第28話 彩芽の部屋のルール

 ブルーアイリス寮は、青色のリボンをしている人が多くいる。特に学校指定ということはないのだけれども、寮の中で流行っているらしいのだ。


 姉妹で青色のアクセサリーを付けたり、お揃いでなくても色だけ揃えたりして絆を確かめ合っているようだった。まぁ、うちの寮も他寮のことは言えないけどね。私も、舞白とお揃いのキーホルダー付けてるしね。


 ひたすら青色が目に飛び込んで来るような寮内のエントランスを通り過ぎて、彩芽の部屋へと案内される。



「こちらが、私の部屋ですわ。ゆっくりしていってくださいませ!」



 彩芽の部屋は、落ちついた雰囲気をしていた。家具の装飾も、派手ということはなく、シックな雰囲気を醸し出している。特にお金が掛けられているといった様子でもなく、私にはとても居心地よく感じられた。


 他の寮に入ったことはなかったけれども、あまり寮ごとに部屋の違いは無いのかもしれない。

 私の部屋と同じように、ベッドが二つあるところを見ると、ブルーアイリス寮にも姉妹制度もあるみたいだし。スリッパも二つ。椅子も二つ。コップも二つ。全てお揃いで、仲の良い姉妹生活が伺える。


 当たり前かもしれないけれども、部屋にはお風呂も完備されているみたいだし。もちろん、風呂トイレ別々のようだ。

 私の部屋と変わりなく、過ごしやすそうな部屋だ。これなら、集中して勉強も出来そうだな。



 この部屋で、私の部屋と違うところは彩芽がいることだ。

 これは、私の部屋で勉強するよりも捗ること間違いなしだな。


 気分も乗ってきたから、すぐにでも勉強を始めよう。そう思い、カバンを降ろそうとすると、彩芽が制止してくる。



「千鶴さん。カバンは玄関い掛けてくださいませ?」


「あっ、はい。ごめんなさい。ついつい自分の部屋のように感じてしまって。自部屋にいる通りに振舞うところでしたわ」



 彩芽はニコリと微笑んで許してくれたようだった。天使のような笑顔。持つべきものは、彩芽という友達かもしれない。



「それでは、気を取り直しました。すぐにでも、お勉強に取り掛かりましょう?」



 せっかく気持ちも乗ってきたし。今なら、数倍の力が発揮できる気がすると思いながら、机の前まで歩いていこうとすると、また彩芽に制止させられた。



「千鶴さん。部屋に帰ってきたら、まず初めにすることがあるでしょう?」


「あれ、えっと……。あぁー、あれですわね。手洗いうがいを忘れていましたわね。私としたことが失礼しましたわ」



『人の部屋に入らば、人のルールに従え』ですわね。

 彩芽が、こんなに潔癖な人だったなんて知らなかったな。まぁ、細かいからこそ、勉強ができるっていうところもあるのかもしれないな。

 几帳面でまめな人ほど、成績が高い気もするし。


 きっと細かいところまで、目に付いてしまうのだろう。


 部屋の配置は、私の部屋とほぼ同じだったので、彩芽に聞かずに洗面所へと向かう。綺麗に洗って、すぐに勉強を始めよう。



 洗面所に着くと、すぐに手を洗い始める。


 ふと、鏡を見ると、すぐ後ろに彩芽がいた。

 鏡越しに、私のことを見ているようで目が合ってしまった。


「あ、あれー……? 手の洗い方、見られていましたのね。もしかして、雑でしたか……?」



 彩芽はニコリと微笑む。

 そろそろ注意されるのが嫌になってきたから、丁寧に洗っていたんだけどな……。さすがに、大丈夫だろう。



「千鶴さん。足りないですわ?」


「え、えっとー。そうなんですか……?」



 実は彩芽って、かなり面倒な性格なのかもしれない。ちょっとうざったいな……。



「それじゃあ、もう一度洗いま……」


「手じゃないんです。身体を洗って欲しいのです」


 私の言葉に被せるように彩芽が言ってくる。笑顔のまま、「普通のことですけど、なにかおかしいですか?」というような顔で、首を傾げる。



「えっとー……、そこまでする必要があるんでしたっけ?」


「風邪対策には、それが一番ですのよ? 勉強をするにしても、体調管理がまず第一ですわ!」



 どこから仕入れて来た知識なのだか……。頭の良いお嬢様は、なんにでも詳しいのでしょう……、

 まったく悪気はないようで、さも当たり前のように自分から服を脱ぎだす。


「えっ、えっ!?」


「なにを驚いてらっしゃるのですか? 家に入ったら、まずは身体を洗う。それは、もちろん私自身もですわよ?」



「そ、そうなんですの?……そうだとしたら、彩芽さんが先に身体を洗って、私はその後ですわね……?」



 おそるおそる聞いてみると、彩芽はニコリとしていた顔から、さらに目を細めて少しニヤケ顔になった。


「もちろん、二人で一緒に入るのですわよ?」

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