第6話 運命を変える最後の一歩
「……蓮さんがここにいてくれたら嬉しい。」
自分の口からそんな言葉が出るなんて——少し前の美咲なら、考えられなかった。
蓮は驚いた表情で美咲を見つめていた。
(言いすぎたかな……?)
不安が胸をよぎる。でも、後悔はしていなかった。
蓮はしばらく黙っていたが、やがてふっと笑みをこぼす。
「美咲がそんなふうに言ってくれるなんて、ちょっと意外かも。」
「え……?」
「今まで、あんまり自分の気持ちを口に出さないタイプだったから。」
そう言われて、改めて気づく。
確かに、私はずっと“言わないで済むなら言わなくていい”と、心の奥で思っていたのかもしれない。
でも今は——違う。
「変わりたかったんです、私。」
「変わりたかった?」
「……未来の私から手紙が届いたんです。そこには、“もっと自己表現をして”って書かれていて。」
蓮が少し驚いたように目を瞬かせる。
「未来の自分からの手紙?」
「はい。最初は信じられなかったけど……でも、あの手紙があったから、こうして自分の気持ちを伝えられるようになったんです。」
「……そっか。」
蓮は静かに頷いた。
そして、少し遠くを見つめながら言う。
「……俺も、ずっと迷ってたんだ。日本にいるべきか、夢を追うべきか。でも、美咲がそうやって自分の気持ちをまっすぐに伝えてくれたのを聞いて、なんか吹っ切れた気がする。」
「え……?」
「ありがとう、美咲。」
蓮の言葉は優しくて、それでいてどこか決意を感じさせた。
(私の言葉が、蓮さんの背中を押した……?)
その夜——。
美咲はまた、新しい手紙を受け取った。
未来の自分からの、最後のメッセージだった。
「よくここまで来ましたね。」
その一文を見た瞬間、胸が熱くなる。
「あなたが“勇気を出して伝えた言葉”は、確かに誰かの心を動かしました。」
「それはきっと、今後のあなた自身の人生も大きく変えるはずです。」
美咲はそっと手紙を握りしめる。
確かに、私は変わった。
もう以前のように、自分を閉じ込めたりしない。
翌日、美咲はいつもと違う気持ちで職場へ向かった。
蓮の隣に座り、ふと彼を見上げる。
「……蓮さん。」
「ん?」
「また、一緒にランチしませんか?」
驚いたように目を丸くする蓮。
でも、次の瞬間、彼はふっと笑って——
「うん、行こう。」
今までなら、きっと声をかけることさえできなかった。
でも、未来の自分が教えてくれた。
「勇気を出せば、未来は変わる。」
それは、私自身が証明したこと。
そして、ここから始まる新しい未来——。
きっと、もっと素敵なものになる。
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