃなくて、周囲も見えないから危な——」


 慌てて手探りで周囲を確認しようとした俺の手に、やわらかいものが触れる。


——ぽよ


 む、この感触は!

 生で触るのは初めてだが、わかるぞ!

 この揉み心地は、レモンのおっぱいだ!

 前に揉んだ時と違うのは、温泉に濡れてすべすべになった触り心地だな。


「ひゃっ!?」

「レモン、ごめん! 見えなかったから!

 わざとじゃないんだ!」

「え、なんで見えてないのに、あーしってわかったし……」


 やばい、揉み心地でわかるようになっているなんて、変態だと思われる!


《ぴー! 1回、ぬれぬれモード、なまなまモードでモミモミを確認しました。

 体力を1レベルアップします》


 まずい! なまなまモードということは!


 俺の体が光り、次の瞬間には黄金のビキニアーマーを身に纏っていた。

 股間丸出しで。


「おーい、どうした? 何を騒いでいる?」

「やばい、ハスリア先生が来る!」

「影よ、この者の存在を隠蔽せよ! ハイドンシーク!」


 ルーコがスキルを使う。


「これで、オパールの存在感は消えたわ。

 見つからないうちに、早く出て行って……」

「た、助かる!

 みんな、この埋め合わせは後でするから!

 あと、エレインは手を、そろそろ離して……」



 ◆ ◆ ◆



 大急ぎで男子浴場に戻る。


「ぐへへ、ここの柵の隙間に小さな穴を開けて……」

「やめろ!」

「げえっ! オパール!? 戻って来たのか!」

「って、きみ! なんだいその格好は!?」

「ぶはははははは!」


 ルーコのハイドンシークの効果は切れて俺の姿をみんな認識できるようだ。

 そう、俺の股間まる出し黄金ビキニアーマーの姿を!


「雷よ、効能を示せ! サンダーホットスプリング!」


——バリバリバリバリ!!


「ぎゃああああ!?」

「し、しびれるぅ〜!」


 手におっぱいの感触が残っている間に、レモンのスキルを借りる。


「これが電気風呂だ! 堪能しろよ!」


 こうして、やつらの覗き作戦は失敗に終わった。

 エレインたち女子のおっぱいを男子に見られることを阻止したのだ!


 ……でも俺が見てしまって、みんな、本当にすまん。


————

次回、先生がうっかりポロリ!

お楽しもみに!

————

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