早世よ、私を恨めばいい
朝陽うさぎ
プロローグ
「お前はシステムだ。この世界の住人に干渉してはならないし、そいつらもお前に干渉しない。ただ傍観するだけの命だ」
突然、███が私に目を合わせて、錆びた短剣を置いて言った。虚空の眼差しで。こいつはいつも雌の人間しか眼中にないから、普段は雌の人間を食いながら会話を交わすことがほとんどなのに。私が疑問を口にする前に、███はいつも通りのへらへらした態度に戻った。
「あれ?俺、今何か言ったか?」
血のついた頬をむず痒そうに掻く。先ほどの冷たい雰囲気は飛んでいった。
「いや、気のせいだろ」
なんとなく秘密にしておいたほうがいいと、幼い私は判断した。そして背を向け、石造りの粗末な家を出ていく。扉を閉めると、再び咀嚼音が聞こえた。そんなに人間が美味いんだろうか?以前はこいつと一緒に食事をしていたが、腹の減らない私は食事を断るようになり、いつの間にか███が食べている様子を見ることさえも嫌になった。しかし、閑散とする集落を見るたびに、こいつを心底恐れている。ここに住んでいた人間は、███に全員惨殺された。しかも素手で、だ。あいつは簡単に命を潰し、その行為を楽しんでやっている。異常だ。
だが、それを何とも思わなかった当時の私も異常だったのだろう。
「わあああああ…!!」
家の中から子供の叫び声が聞こえた。嘘だ。あいつがここの住民全て殺したはずだ。扉が外れるほど勢いよく開けた。視界には███と、壁に押さえつけられ、右腕をぶち切られそうになる雄の人間の子供がいた。狂気の笑みを浮かべる███は、未だ飢えた獣にしか見えなかった。
「待て!!」
気がつけば、声を張り上げていた。獣は私の声で正気に戻った。
「何だよレイ。お前もこいつ、食いたいのか?」
口角は上がっているが、目は少しも笑っていない。血で汚れた犬歯を見せながら、私に食事を邪魔された怒りをぶつけた。子供の方を見ると、私と同じくらいの背格好で、右腕はついたまま、当たり前だが泣いている。私は震える手を握りしめて、口を開いた。
「そいつは俺が―――」
そこで目が覚めた。
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