第39話 寮の中での協力者!
「今日も来てくれたのですねっ! 早速お風呂入りましょう!」
部屋に入ると、二階堂葵が楽し気に出迎えてくれる。
一学年は少し早く帰っているというのか、葵は服も着ないで身体にバスタオルを巻いている状態で、既に準備万端であった。私たちしか来ないとわかっているだろうけれども、さすがに楽しみにし過ぎだし。もう少し恥じらいを残していて欲しいとも思うけれども。
ただ、私たちにも同じことが言えるだろう。
『楽しみにし過ぎ』だと。
部屋へ入るや否や、私も彩芽も舞白も、すぐに服を脱いでお風呂へと走る。
冷静に考えれば、とてつもなく変なことをしていると思う。そうなのだけれども、よくわらかない『爽快感』があるのだ。その感覚も勉強に役に立つと思って、すぐに裸になるのだった。
一種のアドレナリンが出るのだと思う。
そのおかげなのか、とてつもなく勉強が捗るのだ。
阿呆なことをしている自覚は、十分あるのだけれども、楽しさの方が勝ってしまって毎日毎日続けていった。
「準備遅いよ、葵! 私が先に入っちゃうぞ!」
「舞白さん、ちょっと早すぎですわ! 下着とか付けてないんですかっ!?」
「私、ブラ付けない派だし!」
そんなことを言いながら、お風呂勉強をする日々が続いていった。
◇
「白川千鶴、今は何時だかわかっているか?」
「今日も遅かったですわね?」
久しぶりにホワイトリリー寮の中で、北大路さんと柊お姉様に会ったかと思うと、注意を受けてしまった。
「あっ、はい……。申し訳ありません」
北大路さんは、ショートカットから少しだけ伸びた私の髪をすくい上げて、匂いを嗅ぐ。そして、少し睨むような目つきで、私に問い詰めてくる。
「なんだか良い匂いがするけれども。毎夜、毎夜、どこで、なにをしているのかしら?」
「え、えっと、それは……」
髪の匂い、おそらく毎日違う匂いをさせているのはバレているだろう。嗅覚の刺激も良いだろうと言いながら、毎日シャンプーを変えては、お風呂で勉強をしていたのだ。
外から帰ってきて、毎日違うシャンプーの香りをさせているとあれば、なにか如何わしいことをしていると疑われてしまうだろう。ただ勉強しているだけなんて言っても、信じてもらえないだろうし……。
私がしどろもどろで答えられないでいると、舞白が柊お姉様に向かっていった。
「北大路さんっ! 私とお姉ちゃんは、一生懸命勉強してるんですっ!」
「……はぁ?」
信じられないといった声を出す、北大路さん。
それはそうだと思う。私も最初は全く信じていなかったから。
けれども、ここ何日もやってみて、確実に効果があったという自信がある。勉強してこなかった私が勉強したから、学力が上がっただけと言われてしまえば、それまでだけれども……。
柊お姉様も疑いの目でこちらを見ていた。
「千鶴さん、本当なのかしら?」
「……はい。本当です。効果があると言われて、半信半疑でしたけれども、確実に学力が上がっている実感があります!」
舞白は、力強く頷いてくれた。
そうだよ。やましいことなんてしていないんだから。胸を張って堂々と本当のことを言えばいい。
私は、これからの学園生活を舞白と一緒に過ごすために、一生懸命頑張っているのだ。
正規のやり方なんて、はなっからわからないから、変なやり方だろうとも私なりのやり方で、絶対学年一位を取ってやるんだ!
そのためなら、なんだってする覚悟なんだから!
「なるほど、わかった。良い目をするようになったら、白川千鶴」
「はい。ありがとうございます。今度のテストは、私と舞白の学園生活が掛かっているのです。遊んでいる暇もないですし、勉学に励んでいますわ!」
北大路さんへ、力強く宣言する。
絶対にそうしないといけないのだ。お姉様たちに遠慮せずに宣言して、いいわけも出来ないように退路を断ってやろうじゃないの!
「疑ってすまないな」
「いえ、こちらこそですわ。門限ギリギリに帰るなんて、申し訳ございません」
私が頭を下げると、舞白も一緒になって頭を下げてくれた。
私たちは運命共同体だからね。何も言わずに通じてくれる舞白の姿に少し胸が熱くなるのを感じた。
頭を上げると、北大路さんと柊お姉様は目を輝かせてこちらを見ているようだった。
「償いと言ってはなんだが、私たちも寮の中で協力させてくれないか? 君たちが一生懸命になにかを頑張っているのは薄々気付いていたのだが、同じ寮の仲間として一緒に頑張らないか?」
「あ、ありがとうございます!」
「そうよ。私にも相談しに来てくれて良かったのに! 私は、いつまでも千鶴さんのお姉さんなんだからね?」
嬉しいことを言ってくれた二人。
持つべきものはやっぱり、お姉様かもしれない。二人が協力してくれるなら、百人力だろう。
……あれ?
……協力するってもしかして?
「いつも君たちがやっている勉強法! 私たちも一緒にやろう!」
「なんでも協力するらからねっ!」
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