18話

 わたしは今、ガチガチに緊張していた。

 その理由はーー


 「オマエ達のようなヤツじゃ、一生目に掛かる機会もないだろうから思う存分、楽しんでいくがいい!」


 高らかに宣言して胸を張っているのは地の家門後継者であるアーシック・ロッキー。


 「アンタが作ったワケでもないのに、いちいちえっらそうなメンドーなヤツぅ」


 呆れたようなジト目でアーシックを見るのは風の家門後継者であるフェイズ・ドゥクル。


 「で、でも確かにすごい綺麗なお家です。それに、お料理も豪華です、すごいです」


 キョロキョロと辺りを見回して素直な感想を語るのは水の家門後継者であるジェイル・ミラルドン。


 目前に居る三人はとも兄曰く、兄と同じく恋愛小説のメインヒーローであるのも納得のすさまじく素晴らしい容姿をしていた。

 

 まず、地の家門後継者であるアーシックは落ち着いた紺の髪に瞳は大地を思わせる茶色。貧富の差で差別する所があり、勝気な性格が顔に出ていて俗に言うオラオラ系ののイケメン。


 次に、風の家門後継者であるフェイズは明るめな茶の髪に瞳は若葉のような深緑の色。家門自体が美容に精通しているのと、恐らくフェイズ自身もこだわりがあるのかこまめにコンパクトミラーで身だしなみを気にしている。目鼻立ちが元から美しいからか薄い化粧だけで相当な美人系のイケメン。


 最後に、水の家門後継者であるジェイルは淡い桃色の髪に透き通った水色の瞳。水源や国で唯一の港を管理する家門で、地の家門と同じくらいの財力があるが控えめな一族が多く、また同年代のはずだが皆より幼く見えるショタ系イケメン。


 そんなキラキラ輝かしい三人を前にラビルは無意識にごくりと唾を飲む。


 (ヤバい……性格は難ありそうな感じだけど、メインヒーローだけあって、か……顔が良過ぎる……!!)


 もちろん兄ビリアスも身内贔屓無しでも、顔立ちは良い方だと断言できる。

 表情は常に冷静沈着で少し切れ長気味の赤い瞳と、漆黒の黒い髪は上品で素敵だとうちのメイド達が休憩室で女子トークしていたのもちゃっかり聞いた事があるから、他人から見てもイケメンな部類である。


 しかし、ラビルは自分自身の容姿はあまり気にした事が無かった。

 うちに来た人達はわたしを見れば愛らしいとか可愛いとか褒めてくれたが、それは当主の妹だから気遣ってくれただけだろうと。だから、そんな普通の人間が舞台照明でも当たってるのかと思う程に、自らキラキラ輝く三人を前にしてガチガチに緊張していたのだ。

 本来であればここに在席するのは火の家門後継者であるビリアス・シュデリウスのはずだった。しかし、四家門の後継者が集まるパーティー前日に兄が日頃の過労が出たのか、熱を出してしまったのだ。

 最初は断ろうとしていた兄をわたしがなんとか引き留めた。さすがに初回で欠席は角が立ってしまうかもしれないし、欠席よりは代わりでわたしが参加した方がいいと説得した。

 何度言っても危ないからダメだの一点張りで(何が危ないのかは全く分からなかったけど)、アニモや他の執事達皆で説得したらようやく渋々だけど了解をもらえた。

 わたしは見えないようにガッツポーズをする。

 四家門という事は、つまり小説のメインヒーロー達が勢揃いする現場。

 兄より先に後継者達と会ってそこで情報収集をして、上手く三人に取り入ってミラーナと兄の邪魔をしないように立ち回ろうと考えた。

 (うん! なんか余裕な気がしてきた!)


 と、余裕ぶっていたのが今朝の話。

 しかし、パーティー会場であるアーシックの屋敷に来てから、その雲行きは怪しくなってくる。

 まず、屋敷に着いた時、前世で例えるならば東京ドームの何十どころか何百個分くらいの広大過ぎる土地にある、一度入ったら永遠に迷子になりそうな程の豪華な屋敷。

そして卓上には四人分のはずなのに、百人は食べられそうな食事の山々。

 それだけでも圧倒されているのに、隣や向かい側に座る美男子達に言葉は完全に封殺されてしまう。

 前世のあみ姉なら迷う事なく、兄を選んでくれると自信があるけど今世で彼女の異性の好みは全く知らない。

 もしかしたら兄ではなく、目の前の誰かを好きになる可能性もあるかもしれない。


 (……ど、どうしよう~!?)


 

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