第18話 陸上部の体験入部
「おっすー、舞白ー! 楽しい楽しい、手芸部でもいこーぜーっ!」
一年生の教室に来るのも慣れたものだ。
ショートカットになってから、少しアクティブな言動をしても、そんなに目立たなくなってきた。本当、この髪型にして良かったかもなー。
舞白にとっては寮のメンバーとも仲良くできる場だし、一番良い場を提供できたと思うんだよね。我ながら、良いお姉様だよ。うんうん。
ウキウキしながら舞白を眺めると、舞白はジトッとした目でこちらを見ていた。
「私には、手芸部はちょっとあってなかったかも」
「ほぇっ……? 手芸部、楽しかったでしょ?」
「やっぱり、私は部活には入れないから……」
「うーん、そうなのー? いいと思ったんだけどなー? じゃあさ、違う部活でも見学に行こうかっ?」
「いや、そういうことじゃなくって……」
舞白がモゴモゴと受け答えしていると、早乙女恭子が後ろから話しかけて来た。どうやら舞白と同じクラスにいるらしい。
「白川お姉様、ごきげんよう。手芸部ですけども、これ見てください。舞白ちゃんとお揃いのやつ作ったんです。お姉様に教えてもらったやり方を練習したのですわ」
「おおー、すごい上手だね。それにー……」
舞白の方を向くと、少し頬を赤らめていた。
「舞白にも友達できたみたいで良かったね」
「……うん」
「けど、手芸部に合わないっていうからなぁ……。そうだ! 早乙女さんも一緒に別の部活見学に来てみない?」
「はい! 兼部するのも良いですよね。一緒に行かせてください!」
せっかく舞白にできた友達だし、メンバーが多い方が楽しいしね。
今日は、手芸部に次ぐ私のオススメ部活へと行ってみよう。
◇
「……ねぇ千鶴。私さぁ、運動部とかって絶対無理なんだけど?」
「いやいや。絶対なんていうのは、この世には無いよっ! やってみようっ!」
嫌がる舞白は一向に首を縦に振らない。
説得は難しいかもしれないけれども、それこそ絶対っていうのはないからね。
「舞白は、まだ若いからわかってないんだよね。やってもみないうちからダメだって決めつけるのは、もったいないよ?」
「……うーん、そういうものなの?」
「まぁさ。個人スポーツだから、特に誰に迷惑かけるわけでもないわけよ。やってみたら楽しさわかるからさっ!」
「楽しくないよ。ただ走るだけでしょ? 陸上部って」
そうなのだ。私のオススメ運動部の陸上部へ体験入部しようと、更衣室で着替えている私と舞白。
隣に早乙女恭子もいる。
「舞白さんは、運動ってできるんですか? なんだか身体は引き締まって見えますけれども?」
恭子は舞白のワイシャツ姿をじろじろと見ている。
「なんでそんなに見てくるんだよ……。まだ着替えてもないっていうのに……」
「興味があるからですわ? 舞白ちゃん可愛いからね」
おっと、こんな近くにも舞白を狙う子がいるわけか。舞白はモテモテなのかもしれない。
この百合園学園は、そういう出会いは更衣室であったりするわけなのだ。自然と言えば、自然。うんうん。いい傾向かもしれないぞ。
「普通の体操着に着替えるのでいいの?
「まずは、それしかないからね。体験だから大丈夫だよ。って、あれ……、舞白。ブラは……?
「うん? なにそれ?」
「いや、ブラジャーのことなんだけれども。あれ、一気に脱いじゃったの? おっちょこちょい?」
「ほぇ……?」
舞白は私の問いかけにも、よくわからないような顔をしている。もしかすると、ブラジャーという物を付けたことがないのかもしれない……?
そういえば、一緒にお風呂に入ったときも付けていなかったような……?
「舞白……。もしかしてさ、ブラ付けたことないの?」
「ないよ?」
まだ若いからしょうがないかと思いつつ、チラリと舞白を見るとしっかりとした膨らみがあるのだ。私と比べると、確実に舞白が勝っていると言えるくらいには膨らんでいる胸。
「……ってか、そんなに膨らみついてるくせに、付けてないのっ!? 私よりもあって。何を考えてるんだよっ! 胸がいらないならくれよーー!!」
「やだやだ、なにすんのっ! 着替えられないっしょ!」
悔しさのあまり舞白を揺さぶってしまったが、恭子が止めてくれた。
「そうしたら舞白さん。今度の週末にでも買いに行きませんか? スポーツをするなら、スポブラを付けておくのが良いと思いますわ!」
「……うぃ。恭子のおすすめでよろ」
「うん!」
ちょっと私だけ取り乱しちゃったけれども、恭子と舞白が仲良くなっていくみたい。それならそれでよいか。
こういう友達も必要だなと思って、しんみりしながら遠くへと目をやると、リコリス寮の姫宮咲子がいるのが見えた。
私と舞白が髪を切るきっかけになった張本人だ。
あいつも、体験入部に来ているらしい。
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