第29.1話 データアンデッドは秋兎原の夢から覚めますか?(さらに改稿版)
決死のモブ子さんが師匠くんを抱きしめてる。
そのすぐそばで、秋兎原データアンデッドたちの一角に、ベクトルの変化がほんのわずかに起きている。
いあ、いあ、おぅふッ♪
いあ、いあ、でゅふふッ♪
無限に唱え続ける秋兎原データアンデッドたちの唱和、それは彼らの信仰のル−プ。
その呪言は誰が唱えだしたのか、どこでどう礼拝の作法を学んだのか、誰も思い出せない。
ただ、身体を突き動かすベクトルが目の前にあり、手足を口を突き動かし続ける。
《挿絵》 秋兎原の寮生たち
https://kakuyomu.jp/users/yatoya_yk/news/822139837258671552
彼らが崇める〚とある概念〛の混濁した膨大な概念のなかに、ふと、誰かが立っている……
光り輝く、光輪を頭上に飾る、その少女が目の前に在る。
彼女を、身近に感じたとき全てが満たされたような感覚がある。
その少女への信仰が、彼らにとってのリアルだった。
それが、この永遠の円環を支え続けた彼らのシンボルだった。
いつから、その感覚に捕らわれたのだろう。
いつから、自分はこの学園にいるのだろう。
たまによぎるそれは、はるかな時間のなかに埋没してしまった、
どうでもよいことだった。
◯◯「…………」
彼らが崇める〚とある概念〛の混濁した膨大な概念のなかに、ふと、違う、異なる誰かが立っている……
モブ子「……あなたたちは同志なのですね?」
データアンデッドの誰かが、その割り込んできた【言葉】の意味に惹かれる……。
いつものプロトコルと違う、心地よいスヌーズのような響きの声だ、これは。
その誰かは、その投げかけられた声に答えたい……。
いま、ゆらゆら踊る、その集団のデータ−からふと、誰かが抜けた。
その誰かは、目覚めさせたものの必死の姿を見る。
彼女は、ひとりの少年の神気バグを抑え込み、受け止めようと必死なのだ。
その尊い、眩しい光が自分や周囲に満ちていくのに意識をむける。
しかし。群れであるデータアンデッドの全体は、すぐにその新たな少女への憧憬の思考を止めた。
目に前に、再び光輪の少女のシルエットが浮かぶ。
光輪の少女の圧倒的な慈愛の温もりが、まどろみの心地よさが引き止めるのだ。
誰かが囁く。
新たな少女と少年のベクトルに抗えと。
抱き合う二人はリア充。
リア充ならば敵。
リア充は爆発させねばならぬ。
いあ!いあ!
リア充は爆発させねばならぬ。
《挿絵》
https://kakuyomu.jp/users/yatoya_yk/news/822139837252323898
そのベクトルの奔流にに、もうひとつの観測者が気づきます。
白スーツ「ほう?あのハテナル信徒のアンデッドたちに、僅かな変化を彼女は与えたのですね?とても敬服いたしますよ。しかし、その変化が敵視されてしまった」
白スーツ氏は朝のブッフェを楽しみながら、学園内の様々なベクトルの観測を続ける。
白スーツ「師匠先生。これはあなたへの2つ目の試練。リア充は爆発しなければいけないのです。そう信じる怨嗟とあなたはどう戦うのでしょう」
以下次回に つづく
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