23話

 あれから食事を残すなんて出来ないと気合いを入れて食べるわたしの姿を見て、余程気に入ったようだな。帰る際にはまた作って用意してやる、とアーシックに言われてしまった。

 国一番の資産家なだけあって料理人も超一流なのだろう、食事はどれも美味だった。なので非常に有り難い申し出ではあったけど、丁重に辞退した。既に一日の運動量以上のカロリーを接種したので正直、ドレスの下に着けているコルセットが苦しいのだから。カムバック、洋服。

 背が高いアーシックはやはり、食べる量も人より多いらしく山盛りに並べられていた料理が全て消えていた。どうやらアーシックの食べる量に合わせて、わたし達の食事も用意されていたようだ。


 「それで、どうだ? 我が家門自慢の料理は?」


 一番に食べ終わったアーシックは皆がある程度、食事を終えたのを確認してから口を開く。


 (へぇ~、オラオラ系のオレ様かと思ってたけど、意外と気を遣うタイプなのかも?)



 「は、はい。すごく美味しかったです! お気遣い、ありがとうございます」

 「同じく。さすがロッキー家よねぇ。素材までこだわってるのはすごいわ」

 「あっ! はい! とても美味でした! うっかり食べ過ぎてコルセットがキツくなっちゃいました!」


 アーシックの問いに二人が回答しているのに気がつくと、慌ててラビルも素直に答える。答えた後で後悔した。今のは明らかに淑女が言ってはならない感想だ。

 兄が居たら確実に注意されていただろう。


 「コルセットがキツく……? ……くっ、アハハハ! そんなの言う令嬢なんてオマエくらいだろ!」

 「なっ! そ、そんな笑わないでよ! じゃない、ください!」


 ラビルの淑女らしからぬ言動がツボに入ったらしいアーシックは大きな声で笑う。素が出てしまい咄嗟にタメ口で話しかけてしまったが、自分の笑い声でかき消されて聞こえていなかったようなのでセーフなはず。アーシック程ではないが、気付けばフェイズやジェイルも小さく笑っていた。


 「はー、笑っちゃった。ごめんごめん、女の子に対して失礼だったわよね。お詫びと言ってはなんだけど、今度はうちの領地にも遊びに来てちょーだい。サービスするわ」

 「す、すみません。私も笑ってしまって! 私も何かお詫びをしたいので、良ければ遊びにお越しくださいね」


 これを見せれば面倒な手続きなく家門の訪問が許され、かつ後継者である二人と面談も可能という、いわゆる顔パスが出来るカードを渡される。それならオレもくれてやる、と何故か追加でアーシックからももらった。


 (……な、なんか、わたしヒロインみたいな立ち位置になってない? き、気のせい、だよね?)


 断る理由が思い浮かばずに受け取ると三人が嬉しそうに微笑む。三種三様のイケメンにもはや、ときめきより眩暈がするラビルだった。

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