第14話 独り相撲でのこったのこった

『昨晩はココアごちそうさまでした! よければまたお話したいのですが』



 半端なメッセージを送ってしまった。そして、すでに読まれてしまった。一応、こちらの意図が伝わる文面になっているのは救いか?

 どうしよう? 返事を待つべきか? それとも、「今のは間違いです」的なメッセージを即送るべきか……。


 誰もいないリビングで私はひとり、スマホの画面を見ながら頭を抱えたり、歩き回ったり、時々奇声を上げたりしていた。傍から見たらわりと危ない人な気がする。


 ワタワタしながらも、そのうちに返信がくるのでは――、とどこか期待している私もいる。「独り相撲」とはまさにこのことか。


 「既読」がついてから、返信はなかなかこなかった。勝手に想像――、妄想が膨らむ。このメッセージを見たミズキさんの様子が……。


 1、今も進行形で返信のメッセージを入れてくれている。


 私だって1通送るまでに(事故だけど)、相当な時間を費やした。ミズキさんだってその返信に時間をかけること間違いなし!


 2、内容を見て、ため息をつきスマホをしまう。


 完全に距離の取り方を間違えてしまったパターン。返信を面倒がられている。もし、今日1日なにもなかったらもうコンビニにすら行けなくなります。


 3、実はほとんど内容を見てない。


 通知の「表示」が気になることってあるよね! 私はある。とりあえず、その表示を消すためにメッセージを開くけど、中身をちゃんと見てないこと。ミズキさんもそんなだったりしないかな……。



 部屋に引き籠っている分、人一倍「想像力」――もとい、「妄想力」は鍛えられているのだ。私の頭の中で、何人もの平行世界のミズキさんがメッセージを読んでいる。これは返信が来るまでの時間もつのか――、耐えられるのかっ!?


 そんなひとり妄想を繰り広げ、格闘している私は、急に我に返った。


 なんだろう――、なんだか、今すごく楽しい。憧れの人の連絡先を知って、メッセージを考えて――、間違って送ってひとり身悶えをする。なんだかすごく「青春」している気がする!

 そうか、これが甘く切ない「アオハル」の味か! いや、まだきっと味見と言うか、「毒味」程度だとは思うけど!



 そのとき、木製のテーブルから重たいモノが擦れる音がした。スマホが震えたのだ。この振動は、間違いなくSHINEの通知。


 私は深呼吸をし、まるで冷蔵庫の奥底から出てきたいつ作ったかわからないお惣菜のタッパーを開けるかのように――、おそるおそる通知のアイコンに手を、指先を伸ばした。

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